私としたことが。

すでに秋場所が始まっていた。

テレビで相撲観戦するのは結構楽しい。

と言っても、大抵幕内の中盤当たりから、
家事をしながら観戦する。

根性無しの私としては、
スポーツ観戦はごく限られたものや、
ダイジェスト番で実は充分だ。

長い試合時間をドキドキしながら、
見てるのは人生の無駄のような気もするし、
あーだこーだと、誰かとつつきあいながらの
観戦も性に会わない。

息を詰めて短い時間を、
さらにギュッと凝縮する感じの相撲が好きだ。

立ち合いは気を合わせないとやり直し。

気を合わせる勝負って他に何がある？

相撲は非日常の存在であるところの力士が、
非日常のルールを守りながら、
非日常の空間を作り出すので、単純に面白い。

しかも私は観客席を眺めるのも好きだ。

砂かぶり席には名の知られた有名人の
プライベートの姿も垣間見れることがある。

今場所2日目には、画面の左隅に
高須クリニックさんと
パートナーの西原さんの姿が見えた。

時々相撲観戦されるようだが、
高須院長のファッションは
いつも派手なのですぐ目に留まる。

実物を見れば、
微妙なこなれ感があるのかもだけど、
テレビ画面で見る限りは、
ただ黄色としか言いようのないジャケットだ。

その黄色のジャケットの中は、
真っ白と言えば真っ白なので爽やかだが、
西原さんの、あのとぼけたダーリン(高須院長)の
イラストが書いてあるように見える。

確かに愛を感じる微笑ましいお二人だ。

何歳だろう？と、びっくりする若さの
大村昆さんを見つけることもあるが、
真っ先に探すのはお馴染みさんの顔ぶれだ。

いつもテレビ画面に収まる、
おじさまやおばさまの顔を探す。

（もしや亡くなったのかも）

（今日は洋服で来てる）

（いつもと違う席だわ）

（相変わらずの髪型）

（今日は一人なんだ、、、）

心配どころはいくらでもある。

いつぞやは、知人が某有名会社の
某会長に誘われたと言って、
「升席で○○関を応援してきた～♡」
と、教えてくれた。

銀座六本木で働いていたという
イメージが全くない、明るい彼女。

さぞ会話を楽しみながらの観戦のお供に、
最適な子として誘われたんだろう。

好きな人は、観戦しながら
何度も子供になれる、お相撲の取り組み。

勝負は短い時間で片が付くので、
ドキドキする時間は短くも繰り返し訪れ、
人を変え、行司を変え、お得感満載の楽しさと思う。

それに懸賞金の旗を数えるという楽しみもある。

（合計○○○万円位だな）と、
組み合わせの人気度をはかる。

こんなに堂々と、しかも単純に
お金が介在することって、他に何かある？

観客との距離が近すぎるのも面白い。

かつて父が地方巡業観戦に出掛けた時に
「小錦が目の前に座ったら、
小錦の背中しか見えなくなった」と
何十回も、繰り返して教えてくれた。

それほど、堂々たる体躯の小錦の、
背中以外の衝撃はなかった程の非日常だ。

大人のアドベンチャーワールド。

土俵のそばには、
エネルギー吸い取り機械を作った方が良いのでは？
と、思うほど男の闘志にあふれかえっている。

栃ノ心のその表情はとても好みだった。
負けると一瞬にその表情が赤ん坊のように変化する。

今回、舞の海がその闘志を「内に秘めている霧島」と解説する。

反対に、分かりやすいパフォーマンスをするのが、
対戦相手の北勝富士だ。

ゴリラのように、
胸や身体のあちこちを叩き、自ら鼓舞するのが分かる。

プロレスならどう見ても悪役レスラーの顔だ。

口を尖らせ、その目は切れ長と言えば聞こえがいいが、
ともかくどう見ても男としては魅力ある面相をしていない。

しかも髷が結えなくなるのでは？と心配する程薄毛だ。

普通の髪型の普通の仕事をしている人だとしたら、
理容師さんを悩ませる程の、個性的なハゲ加減だと思われる。

でも私は勝負の前に、自分の額の前に拳を当てて、
顔を上に向けて、神に祈るか力を込めるか、
何かそんな風なポーズをするところが好きだ。

陽にさらしてないような白い肌と、唇のピンク色も好きだ。

取り組み後のインタビューを受けてアップで顔を見ると、
やはりという、ガッカリした気分にさせられるが、
選ぶ言葉に揺るがない感じがあって、そこも好きだ。

北勝富士には静かな物語がありそうで、
多分そこに惹かれるのだと思う。

先場所は残念でした。

今場所は男の意地と勝負強さを発揮して、
粛々と優勝して欲しいと密かに応援している。

今日は祝杯用の特別純米吟醸酒を買っておこう。

男の価値は顔でもないし、見た目でもない。

正しく強い直情の闘志だ。

負けた時も、見るものが清々しさを感じるのだから。

ああ～私も国技館で、
座布団が乱れ飛ぶような取り組みが見たい！