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【歌謡ノベルズ】 ス・ト・リ・ッ・パ・ー










爪はきれいに整えた。桜色にも塗ってみた。眉もきれいに整えた。余り細過ぎない方がいい。目元は涼しげにラインを入れて。髪も一つにまとめておいた。束ねた先が少し揺れて、ちょっと頬を撫でたりするのもいいかもしれない。そういうのが好きな人だって居る。

ヒールを脱ぎ捨て、網タイツはするっと一気に脱ぎ捨てて、つるりと白い踵で近づく。ぽってりつけたルージュを脱ぎ捨て、やわらかい唇を火照らせる。こうして全てを脱ぎ捨てたら、手招きしたり。
"おいで"
躊躇なんてジャマなだけ。裸にならなきゃ始まらない。膨らみの小さな胸で覚悟を決めなきゃ。思い切って、ここが私達のショーの始まり、さぁ。

ベッドの上の戯れごとだと思えばいい。横になって、片方へ向きながらまっすぐに上へ伸ばした脚。ライトが当たって白い肌を一層際立たせる。太腿のキメの細かさがこんなところで役に立つなんて。お手入れしておいて良かった。そうすれば、過去を脱ぎ捨てて、着流しで町をふらっとしながらお蕎麦をすすったことも、昨日を脱ぎ捨ててどこかでちょっと誰かに手を貸してあげたようなことも、本当の自分だけになって全てを脱ぎ捨てたら、きっと。
水溜まりを飛び越えてみよう。この裾をちょっとだけつまみながら。引き締まったお尻のラインはまだ隠しておかなくちゃ。裾をまくり上げすぎて諸肌現れてしまわないように。おっと、あぶない。
"おいで、子猫ちゃん"
もうこの大きくて白いシーツの中で、イタズラっぽく瞳を隠して。探してる? 何かを。でも言わないで。
"逃げ込むなら話にならないぜ"って。

朝でも、夜でも、真昼でも、みんなワタシを見ているのかも。ここに居る人達の目が、キラキラ輝いているのがわかる。
期待と、好奇心と、下心? できることなら人目にさらしたくはないけど。やっぱり最後はいつでも同じ。ところ選ばず咲く誠意。
だって、恋はストリッパー。何にも隠さずに。あなたにだけは見て欲しい。裸の触れ合い。ワタシの全てを。
春でも、秋でも真冬でも、季節なんてカンケーない。それで散ってしまうなら仕方がないよね。ううん、散らせるもんなら、散らせてみろい!
だって、愛はストリッパー。
"見せるが勝ちだぜ"って。
涙には照れちゃうんだってね。ワタシの方は男の涙にはちょっと弱い。ダメよ。何故か気になる阿呆鳥。
オレの全てを見せてやる!
そこまで言うんなら致し方ない。
お前の全てを見たい。
こいつを見せたからには、これ以上四の五の御託は言わせないっ。

ちょっと気を沈めなくっちゃ。あんまり熱くなっちゃダメ。悪を憎んで人は憎まず。
南のカルナヴァルの風よ、来い。少し冷たいカクテルで躰を冷やしたい。マリブベースのサザンウィンド。トロピカルな甘さと、熱い夕焼けを思わせるマンゴーカラー。
叩け、ボンゴ、響けサンバ。ワタシ、踊れ。心が揺れて。恋せよ、アミーゴ。踊ろう、セニョリータ。もっと、光る汗が弾け飛ぶまで。
これからがワタシのショータイム。ライトのせいなのか、見られているせいなのかわからないけれど、これが一番感じる瞬間。

何っ! 嘘を脱ぎ捨て、罪を脱ぎ捨て、全てを脱ぎ捨てたら、ガン首揃えて大人しくカンベンしろぃ! ワタシの爪は桜色。見忘れたとは言わせないっ。
さあ、おいで。男と女はアダムとイブ。悪党共とは踊ってやるわ。可愛いモノだよ〜。
お白洲へ上がるなら、当然その前に未来を脱ぎ捨て、明日を脱ぎ捨て、全てを脱ぎ捨てたら〜、ほら。

"おいでっ!"
びっくりするんじゃあないよ。
悪党共が勝手にほざきやがって。弱い所も見せちまえば、キレイに変われるはず!

神妙にしろいっ! 何、ここへ連れて来い?
既にとうの昔からお前らの前にはなっから座ってる。みんなの注目を浴びながら。メン玉開けて、よーく見やがれ。おっと、サザンウインドが効いてきたゼ。フラフラ歩く、逃げるが勝ちさ。ささ、涙を拭いてやる。

朝でも、夜でも、真昼でも、忘れたとは言わせない。まさしく、ここは人生のステージ。何でも言えよコレで良きゃ。ワタシの居場所は西、東。同じ町でも、ホーホケキョ。悪事を働けば、裁かれるのも時間の問題。オブギョーさま!
人呼んで、遠山の、遠山のっ...!

春でも、秋でも、真冬でも、そう幕は上がってる。ある時は板前に、ある時は船頭に、してある時は用心棒! あの晩見事に咲いた桜、夜桜。
やぃやぃやぃ! この桜、サクラ吹雪を忘れた、とは言わせない!! さぁ、ワ・タ・シだけを見よ!

おぉぉぉぉっ!
見事に咲けたっ。ワ・タ・シ。


いよっ! これにて、一・件・落・着っ!!




🌸🌸🌸🌸🌸





🌸Thank you for the 6th sense.






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