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言葉を見つけられないでいる*言霊を信じて祈りと変わらない日常を綴りましょう

1月1日はいつもの朝だった。

変わったことと言えばアマプラで「WBC侍たち~」の
テレビ番組を、家族で見ていたくらい。

どこもお正月の特番で、似たり寄ったりで騒がしいテレビ。

それならとつけた番組は、母の気に行った様子で、
訳の分からない野球用語はともかく、
ひとりひとりが孫であるかのように、
逐一自分なりの解説が止まらないことに、居合わせたみんなで驚いた。

「いつから野球好きになったの?」

「WBCでかなり勉強したから」

「なんで詳しいの?」

「お茶のみ友達もみんな見てたし」

この時は可哀そうだった、こんなに頑張ったのに、
さぞ悔しいだろう、親もホッとしたと思う、健気だ、
いい顔になった、この時さぞ喜んだことだろう等々。

解説といっても、ひとりひとりの孫の気持ちの代弁のようだった。

笑顔や頑張る姿が、日常の励ましになっていたことを知る。


帰省客も来客も帰り、一休みしたあと、
夕方にテレビをつけて、そのニュースに驚いた。

言葉が見つからない。

テレビの画像は静かな町の様子を写していたけれど、
その下でいろんな人達がどんな風に動いていたかは、想像できる。

何度も何度も揺れる地震に、どれほど怖い思いをしたのだろう。

今でも小さな揺れでさえ、身体中が反応しているはずだ。

寒さの中で心細さを抱えて、集まる人々。

電話の繋がった娘が安全なところにいることに安心し、

もしもの時は自宅のあれこれは諦めるよう、くれぐれも伝える。

その中には、3.11後に必死に探して拾い集めて作ったアルバムがあった。

七五三祝いの着物姿、誰かの結婚式のドレス姿、
可愛らしかった写真の数々は見つからず、貧乏な家庭の子供か、
教養のない家庭の子供か、親の愛情のない家庭の子供か、
ともかくそんな風などうでもいいような写真が数枚見つかった。

写真から写真に焼き直し、写真屋さんが修正を入れてくれて、
友人が「入学式のスナップに写っていたから」とくれた
脇役のような写真を混ぜて、
「ごめんね。これだけしか拾えなかった」と言って、
お嫁入りの際に小さなアルバムを渡した。

そこには娘の小さい頃の可愛らしい写真はなくて、
ただ思い出の蘇る写真だけがあった。

いろんな世界中の方が作成してくれた、
支援のアルバム展があって、
スペインのアーティストが作成してくれた、
白い表紙に黒いページのアルバムが、展示会のあとに頂けた。

小さなアルバムだったけれど、
写真は最後のページを埋め尽くすほどはなかった。

亡くなった人を探して遺体安置所巡りをする人のように、
拾われた写真を、あちこちの福祉関係やその写真の作業所で探し続けた。

下の娘が生まれた時の写真は自衛隊の人が拾ってくれて、
市内のホールでは娘が広い仏間で滑り台で遊んでいる写真が見つかった。

大事な写真だったので、ボランティア活動をしていた神戸の大学に送り、
剥げた箇所が復元されて、何年か後に綺麗な写真になって戻ってきた。

社会福祉協議会にも洗浄した写真が膨大な数のアルバムに整理されていて、
思いがけず遠く波に乗ってきたのか、親戚の二枚の写真を見つけた。

なんでだろう、そんなことを思い出した。

色んな場所で並んだり、いろんなものを洗ったり、
いろんなものを探したりが毎日だった。

道路や倉庫に買い上げられる予定の土地が、
どちらも地権者一軒のみの拒否のため、
とうとう何にも使えなくなった土地が出来てしまった。

桜の木でも一本植えて、あとは草刈り位しておけばいいかと思っていたら、
近所の花好きのおばさんが、何かをやってると知って、
「これも植えて」と紫陽花を13本持ってきてくれた。

そこから、なんの運命の流れか、誰かに用意されたかのように
ポタジェのような花と少しのお野菜畑の庭にしようと夢が出来た。

3年位は休みの度に石と瓦礫の格闘だった。

いろんな物がたくさん出てくる。

雑草は荒れた自然の力を誇示するように、強くて、
(なんで私がこんなことしなくちゃいけないんだろう)
と、何度も泣きたくなった。

(なんでいつまでもこんなことしてるんだろう)
と、何度も自分に問いかけた。

昨年、海嘯記として、
2011年にクローズドの掲示板に投稿し続けた記事をあげた。

特に反応もなかったし、(今さらなんでこんなことしたんだろう)
と思って有料記事に隠すようにしまいこんだ。

やはりなにかどこかに、生き残った後ろめたさのようなものが
残っているのだろうと思う。

寒い冷たい一夜を過ごしたであろう多くの方を、
テレビ画像を見ると、私は暖かい家で食事も充分に摂ったし、
綺麗な寝具の暖かいベッドで眠れた。

本当にごめんなさいと思う。

どうかこれ以上大きな災害になりませんように。



花の種じゃなくて、苗を買ってもいいですか?あなたのサポートで世界を美しくすることに頑張ります♡どうぞお楽しみに♡