見出し画像

2. 最初の夏は、免許合宿を言い訳に。

まだまだろくに波に乗れず、
それでも心は海に掴まれたまま
あっつい夏が来た。

相変わらず父とよく海に出かけていたけど、

“そろそろ友達も呼んで好きなだけ
サーフィンする毎日を過ごしてみたい”

そう思った私は、父が来ない平日にも
海洋庵に滞在する言い訳として、
自動車教習所に通うことにした。

(海洋庵は、父と仲間達のサーフィン小屋。
 ガレージにはロングボードがラックに
 何本も収まっていて、
 海上がりはお風呂にそのまま直行できる
 私にとって最高のチルスポット。
 正直、ここがなかったらサーフィンは
 続かなかったかも、と何度思ったことか。)

父はかなりの車好きで、
小さい頃から
“免許はマニュアルで取ること”
と何度も聞かされていたほど。

きっと納得するだろうと思い、
海洋庵から自転車圏内で発見した
安房教習所に問い合わせ、
もろもろはっきりしてから
父に相談、というか宣言した。

“私は、免許合宿に行きたい。
場所は海洋庵から近いので、
夏休みの間、海洋庵から自転車で通うね。”

まぁ、頷かざるを得ないよね。
これにて夏休みのサーフィン(免許)合宿が確約。

滞在期間が決まれば人を呼べるので、
ここぞとばかりに周知をかけた。
すると、7,8人から参加の声が上がり、
まぁまぁ立派な合宿に。

参加者の共通点はたった2つ。
同じ大学の生徒で、
サーフィンに興味があること。

毎日海に入ってはご飯を食べて
眠くなったら寝る。
ゆるく始まって、ゆるく終わる日々。
これぞ大学生の夏休み。

と想像していたのだが、
私だけちょっと様子が違った。
教習スケジュールが想定以上に詰まっていて
思ったより海に入れなかったのだ。

それでも、台風で海が荒れている日は
ホラー映画で震え上がり、
朝日が綺麗な日は海辺で写真を撮る。

また違う日には、
スケボーで無人島まで行ってみたり。

小さな冒険の積み重ねを
鮮明に覚えているくらいには
楽しい日々。

そして、空き時間を見つけては
みんなと海に入る。

悔しさばかりですこし下がっていた
サーフィンへのモチベーションも
仲間と入ると自然と持ち直していった。

なかでも、技術的に頭ひとつ抜けている
彼と海に入っていると
私ももうちょっと頑張ろう、と思えた。

夕方は、サーフィンの時間を
少しでも伸ばしたくて
目を凝らしてやっとかすかに
うねりを捉えることができるような
“ほぼ夜”みたいな時間まで
海に入っていることが多かった。

やっと上がってきた私たちに
大人は呆れ顔でいつも尋ねる。
“こんな時間まで入っていたのか。
波なんて暗くてもう見えないでしょ。”

たしかにほとんど見えないけど、
だからこそ、波の気配をよく感じるし
集中して感覚が鋭くなるから
面白いんだけどね。

大人に聞こえないところで
こっそりと話す私たち。
まだ10代の若者たち。 

少しだけ想像よりも忙しかったけど
想像よりも断然ワクワクの多い
1年目の夏休みになったのは、
今はもう、どこで何してるのか分からない
自由な仲間たちのおかげ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました。
過去記事はこちらから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?