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展示『円空-旅して、彫って、祈って-』

私はここ半年以上、謎の湿疹に悩まされている。血液検査をでもアレルギー検査でも原因が分からず、先生もお手上げのご様子。
とりあえず、腕の内側から手の甲、ふくらはぎ、胸に背中に腰、全身に広がった赤い湿疹を鎮めてその状態を維持できるように、とのことでステロイドの内服治療をすることになった。
4錠から始めて、1週間ごとに3錠、2錠と減薬していき、内服をやめても皮膚の異常がなくなった状態を維持できれば万々歳。
祈る気持ちで内服を続けるものの、2錠にたどり着いた時点でまた湿疹が復活してしまう。仕方なくまた薬を増やす...というのが今回で3回目。2回目で上手くいかなかった時点で嫌になってしまい、塗り薬でなんとかならないものかと打診したところ、そのように対応をしてくれたが、過去一で広範囲、しかも痒みが非常に強い湿疹が出てしまい、また内服に戻った次第。どうしたものか。何がご不満か教えてほしいものです。

ステロイドの内服をやめていたところに久しぶりの4錠で身体が驚いたのか、あまり眠れなかった。
一時間おきくらいに目が覚めるし、目が覚めたらどこかしら痒い。眠りも浅いから眠っていたのか起きていたのかも分からない。
浅い眠りで見る悪夢。頭皮の湿疹がさながら焼け野原のように赤く広がり、その部分の髪は落ち武者のよう。母に私の髪がないと泣きつくと、あるかないような細く短い毛髪を焼け野原から見つけ出してなんとか慰めてくれるが、動悸はおさまらないし絶望は広がる。目が覚めて一番に頭を触って安堵した、嫌な目覚め。

そんな目覚めの日に、あべのハルカス美術館で開催中の『円空-旅して、彫って、祈って-』に伺った。苦しい夢を見て祈るような気持ちで目覚めた今日は、訪れるに相応しい。

お迎えしてくださった1m以上あろうかという金剛力士立像はやさしい微笑み。体は樹木だった頃の形をほとんど留めたままで、初めて見る雰囲気の仏像だった。

円空の初期作品は、木から丁寧に彫り出され、なめらかにつやつやと整えられている。袈裟の襞は曲線で、不思議な流れに目を奪われた。好ましい作品があったのに、ポストカード化されておらず無念。

後期の作品は、個性を残した樹木と、円空の彫り出した形跡が分かる大胆さ。引き算の美学。自然への信仰と憧憬も併せ持つ仏像の力強さ。

人を救いたいという想いで、祈りながら彫られた仏像は、病気の治癒や雨乞い、災いの回避等、更なる祈りを受けてきたはず。あわよくば私の謎の湿疹も治癒すればとささやかな祈りを込めてまわった。

人の身体に巣食っている虫が夜な夜な身体を抜け出して、その人の悪事を仏様に告げ口する。悪い虫を遠ざけるために祈る仏がおもしろかった。うろ覚えだが、三面の顔を持ち、足元には三匹の猿。見ざる、言わざる、聞かざる。これもポストカード化されておらずまたまた無念。

展示の最後の映像作品では、自然の森の中にちょこんと鎮座する仏像の映像があった。樹木から彫り出された直後のような、無垢で薄茶色の仏像。円空の仏像は寺でも展示場でもなく、自然の中にあるのが一番正しい感じがした。一部だった。
でも、こんな寒い日に森の中まで出向く程アクティブな人間ではないので、暖かい展示場でのんびりじっくりと眺められるのはありがたかったけど。

厨子に入っていたという小指程の大きさの作品もあり、小さくても仏は宿るという意思が見えた。自然の持つ力を信じているからこそかもしれない。作品群を眺めていると、生涯で12万の作品を作ったというのも疑いようのない感じがした。

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