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駅の階段

昔むかしのこと

若いおかあさんと
生後数ヶ月の赤子が
駅の階段の前におりました

道ゆく人は
お母さんにぶっかり
睨みつけて言ってしまいました

若いお母さんは
途方に暮れていました

ベビーカーに乗った我が子を
安全にホームまで連れていくために
どうしたらいいか、と。

キョロキョロと見回しても
エレベータはありません

お母さんはベビーカーの中から
抱っこ紐を引っ張り出して
スヤスヤ眠る赤子をそっと抱き上げて
抱っこ紐で固定しました

ベビーベッドをたたみ

「よいしょ」と右肩に
赤子の細々のものが入ったカバンを左肩に
背負い、壁のような階段を
ゆっくりゆっくりと踏み外さないように
登りはじめました。

すれ違うサラリーマンが忙しそうに
睨みつけてすれ違っていきます

よいしょ、よいしょ

肩に荷物と赤子の重さが食い込みます。

やっとホームに辿り着く頃にはヘトヘトですが、まだまだ、終われません

電車に乗り込むと畳んだベビーカーが邪魔だと言いたげな、舌打ちが何処からか、聞こえてきました。

赤子が泣いたなら、すぐに降りれるようにと
準備をして、お願い泣かないでね、と赤子の頭を撫でます。

「どうぞ」

心優しい乗客の方が
席を譲ってくださりますが、

「座ると泣き出してしまうので」

と丁重にお断りします

「じゃあ、荷物だけでも」という
優しいお言葉が嬉しくて
降りる駅までお願いしました。

無事に駅につき
ホッと一息

キョロキョロ…

あ、エレベータないや

荷物を持ち直し

よしいくぞ!

階段をリズムをとりながら登り始めると
目を覚ました赤子が、
キャッキャと笑います

この笑顔が元気を呼び込んで
駅のエレベータのない階段を攻略したのでした。

昔むかしのお話
駅にエレベータがなかった時のおはなしでした

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