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「利他的な人」は割を食ってばかりなのか

アメリカのAdam Grant博士によれば、組織には利己的な人と利他的な人、そして中庸な人がいて。彼は利己的な人をTaker、利他的な人をGiver、上手くバランスをとる人をMactherと呼んでいます。

組織においては、Matcherが一番多いというのは当然考えられることです。Matcherタイプの人は、いつも全体のバランスや全体最適を考えながら組織を支えます。

興味深いところでは、TakerとGiverが組織においてどのようなプロセスを経るのかというGrant博士の研究です。

まず、誰よりも最初に成果を出すのはTakerです。Takerは仲間を差し置いてでも、あるいは仲間を利用してでも自己の利得を優先させようとします。例えば、宿題をしなくても、最も成績の良いクラスメイトのノートを書き写して提出したり、組織のプロジェクトでは、一番楽でなおかつ一番目立つ役割を選んだりして、早々に頭角を現します。

その一方で、最初に割を食うのがGiverです。Giverは他人の利得を優先するので、真面目に時間を掛けて整理したノートを、試験前に楽をしたいクラスメイトに貸してあげたり、上司名義の書類として配布されると知りながらも、自分は目立つことなく、縁の下の力持ちとして面倒な書類作りを担ったりします。

整理ノートを作った自分より友人の成績は先に上がり、面倒な書類作りを担った自分は評価されず、上司や同僚が先に出世するなど、組織では初期においてGiverはいつも割を食っています。

ところが、Grant博士の研究では、長い目で見ればGiverが最も成果を出すということです。アメリカの医大生を対象とした研究では、入学して1~2年生のうちはTakerの成績が高かったが、6年生になるとGiverの成績が逆転し、さらにGiverの方が優秀な病院や大学に就職できたそうです。

Giverとしていつも割りを食って生きている人へ
あなたの今の価値観・行動・思いやりを過小評価せず、そういうあなた自身を肯定し自信をもってGiver道を貫きましょう。自己犠牲心ではなく他者のために積極的な気持ちで行動してみましょう。必ず誰かがあなたを見てくれています。



“Give and Take” Adam Grant(2012)を参考に筆者作成


Give & Take
与える人こそ成功する時代
アダム・グラント著(三笠書房)

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