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【歌謡ノベルズ】モンロー・ウォーク












魅惑的で肉感的なヒップをリズミカルに振りながら、つま先立ててまっすぐ海へ入って行くんだ。マラガワインの色に塗った爪で砂を掴むように。その脚の出し方が、まるで真っ直ぐに引かれたロープの上を歩いていくように的確でバランスがイイ。
これか。モンローウォークしてゆくんだな。
だけど、あのイカした娘はいったい誰なんだろ。
慣れてるカンジの後乗りビートがジャマイカ辺りのステップでさ。

あれだけのボディーとふんわり風に揺れながら踊るボリュームのある髪。爪と合わせたマゼンタピンクのリップが顔のパーツにメリハリ与えて、シャイニーなテラコッタみたいな肌を一層強調させてる。そりゃあ、もうみんな釘付け。
だけど、目で追う男たちなんか、まったく無視して。そして、ただ、ただ、いい具合に腰をひねっちゃってさ。あのブロンズ色の肌がね、水しぶきを受けたボデーラインにキラッキラした太陽の光受けて艶めくんだ。眩しいぐらいだぜ。

でも、あの動きはやっぱりあの映画思い出す。あれで一気に有名な観光名所になった滝の名所。え!? 違うよっ。「養老の滝」じゃない。それじゃただの呑兵衛だろ。滝と言えば『ナイアガラ』。マリリン初のテクニカラー映画。あの中でマリリンが見せつけた、"モンローウォーク"が映画史上最長歩行シーンなんだよ。しかも後ろ姿の。知ってた? だからあのヒップの動きは全世界の男ドモの脳裏に焼きついちゃってるんだよな。

一応サスペンスなんだけどさ。
若い男に自分の女房取られちまって、嫉妬心丸出しの旦那をジョセフ・コットンが演ってる。『第三の男』のな。そう言えば、「第6の男」"No.6"って名乗ってる男もどっかに居たよなぁ。
だけどこの旦那がヤバい。女房が、あ、これがマリリンなんだけど、あのよく目立つセクスィーなホクロに、ちょっと露出多めで、肩のところが落ちんのかな落ちないのかな、それが心配なんだよなー、っていうゼンッゼン余計なお世話の、バラ色セクシードレスとか着て、すーっと皆が踊ってる辺りへ入っていってさ、
『アタシの一番お気に入り、かけてん💋』
とか頼むと、ヘイヘイってドーナツ盤かけてくれんだけど、その曲がさ、これまた溢れるお色気ダダ漏れの「キス」って曲よ。しかも彼女の名前がローズ🌹

🎵連れてって あなたの傍に
 強く抱いて アタシを守って
 燃え上がらせて 腕の中で 
 そして 熱くキスして
 つまんない日常を バラ色に変えて
 強く抱いて 今夜もアタシを愛してね

な〜んて、ため息交じりにハミングなんかしながら歌われちゃって、周りの皆さん、どーした!ってぐらいドキドキよ!
それを部屋の中で聴いてた旦那、もー、たまらなくなって悶ながら飛び出してくるっ! そしたら空手技かっ! と思うような膝割りで、レコード盤ぶっ壊し。ヤバいよ、ヤバいよ。

ところで何呑んでんの? 昼下がりの人出が多いざわめいた砂浜。あの娘、ウワサの渦? ウズウズしちゃうよなー。あ、じゃあせっかくだから巻き込む潮風と一緒にジャマイカン・ミュールでも貰うかな。聞いたことない? そ、これってモスコミュールのバリエーション。モスコミュールはウォッカで作るんだけど、これは名前の通りジャマイカン・ラムで。そこにライムジュースとジンジャービア入れてキリっとね。ちゃんと銅製マグに入れてよ。この口をつけたときのヒヤッと感がね、モンローウォークして来た娘のアツ〜い肌を楽しんだ後には、何とも言えないカ・イ・カ・ンなんだよなー。

うわ...見たかよ、胸元の汗。キラリ✨と滴ってるねー。
だけど、あんなに惜しげもなく出されちゃってると、さすがに目のやり場にも困るよな。見たいけど、見れない! 見てるけど、見てない振り!? これでも硬派で通してんだからさ。喉から手が出ちゃう程、身悶えしちゃう程、どうしても口説き落としたいんだけどさー。全く、スキもないねー、キミは。

無造作に束ねた髪にカトレアの花か。小粋に飾って、にっこりするんだよ。後れ毛がなんかこー、誘うんだよなー。じわっーと汗に濡れてたりしてさ。シャブリでしゃぶり付きたくなるよなー、これは。束ねるとさっきまで見えてなかった細い首筋が出てきて、つい思わずこのデカい手で撫で上げたくなる。そしたらその首筋には夏の大三角形のような3つのホクロ。そんでもってついでにゆるふわで柔らかそうな髪に指を絡めてさ、束ねてるのをぐしゃぐしゃにほぐしちゃいたくなるんだよなー。 もー! そー! 妄想超特急暴走中だろっ!?

背中の開いたゴールドのドレスは、理想的に引き締まったボデーラインを包んで、柔らかいブロンズ色の肌を引き立たせる、まさに黄金コンビ。ビタミンD欠乏症なんてどこ吹く風。空いた背中にも舌でなぞりたくなるようなホクロであはん♥ その滑らかな肌に溶け込まれるような色のドレスがこれまたあはん♥ グラス片手にスイングしながら、美脚が動くのを、でれーっ、と眺めてると思わず二度見しちゃうような、右の太腿にもホクロであはん♥ もー! そー! 妄想超特急暴走に拍車かけるだろっ!?

あんまり熱くなっちゃうとな、暑い中でも夜風がふわっと甘い、ひとり妄想中の窓辺へ人波分けてフラリと来るんだ。ちょっとおセンチなネコみたいにさ。するとどうだ、急にこてっと肩にもたれて酔い冷まし。だってよ。へ!?この肩で!? さっきあれだけハッスルしちゃった後は、くたっとしどけないポーズでさ、太腿のホクロも無造作にチラチラ目の前チラついてドキドキMAXだろ!?

とにかく誰もがみんな熱い視線浴びせてるんだ。
ヨダレの垂れてきちゃいそうな曲線の腰に当てた手つきも、んー悩ましいっ!
やっとの思いで、さり気なく、すりすりすり足でネコみたいにキミの隣へ進みながら、
"名前は?" なんて聞き出しても、そ~簡単には教えてくれないよなー。
その代わりにただ、ウィンクするのさ。
"ナイショね" と、ウィンクだけ。





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映画『ナイアガラ』1953年
ヘンリー・ハサウェイ監督
マリリン・モンロー、ジョゼフ・コットン



「Kiss」マリリン・モンロー




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