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お隣のA子さん Part2≪散文詩≫

ずるい
あなたはずるい
別の人を想いながら
そんなに甘くいられるなんて
なんてずるい人
悪い人
でも、それでいいの
この瞬間が
真実に思える程度に
礼儀を尽くしてくれているのだから
あなたが触れると
体が痺れる
あなたの唇にふれると
他の男がすべて
湯煙に隠されたように霞んでいく
あなたの その瞳が好きよ
あなたの映画の趣味はよくわからないけれど
それを話す仕草が好きよ
煙草の匂いは嫌いだけれど
あなたが灰を落とす姿を見ているのは好きよ
そっと私のあごを引いてキスされたら
夢見心地
でも絶対に好きだなんて言わない
この関係に名前をつけたくないの
つけた瞬間に陳腐になるのが分かっているから
もう少しのあいだだけ
永遠じゃない美しさのなかで躍らせて


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