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センセイ、

久しぶりにnoteにやって来た。
人生で初めて 立ち飲み屋 に行った話をする。
恋人が立ち飲み屋は楽しいぞ と言うので、すぐに感化されて家から徒歩5分くらいの店へ行った。通りかかるたびに行ってみたいとは思っていたが、ついに、という感じである。

上下スウェットで、しかし化粧だけはしっかりして(卑屈な人間であるため化粧をしなければ外に出られない)できるだけ明るい声で、1人です と言った。
狭いカウンターの1番端に案内されて、左隣には赤ら顔の小さいおじいさんがいた。きょろきょろしないよう注意しながら、これもまた出来るだけ明るい声で、すみません レモンサワーひとつ と言った。その後は梅酒のロックを数杯飲んだ。

私の目の前には「飲食店って出会いの場としてサイコーだね」といった趣旨のポスターが貼ってあり、その絵の中の女性とずっと向き合いながら酒を飲んだ。奥と1番手前の席ではやたらと盛り上がっている中年の男女がおり、狭い通路を挟んで右側には大柄で寡黙そうな男性がテレビを凝視している。

お造りが280円!すごく分厚く切られたぶりが出てきて、なんだか悪いことをしている気分になった。愉快だった。私は少しずつ酔ってきて、またタバコを吸って、1人でにんまりとしていた。これって、まさに私の大好きな小説みたいよ なんて静かに興奮さえしていた。隣の小さなお爺さんが「センセイ」だったりしないかしら。
私にとって「センセイ」になりうる人物とは誰だろうと上を向いて考える。中学校の国語の先生であった徳山先生が丁度いい。彼は読み上げながら板書をするスタイルで、「?」と書くときも「疑問符!」と大きな声で言っていた。
「キミは女のくせに1人でこういう店に来るんですね」と言われたい。が、やはり小柄な赤ら顔のおじいさんに言われたいわけではないことに気づく。それに、申し訳ないが恋愛に発展するのは真っ平だ。(もっとも誰もそんなことは思っていないし私は酷く人見知りだ)小説は小説なのだ。
むしろ、どちらかというと、「ツキコさん」に恋をしている。ツキコさんのような女性になりたいような、なりたくないような。いつかツキコさんのような女性が隣にいたならば、話しかけてみるのも良いだろう。

1人で壁を見上げながら本当に小さな音で鼻歌を歌う。指先まで音楽が流れて、心地よかった。


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