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創作活動

 

洗面所に行くと、シャワーヘッドが伸びたままぶらんと垂れ下がっていた。美術室の手洗い場みたいにピンクの絵の具の跡があちこちに付いていた。

今日の作業の量と見合わない汚れ具合にため息がでる。


準備や後片付けが苦手なんだよね。知ってるよ。知ってはいるけど、積み重なるその些細な事をいつも快く許せるかどうかは別の問題なんだ。


その洗面台は単に汚れているというよりかは、頑張って清潔保とうとしている日々の努力を蹂躙されているように思えるんだよね。








明日持っていかなきゃいけない星のカービィを紙粘土で作るのに、前日の午後に未完成、一度作ったものの、思ってたんと違うからってことで力尽きる、その後はこちらから働きかけるまで動き無し、いざ材料買いに行けばやたら完成度の高い物を作ろうとする。とりあえず完成させて明日持って行くという現実的なラインに全く目標設定しない。



一般的なルートでの就職を諦めた人間が自分の内なる創造性で勝負しようと一念発起するも、大言壮語を吐くばかりで現実が伴わないダメ男の典型的な雛形が目の前にあるような気がして、少し頭がクラクラした。


しかし彼はまだ8歳である。『成功体験を多く積めるように、応援してあげてください』
主治医の先生もそう言っていた。これくらい出来るよねじゃないんだ、一緒に頑張ろうねの精神を忘れないでいてね私よ。


彼は紙粘土の扱いをよく分かっていなかったようだった。丸を作ったものの表面がヒビ割れる事への対処がわからず諦めてしまったようだ。


そこで躓くの?


想定の下の下。

星のカービィなんてピンクの丸一個大きいの作ればあとは適当にちょんちょんとパーツつければ出来るんだから、一人で頑張り給えと思っていた。


棍棒でスライムやっつけるのに親の手助けは余りに過保護じゃないかと思っていたけどそうではなかった、レベル1のミッションだと思っていたそれにすでに困り感を抱えて挫折していたとは露知らず全くもって予想外。


とりあえず明日、カービィと認識できるものを持っていこうと結局のところ、ほとんど私が作成していた。


原作と作画が違うなんてよくあること、原案息子制作母。


とりあえず形になったものを持って行けたら、ダメなオレって劣等感を少しでも払拭できるかもとそう思っていた。


まぁ劣等感の多くは息子の度重なるやらかしに叱責する私からのものがほとんどなんだろうけど。



翌朝乾いたカービィちゃんをビニールぶくろに入れて忘れ物ないようにとランドセルひょいと持ち上げたら、先週持ち帰ったであろう給食当番のエプロン袋がそのままの姿でぶら下がっていた。



こういう時に心に荒波立てない、凪でにっこり微笑んでいられるそんな大人に私はなりたいよ賢治。


乖離しがちな自分の中の理想と現実に徒労感を覚えつつ、お昼時前に、洗濯したあとに乾燥機で乾かした給食当番のエプロンを学校に持って行った。



帰りに紙粘土を買って帰った。

もう少しうまくなりたい。








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