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下弦の月*早起きは三文の得

小さい頃から北斗七星はすぐに見つけられた。

現在は脳のシナプスもどんどん減ったせいか、
特徴的なオリオン座の三ツ星位しか見つけられない。

星空探索は天気に左右されるし、
空の広さももちろんそうだし、
その時住んでいる街の夜のにぎやか具合にも左右される。


見た目では分からない色んな趣味を極めている人は
少なくない訳で、久々に会った友人は、
「今度持ってきてあげる」と自家焙煎のコーヒーを
バラエティセットみたいに、次の機会に持ってきてくれた。

聞いたことない豆の名前が印刷されてあって、
コーヒー屋さんになったのか、どこかで販売してるのかと
思ったら、「ただの趣味だ」とこともなげに言う。

全部が飲んだことのない味と香りだと、驚いた。

(こんなにちがうんだ・・・)

ペットボトルや缶のコーヒーの銘柄にこだわるひとはいても、
ちゃんとしたコーヒーにこだわる人なんて、回りにいなかったので
バリスタどころではない、お手製のその味のひとつひとつに感激した。

そう言えば、昔から丁寧な性格で落ち着きのある彼女だった。

趣味といっても、きっと本人にとっては極めるというよりは、
ただ自分のリラクゼーションの意味が大きいんだと思った。

編み物が趣味の人も、布小物をハンドメイドする人も、
つまみ細工にいそしむ人も、年数が経てば、玄人はだしになるけれど
口を揃えて「ただ自分が楽しむだけだから」と私に語る。

noteに記事をあげるようになってから、早起きの習慣がついたので
まだ薄暗いうちに起きてカーテンを開けることになる。

下弦の月が白く光っていて、とても美しかった。

不思議な感覚が呼びさまされる形で、心がどこかに迷い込む。

東の空には、マイナス4.6等星の金星が燦然と輝いている。

こんなにも光を放つ美しい星を見ることなく、人は建物の中だけで
暮らしているんだなぁと自分は棚に上げてひとりごちる。

(本当はこんな世界に暮らしているんだ)と誰かに教えたくなる。

私は常に教えられる側の人間だ。

実は星空案内人、または星のソムリエと呼ばれる年上の友人が、
さまざまな夜空の世界の質問に答えてくれる。

「その時間、東の空だったら、金星か、しし座のレグルス。
東南の空ならシリウスかな」

「9月は金星が細い三日月形になって、宵の明星で西の空にいたので、
今は明けの明星になっていると思うの。
すごく明るく輝いていたでしょう?」

「今夜も星を見ています。土星、アルビレオ、アンドロメダ銀河。
これから二重星団を入れようと思います(望遠鏡に)」

冬の大三角形、球状星団、聞きなれない言葉が会話に挟まれるたび、
私はいつも検索の鬼になる。

星好きに出会うのは人生で2人目だ。

「あのね、あそこの病院に行ったら若い女医さんでね、
綺麗な人で、丁寧なお話だったよ。でも信じられない位厚塗りしてた。
マスカラもネイルも隙なしよ。あそこまでスゴイ女医さん初めて見た!」

まくしたてる私に彼は言った。

「今日は金曜日だからね。急いで帰りたいんだよ。
デートなんじゃないかな。きっとそうだよ」

言われた後で、小さく心の中で、素直に(そうかも)と内緒で同意した。

医者として見る私。

若い女性として見る彼。

患者側に立って批判する私。

同じ人間側で思いやる彼。

やっぱり見ている世界がちがうのかもと、反省した思い出がある。

病気になると「やらなきゃいけないこと」から解放されて、
ぽっかりと考えるスペースが生まれるという、いいこともある。

やらなきゃいけないことをどんどんこなしていく自分は、
別に「出来る人間」だったわけじゃなくて、
ただ、
「余裕がなく、落ち着きがなく、せっかちな人」だったのかも。


明日の朝も、早起きして見る世界が楽しみです。






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