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余所者


私は"余所者"としてやってきて、
再び"余所者"として去っていく。

この私の旅は、時期さえも選べない。
道も自分で決めなくてはならない。

これ以上、ここに長居してどうする?
私は追い出された身分なのに。

ミュラー、冬の旅より。

私はどこへ行っても余所者だ。
どんな場所にも、
どんな立場にも、
落ち着くことができない。

どこへ出かけても、
誰と話していても、
得られるものは
「自分は余所者だ」
という自覚だけ。

湖の真ん中にポツンと浮かんだ1滴の油のよう。
何をしても、何をしなくても、馴染めない。
馴染もうとすれば、はじかれる。

そんな時代を何度も繰り返し、
私は孤独な人間になってしまった。

いっそ"永遠の余所者"として生きようか。
無理して馴染もうとする必要なんてない。
自分を偽らずに生きる方が楽だ。

最近は、そう思えるようになった。

重たい持ち物は全て捨てて、
たったひとつのリュックのみを抱えて。

今日から私は"旅人"だ。

誰にも頼らず、ひとりで進む。
つらいことがあれば ひとりで泣いて、
嬉しいことがあれば ひとりで笑い、
楽しくなれば ひとりで歌う。

出会う見ず知らずの人々には優しく接し、
困っている人を見かけたら助けてあげる。

友人などは作らない。
どんな出会いも、たった1度の縁だと割り切る。
そうすると不思議と人が好きになれる。

どこにも長居はしない。
誰とも深く関わり合わない。

これは寂しい生き方だろうか?

答えは人それぞれだろうが、
私は以前よりも笑顔でいることが増えた。

私にとっては、これが答えだ。

柵の中に留まれば余所者。
柵の外へ踏み出せば旅人。

私は"余所者"ではなく"旅人"として生きる。
私が私の人生を、もっと好きになるために。

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