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2.脳の「デスサイクル」をとめる。効率よく能力を上げられる方法

結果はまとめに書いてあります。時間がない人は飛んでくださいね。
前回の記事はこちら↓

ヒトの脳を考える

デスクワークという職業が生まれたのはホモサピエンスの長い歴史でみると、ほんのついさっきのことです。

座っていても、白米とお肉が食べれる。

これは大変豊かであると同時に、およそ700万年前にアフリカで誕生した人類が狩猟採集をしながら何百万年も生きながらえてきたこと考えると、現代の生き方が進化の過程を無視していることに気が付きます。
そして狩猟採集時代のかれらの脳は現代のヒトと比べて決して「劣っていた」わけではなく、長い時間をかけて稲作をし、文字を発明し、戦争をしてきたから現代があります。

プライベートライアン(Privateには一般的に使用される私的を意味するプライベートのほかに、二等兵という意味がある戦争映画です。)にモルヒネが登場しますが、モルヒネとは強い鎮痛作用と多幸感がある物質です。しかし、薬という形で外部から摂取しなくとも私たちは脳内で自家製造できます。「体内性モルヒネ」エンドジーナスモルフィンは略されてエンドルフィンと呼ばれています。
なぜ人類が鎮痛作用と多幸感をもたらす物質を自家製造できる仕組みなのでしょうか。
それは、生き延びていくために脳が苦痛を消すと同時に、幸せな感情を得ることが必要だったからです。
例えば、女性が命をかけて出産するときにもエンドルフィンはでます。
しかし、繁殖という遺伝子を繋ぐ作業に必要な出産だけではなく、ランナーズハイという状態もエンドルフィンが出ています。
それは、走るという苦痛を伴う行為が出産と同じくらい生命の維持に大切だったからです。
人類が誕生してから何百万年間も長い間、走って獲物を追いかけ、走って生活をしていたころの体の仕組みは脳と密接にかかわっており、走ることをしなかったら死んでしまった時代が長かったのです。
しかし18世紀に蒸気期間や電気が発明されて生活が一変しましたが、それはたった200年前のことです。

つまり、エンドルフィンが出る仕組みを備えているということは、「走る」ことを前提とした脳の作りとなっていることがわかります。
しかし、過酷なまでに走りすぎると短期記憶が苦手となり、脳には悪影響ということもマウスを使った実験で明らかにされていますので、重要なのは心拍数をあげるということです。
心拍数の上がらない、例えばヨガやストレッチのような動作よりは、しっかりと走ることをした方が良いといえます。適度な運動は脳に血液と酸素を供給し、脳を育てることができるのです。

そう考えると、日本の学校のカリキュラムは大変良く出来ていると感心します。
運動直後から集中力が上がることがアメリカの研究で明らかにされており、体を動かしたグループと座っていたグループでは、体を動かしたグループの方がテストの結果は良いのです。
日本の小学校では週に3回ほど体育があり、諸外国と比べて部活に真剣に取り組む気質のある日本人の能力が高いのは、身体を積極的に動かしている機会が多いからではないかと思います。体育の時間の後に勉強をすることは、能力をあげることに効果的といえます。

しかし、学校生活をおえた社会人に目を向けてみると、ずっと座っているのです。
日本が豊かになった証拠ですが、シドニー大学の研究者たちが世界20カ国・地域の成人を対象に平日の総座位時間を調べたところ、日本人の中央値は1日7時間でした。全体の平均中央値である1日5時間より、2時間も長いことは何を意味するのでしょうか。
身体を動かさないテレビゲームや車大国である日本には、多くのうつ病患者と自殺者がいます。
チリやフィンランドの研究では、週に2回以上運動をしている人は、ストレスや不安とほぼ無縁であるという結果が出ています。
ストレスと不安はHPA軸(視床下部Hypothalamus、下垂体Pituitary、副腎 Adrenal gland)や偏桃体によって引き起こされます。ストレスによってHPA軸が刺激されて、副腎がコルチゾール(ストレスホルモン)を放出します。
コルチゾールの血中濃度が上がると、脳と身体が厳戒態勢となり、動悸が激しくなります。敵が多かった時代、「闘争か逃走か」という選択をする際に、動悸を強制的に激しくしてすぐに身体が反応できるように備えることは必要だったのでしょう。コルチゾールが分泌されると血液にのって、海馬がHPAの興奮をしずめるために、身体は正常にもどります。海馬が感情のコントロール器官として、ストレス反応を引き起こすコルチゾールを相殺しているのです。

しかし、ストレスホルモンのコルチゾールが慢性的に分泌されると海馬が委縮してしまいます。海馬の細胞は過度のコルチゾールにさらされると死んでしまうのです。なので重いストレスを抱えた状態が長く続くと、言葉がうまく出てこなかったり、短期間の記憶が無くなったり、海馬は空間認識にもかかわっている器官なので場所の認識ができなくなったりします。
うつ病になった人はHPA軸の亢進がみられ、海馬が委縮しているのです。
ブレーキだった海馬がすり減り、偏桃体が自分で出したストレスをストレスとして感じてしまう制御不能状態が「デスサイクル」として構築されてしまうと危険です。

しかし、デスサイクルを抜ける方法として、長時間または高強度の有酸素運動を行った場合に発生するコルチゾールを利用することができます。
心拍数があがる高強度の運動は、運動をやめた瞬間に心拍数が落ち着くことから、コルチゾールの分泌量を身体がコントロールできています。
定期的な運動によってコントロール可能となったコルチゾールは、運動以外のストレス時に分泌されるコルチゾール量をコントロールすることができ、分泌量が減るのです。
身体を動かすことにより、ストレス反応が引き起こされにくくなり、海馬も損傷しないのです。


また、うつ病ではなくとも、身体を動かすことはヒトとしての能力を高めることができます。
ウォーキングミーティングはスティーブジョブズやザッカーバーグが採用し、クリエイティビティーが60%も上昇することがわかっていますし、ランニングによって脳細胞の増加速度があがります。これはスウェーデンのサールグレンスカ大学病院の研究者が「BrdU」という試験薬を使って細胞を染色したことによって、脳は死の直前まで細胞分裂をするということが発見されたことや、回し車を回したマウスの脳にはたくさんの細胞が生まれていたことからわかります。
また、ブレインストーミング(Brainstorm)とは、会議に参加した人たちが自由な発想で意見を出し合い、新しいアイデアを生み出すための手法ですが、歩きながら能力のテストを受けた被験者の成績は、歩かずに受けた被験者をおおむね60%引き離すという結果もでています。

身体をよく動かせば、筋肉トレーニングで筋肉が鍛えられることと同じように、灰白質と白質の働きが強化され、知能が高くなります。

まとめ

毎日30分ほど心拍数が上がる程度に走ると頭が良くなります。

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