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ミールスについて少しまじめに考える3-1

この投稿では、1部2部でまとめた日本とインドのミールスを比較し、最後に考察していきます。
具体的には、日本のミールスの定義と食べ方をインドで食べたミールスの実態に加え食の作法に関するこれまでとは異なる視点から書かれたいくつかの文献をとりあげながら、日本で書かれてこなかったミールス像を提示します。

──これまでの一連の投稿も含めて「本物の料理」に着目した料理の真正性を巡る議論に寄与する目的で書いていません。しかし、○は本物の料理であるいう言説は、日常で交わされるトピックでもあるので、自分の考えとそうした考えをもつにいたった理由を文献をまじえ後日とりあげるつもりです。

ミールスの定義

日本国内の本やサイトでミールスは、多様な料理のレパートリーがある南インドの食事と説明されていました。
多様なレパートリーがあるという点に注目して、2部で紹介したインドの実態から考えると、例えばカルナータカでは州内であっても北カルナータカ料理、ウドゥピ料理など地域料理としてのミールスがありました。またタミル・ナードゥ州ではマドライのレストランスタイルとチェッティナードスタイルのミールスは料理の組み合わせが異なった食事でした。
したがって、私はミールスが南インド各地域ごとの料理が組み合わされた食事=レパートリーのある料理であるという言説に同意します。しかし、ここにある問題として一言でミールスを南インドの食事としてくくることの難しさを感じました。

ミールスのルーツ

ミールスとは何かと考えるうえでそのルーツをたどることは重要ですが、今回の調査で調べることはできませんでした。しかし、ルーツに関するヒントと思われる指摘を2つ紹介します。
マドライのホームステイではホームメイドのミールスをつくってもらいました。これらの料理は普段の食事ではなく、ポンガルなど祭のときに食べると聞きました。
つぎに『作ろう!南インドの定食ミールス』ではケララの風店主の沼尻さんがケーララのミールスのルーツを以下のように予想しています。
「ミールスはヒンドゥ教のお寺の振る舞い料理がルーツになっている。ケララでいうと、千年以上の歴史があるオーナム祭で昔から食べられているサッディアというごちそうには、ベジのおかずがズラッと並びますが、ミールスはその中からきている料理が多いようです」(『作ろう!南インドのミールス』:73)

2部では、料理の種類が異なる各地のミールスがあることを示しましたが、今後の課題として地域料理という視点からミールスのルーツを調べていきたいと思います。

次回は、ミールスの食べ方について書いていきます。1部で紹介したように日本の本ではいくつかの食べ方が紹介されていて、ある意味混乱した状況と思っています。インドの実態と文献を引用しながら考えていきたいです。

参考文献

玉置標本 2021『作ろう!南インドの定食ミールス』ブックウォーカー

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