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読書感想文『正欲』朝井リョウさん

*これから読もう(観よう)と考えている方は、ご覧にならない方がよいかと思います。ご注意ください。

書店のポップに書かれていた「読む前の自分には戻れない」という文言に惹かれて、朝井リョウさんの『正欲』を読んでみました。
とても面白い本でした。
でも、読む前の自分と別に変わった気はしません。
「ふーん」とか「へぇー」はあったけれど、どちらかというと「そうだよね」という感じです。
「だからポップに書かれていた文言はおかしい」ということではなく、
この本に違和感を感じたり、気持ち悪さを覚えてしまったりする方々を【まともな多数派】とするならば、
やっぱり僕は少し(かなり?)変わり者なんだなというだけです。
※読了後にネットに書かれている感想文をザーッと眺めてみると、やはり一定程度「気持ち悪い」と感想を持たれる方がいるようですね。

いちばん印象に残ったのは、
「この世界で生きていくために、手を組みませんか」
という言葉。
そう、この世界をひとりで生きていくのは、とても厳しいのです。
切り口や描き方は異なれど、凪良ゆうさんの『流浪の月』にも感じた
【自分を受容してくれる誰かの温もりの尊さ】
が描かれていたように感じました。

だから、作中で夏月が佳道の温もりを感じる場面にグッときました。感動的でした。

そして、「正しい欲とは何か」がテーマだと思うので、人間の三大欲求について書かれていました。
「正しさ」「多様性」というのは改めて繊細な言葉だと再認識です。
正常な食欲とは何なのか。自分は正常なのか。あの人は食事について悩んでいるかもしれない。
正常な睡眠欲とは何なのか。自分は正常なのか。あの人は睡眠について悩んでいるかもしれない。
正常な性欲とは何なのか。自分は正常なのか。あの人は性愛について悩んでいるかもしれない。

じゃあ確かだと信じられるものは何なのか。
「我思う、ゆえに我あり」
思いを巡らす自分が確かにそこにいるってことぐらいかな。
デカルトは偉大だなって思いました。

あとは、某国民的アニメ主題歌で歌われている
「愛と勇気」がとても大切なのではないか。
ここ何年かそんなふうに感じていることも、やっぱり大切だよなと思いを深めた読書でした。


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