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麦畑の家... / 原風景 その1

今住んでいる所に、家族3人で引越してきたのは、1964年東京オリンピックの前年の春だった。その周りは一面の麦畑と梨畑が広がる田園で、周囲の農家が数軒点在するだけだった。家の東西と南には、黄色く色づいた麦畑が広がり、北側は唯一梨畑だった。南方向には、民家は遠くに2,3軒見えたが遥か彼方のように思えた。夜は静かで、時々鉄道を走る機関車の汽笛が聞こえた。
新築の家はまだ完成していなく、電気も水道も無く、電気は一番近いと言っても、100m程離れた農家から仮設で引いてきたし、水は井戸を掘り、手押しポンプで汲み上げた。
職人さん達がまだ忙しく働いていいる工事中の現場に唐突に乗り込んできた様だった。和室に畳はなく、壁の左官壁は、塗りたてでまだ水気が多く乾いて無った。
父から「触るんじゃないぞ。」と、きつく言われた。イタズラ好きの私は、常に注意されていた。

だから、その晩は、新築の家には父親だけが寝て、母と私はその農家に泊めてもらった。
そうして、麦畑の中の1軒家で家族3人の生活が始まった。

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