幸せの師匠さまがあなたのそばにもいる
からっからっと
音を立てて
メタセコイアの木の周りを
木枯らしが回っている
寒い
コートの前をギュッと締めて
顔を上げる
はらはらと
粉雪が舞っている
縮こまった肩をぎゅっと伸ばして
校門のほうをみると
きたきたきたきた
今日も幸せの師匠が
ぴょんぴょんと跳ねるように歩いてくる
ほっぺは真っ赤っか
ちょっとかさかさの唇を
今にも歌い出しそうに尖らせる
まだ中学1年生の彼女を
私は密かに「幸せの師匠」と呼んでいる
口ぐせは
「ああ、幸せ」
いつも笑顔でこう呟く
今日の幸せなことは何?
こう訊いてみる
今日はねぇ
給食で大好きなハムカツが出るの
ああ、幸せ💖
別の日は
今日はねぇ
お友達のまきちゃんとお話できた!
私、まきちゃん大好き!!
ああ、幸せ💖
今日はねぇ
国語の授業で
手を挙げられたよ
ああ、幸せ💖
師匠にかかったら
何でも幸せの種なのだ
ある朝
師匠の顔がちょっぴり曇っていた
どうしたの?
飼っていた猫のミィが死んじゃったの
でもね
長い間
家で買ってたの
いっぱい可愛がって
いっぱい一緒に過ごしたの
ミィは幸せだったよね?
そう言うと
師匠の顔は笑顔に戻った
今日も幸せの師匠はやってくる
笑顔でやってくる
口ぐせは
「ああ、幸せ」
今日はねぇ
初めて話した子がいるの
友だちになれそう
ああ、幸せ💖
日常のちょっとした出来事を
すべて
幸せに変える彼女は
やっぱり
私の幸せの師匠さま
幸せは何処にもないし
何処にもある
幸せは誰にでもすぐそばにある
気づくか
気づくか気づかないかは
その人次第
あなたのそばにも幸せの師匠は
きっといる
いえ
あなたも幸せの師匠にもなれる
日常に幸せの種は溢れている
ああ、幸せ💖
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?