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ミールスについて少しまじめに考える3-4

前回は、カルナータカ州を中心に南インド5州の食事の順番をインド料理の文献からみてきました。これまで3部でとりあげた文献では、ミールスや食事には食べ方や作法があることが示してきました。
今回の投稿では、文献からインドの食作法と食事の提供方法に関する記述をとりあげていきます。

Arjun Appadurai『How to Make a National Cuisine: Cookbooks in Contemporary India.』

このエッセイは、過去の投稿でインド料理のこと2として部分的にとりあげましたが、食作法に関する記述もいくつか書かれています。
本文では、料理本から国民的なインド料理がつくられる過程でメニューという考えが導入されたことに関連させて、元来インドでは日常と祝祭の場において料理の提供方法が異なっていると著者は指摘しています。
この記述はミールスが祭りの食事をルーツとする場合関係してくると考えられます。

ヨーロッパやその他の料理では、メニューという考え方はコースの連続性を連想させるが、通常インドの食事には、重要な連続性はない。日常的な食事では、基本的な穀物に添える液体の種類や調味料の種類は違っても、ほぼ一度にすべてが運ばれてくる。祝祭的な文脈では、時間的な次元は非常に精巧になり、フランス式のコースがより顕著になる。しかし、日常的には、インドのメニューは共時的なコードの集合であり、コースという概念に関連した通時的なコードを示すことはない。

(Appadurai1988:20)

他方で、食文化研究家の石毛は世界各地の食事の提供方法を比較し、2つの形式に分類しています。

世界の配膳方法は、「時系列型」「空間展開型」に大別することができる。ひとつの料理を食べ終わると、つぎの料理が食卓にもってこられるコースの原則によって配膳されるのが時系列型である。食事のはじめから、食卓に料理をすべてならべてしまうのが空間展開型である。

(石毛2009:160)

こうした視点からミールスをみると、まずバナナリーフが置かれ料理がサーブされる流れは時系列的でもありながら、料理が次々と並ぶ様は空間展開的でもありいずれの配膳方法にも当てはまるように思います。
しかし、フランスのコース料理と比較すると食事の順番や食べ合わせがあるため、より複雑な食事であって時系列型と空間展開型の中間あるいは2つの特徴を持ち合わせた食事と言えるのでないでしょうか。

続く


参考文献
Appadurai, A. 1988 How to Make a National Cuisine: Cookbooks in Contemporary India. Comparative Studies in Society and History Vol. 30(1), pp. 3-24. Cambridge University Press.
石毛直道2009『食の食文化を語る』ドメス出版

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