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ネパール・ブッダ生誕地に住む子どもたち

ネパール6日目はインド国境に近い町・ルンビニへ移動した。ここにはブッダが生まれた聖地があったので「世界遺産だし行っておこう」という、かなり軽ーい気持ちで訪問を決めた。

観光地に住む物乞いの少女

ルンビニには国連など世界的な機関によって整備された聖地公園があり、公園の全体設計は丹下健三によってなされた。公園には「ドイツ寺」「韓国寺」など世界各国の国名がつけられたたくさんの寺が点在していた。

「参詣者は日本寺近くのホテルに滞在し、正門から入園して小舟で運河をわたり、祈りを深めながらブッタ生誕の地・マーヤー聖堂へ入る」という丹下氏の構想を全く無視して、とりあえず滞在先のゲストハウスから最も近かったマーヤー聖堂に行く。

当日は霧が出ていたため、大きな木の下でお坊さんたちがお経を読んでいる風景が神秘的だった。

その後、色々な寺を見て回っていった。どれも建物は立派だけど観光客ばかりで、京都というよりディスニーランドに近い雰囲気だった。

そんな人混みのなか歩いていると、お経を唱える6歳ほどの女の子がこちらに向かってやってくる。上手だなぁと思いながら微笑みかけると、そっと手を出してきた。物乞いだ。ネパール滞在中はあまり物乞いに合わなかったが、ルンビニの公園ではとても多かった。

よく見ると、女の子の目は虚ろだった。物乞いをしては人々に無視される。そんな経験を繰り返していると、あんな目になっちゃうんだろう。本当は小学校に行っているはずなのに、この子は将来どうなるのか……そんな気持ちになる。

一方で物乞いの子供にお金をあげても、彼らを救えない。お金は周囲の大人の手にわたり、子供たちの環境を変えることにはならないからだ。だから私も、他の観光客のように彼女の小さな手を無視するしかなかった。

村で出会った子どもたち

聖地公園から戻り、ゲストハウスのオーナーと喋っていると「500m先に村があるから、時間があるなら行ってみるといい」と教えてもらった。特に何もすることがなかったので、散歩がてら行ってみる。

教えてもらった道を歩いていると、急に畑が登場し、すぐに村が現れたから驚いた。ゲストハウス周辺は3階建てのコンクリートの建物が並んでいたのに、村は手作りハウスが立ち並び、山羊や犬がウロウロしている。家の隣には小さな畑と家畜用の藁が積まれ、ちゃんと牛もいる。もう、がっつり農村だ。

藁の上でお昼寝する犬たち

村に訪れる外国人は珍しいからか、子供たちが「ナマステ!」と話しかけてくる。また物乞いかなぁ……と思い、なかば躊躇しながらナマステと返すと、笑って手を振ってくれる。どうやら物乞いではなく、単純に挨拶してくれたみたいだった。

その後も村を歩くなかで何人もの子供が挨拶をしてくれて、カメラを向けると笑ってくれた。

カメラを向けるとポーズしてくれた女の子たち

ネパールでは暖房のない家が大半。この村でも外で火をおこし、暖を取っていた。横を通ると、「こっちへ来て座りなよ」とジェスチャーしてくれるおばさんもいた。なんだか、村全体がとてもあったかい。

1km圏内のまったく異なる世界

当日はネパールの休日だったため、村ではたくさんの子供が外で遊んでいた。楽しそうに遊んだり、ナマステ!と笑いながら挨拶してくれたりする子どもたち。決して裕福な暮らしではないけれど、とっても楽しそうだ。

何回も「ナマステ〜」と話しかけてきた男の子。

そんな彼らのキラキラした目を見ていると、ふと公園で出会った物乞いの少女を思い出した。村に住む子と観光地で物乞いをする子。互いに1km程度の距離に住んでいるのに、全く違う世界に住んでいる。そんな彼らが出会うことはあるのだろうか。

小さな世界で生まれる大きな不条理に、どうすることもできない歯がゆさを感じる。ブッタだったらこの状況をどう捉えるんだろう?なにか行動を起こすのだろうか?……そんなことをぼんやり考えながら、私はルンビニを後にした。

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