マガジンのカバー画像

アカシック・カフェ【prologues】

6
アカシック・カフェの各エピソードのプロローグ、冒頭だけを集めたマガジンです。お好きなお席にどうぞ。
運営しているクリエイター

#喫茶店

アカシック・カフェ ―全知と珈琲の番人―

アカシック・カフェ ―全知と珈琲の番人―

「もうアカっちゃいなよー!」
「でも、あたし的にはエージ信じたいし」

常連の女子高生のいつもの恋バナ。しかし、どうも雲行きが怪しい。シュウカがアカシックレコードを提案したのだ。一方ハヅホは曖昧な返事。そりゃそうだ。『世界の真実』によって浮気が確定したら目も当てられない。

十数年前、人類はついにアカシックレコードに接続した。が、蒸気機関やインターネットのように社会が激変することはなかった。一般市

もっとみる
アカシック・カフェ【3-1 アイスコーヒー・リーディング】

アカシック・カフェ【3-1 アイスコーヒー・リーディング】

これまでのお話はこちら

□ □ □

よく晴れた、土曜の昼下がりだった。

「明窓館の…高等部、新入生か」
「え?」
「あっ」

……やらかした。普段からなるべく口には気を付けているんだが、今日はお客が少なくて気が緩んでいた。
注文を取りに来た俺に、口を開く前に素性を言い当てられた少年は、目を丸くし、そしてすぐ輝かせる。あーあー、嫌な予感がする。ご無沙汰の展開が来るぞ。

「……まさか、アカシッ

もっとみる
【アカシック・カフェ 3.5】ゆるり香れり、赤羽の鶴。

【アカシック・カフェ 3.5】ゆるり香れり、赤羽の鶴。

これまでのお話はこちら

□ □ □

午後三時。お客のいなくなった店内には、常連女子高生三人組だけだ。
バックヤードで洗い物を片付け終わったところで、ハヅホがいかにも「やらかした」雰囲気で呻いた。大人びた彼女のこういう「失敗」は珍しいな。

「永愛ちゃん、ヘアゴムとかシュシュある?」
「あ、ごめんごめん。ちょっと持ってくるね」
「私の使いなよ、ハヅ」

なるほど、厨房に入るには髪を纏めるべき、と

もっとみる