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脱サラオジサン、ワインエキスパートへ~資格取得までの道のり~17

第16回講義:アルゼンチン、チリ、ウルグアイ

全20回の講義も8割が終了。国別シリーズも、残すところあと数か国。今回は、多少馴染みのあるアルゼンチン&チリワインと全く知らないウルグアイワインがセットです。試験的にはウルグアイは1点あるかないか、なのでアルゼンチンとチリが重要。

1.アルゼンチンワイン
アルゼンチンのポイントは3つの地方とその中の州を覚えるところから。
◆歴史と人
●もともとアメリカ大陸には、Vitis Vinifera種(ワイン用ブドウ)は自生しておらず、スペイン人がキリスト教の布教とセットで16世紀に持ち込んだらしい。この時のブドウ品種が、リスタン・プリエト。のちに、アルゼンチンでは「Criolla Grande(クリオジャ)」、チリでは「パイス」、北米では「ミッション」と呼ぶように。
●アルゼンチン政府が仏から招聘したMichel Aime Pouget(植物学者)が、マルベック、CS、Merlot、SBなどを初めて植えた。マルベックは、のちに「La Franceca」と呼ばれるほどポピュラーな品種に。
Nicolas Catenaー伊・マルケからの移民。1ロバート・モンダヴィで学び、1982年メンドーサに帰国、CSとChardonnayを植える。1990年CSのヴァラエタルワインをリリース。
Laura CatenaーNicolasの息子。メンドーサ・マルベックを世界に広める。
Humberto Canaleー1913年、パタゴニアに初めてブドウ樹を植えた。
●シャンパーニュのシャンドン社は、1959年からスパークリングワインを造り始め、1999年に「テラサス」の名でスティルワインも。
◆気候風土
国土の西側に南北にのびるアンデス山脈にそって南北2500㎞のブドウ畑が。
最北:ノルテ地方・フフイ州→最南:パタゴニア地方・チュブ州
南緯23度から43度。海抜は450mから3329mに分布する。
大陸性気候。乾燥した温暖な気候。
ブドウ生育期間の昼夜の温度差が大きい。湿気が極端に少なくカビ除けの薬剤散布が不要でナチュラル。ただし、毎年の雹害が甚大。対策としてAnti-granizo(防雹ネット)を敷設。また、Zondaというアンデス山脈からの強風も被害が大きい。
年間降水量が150~400㎜と極端に少ない(通常は1,000から1500㎜必要と)→灌漑が欠かせない。伝統的なフラッド灌漑→新しいドリップ灌漑。
従来はパラール(棚仕立て)→コルドン(VSP:Vertiacl Shoot Position)に
◆主なブドウ品種
栽培面積減少傾向。マルベックだけが増加。①マルベック②セレサ(グリ系)③ボナルダ(黒)。
●Malbec:起源は南西フランスで、カオールのCotと同一。マドレーヌ・ノワール・デ・シャラント×プリュラヌールの交配。毎年4月17日はマルベックデー。アロマが豊で、まろやかな重合体タンニン。アルコール分は中庸で、酸のレベルが高く味わいが凝縮。
●Bonarda:仏サヴォワ原産のドゥース・ノワール
●Pedro Gimenez:白ブドウ栽培面積1位
●Torrontes:Riojano、Sanjanino、Mendocinoの3亜種。RとSは、マスカット×クリオジャの自然交配種。
カファジャテのTorrontesは最高品質。
◆ワイン法
1999年に、I.P.ワイン(ヴィノ・デ・メサ=コモンワイン+フィノ=ファインワイン)、I.G.ワイン(地理的表示ワイン)、D.O.C.ワイン(原産地呼称+醸造法規定)の3つに。D.O.C.はルハン・デ・クージョとサン・ラファエル、どちらもメンドーサ州。
Reserva:最低1年オーク樽熟成した赤ワイン(白は6か月)
Gran Reserva:最低2年オーク樽熟成した赤ワイン(白は1年)
輸出向けワインは、85%以上で品種名、生産年表示可能。
(1)ノルテ(北部)地方
フフイ、サルタ、トゥクマン、カタマルカの4州。標高750~2980m。
I.G.ゲブラダ・デ・ウマワカは世界で最も高地にあるブドウ畑。
中心は、カルチャギヴァレーのカファジャテ。カファジャテのTorrontesは最高品質で、柑橘系のアロマとバラの香りが特徴。
(2)クージョ(中央部)地方
ラ・リオハ、サン・ファン、メンドーサの3州。南アの産地で生産量最大。
+メンドーサ州:栽培面積はアルゼンチンの70%。世界で最も優れたマルベック。TorrontesがChardonnayについで栽培。5つのサブリージョン。
中でも、標高の高いトゥンカプト、トゥヌジャン、サン・カルロスを総称したウコ・ヴァレーが重要。2019年、I.G.パラへ・アルタミラの小規模ワイン生産者PiPAという生産者団体を設立。同年、I.G.サン・パブロが認証。ウコ・ヴァレーで最も標高の高い畑。
+サン・ファン州:メンドーサに次ぐ2番目の栽培面積。トゥルム・ヴァレーとソンダ・ヴァレーに加え、ペデルナル・ヴァレー(州内で最も涼しい&新しい)も。
(3)パタゴニア(南部)地方
ラ・パンパ、ネウケン、リオ・ネグロ、チュブの4州。
標高は4~670m(南部のため涼しいので標高が低い)。ネグロ川とコロラド川流域に。遅霜リスクが少なく、白品種、Pinot Noirなどの早生品種に向く。リオ・ネグロは大陸性気候で、SB、Pinot Noirに適す。チュブは、最南端で、2019年トレベリンがI.G.認定。

2.チリワイン
2021年の日本のチリワインの輸入量はフランスに次ぐ2位。2007年のEPAに基づく関税逓減で数量が増加、コロナ禍までは1位。
ブドウ栽培は国土の中間部分(南緯27度から40度)のおよそ1400㎞。アンデス山脈とフンボルト海流の影響を受ける。
◆歴史
16世紀半ば、カトリック伝道者がパイス(リスタン・プリエト)を植えたことに始まる。1818年の独立後は、鉱山富豪がワイン産業のスポンサーに。
チリ政府は、Claude Gay(仏)を招聘。彼が1830年に、CS、SB、セミヨン、Rieslingなどの苗木を輸入、植えた。
20世紀、イタリアから大量栽培に適した棚栽培(Parron)が導入され、灌漑設備(フラッド灌漑)も整い、増産体制へ。
1979年にスペインのミゲル・トーレスが新しい醸造機器の設置とともに、フレッシュ&フルーティなワインを醸造。
1980年から90年代にかけては世界的にCS、Chardonnayのブームが。しかし、チリにはChardonnayが無かった。←Claud Gayの影響。
1990年代に開拓ラッシュになり、海岸近くのCasablanca Valleyは、不足していたChardonnayの生産適地を冷涼地に求めた。
◆気候風土
東側にアンデス山脈、太平洋側に海岸産地が走り、この間に平地であるセントラル・ヴァレーが。典型的な地中海性気候。雨は冬にしか降らないため、灌漑が欠かせない。伝統的には、ナチュラル・イリゲーション。ドリップ・イリゲーション(点滴灌漑)も。最近は、自然のままに任せて灌漑しない、ドライ・ファーミングも増えてきた。一般に、収穫の1か月前には潅水を中止する。←ブドウ顆粒の水膨れを避ける
緯度が低い(赤道に近い)と日射角が鋭くなり日射量が多くなる→紫外線も強い→紫外線に対抗して、ブドウの果皮が厚くなる。
涼しさは、①アンデス山脈から風が吹き下ろす山麓・斜面②フンボルト海流で冷やされた海風が吹き付ける太平洋岸。
チリにはフィロキセラ被害がない。これまで、ブドウ樹はProvinage(チリではMuguronと呼ぶ)で世代交代。しかし、ドリップ・イリゲーションに切り替えると、フィロキセラの発生リスクが高まる。→台木に接木をして新植する畑が増加。Nematodaという害虫対策の意味も。
◆主なブドウ品種:①CS②SB
●CS:全体の30%。Maipo Valleyが主産地。
●Sauvignon:Blancではなく、Sauvignonasse=Sauvignon Vertが多かった。
●Carmenere:19世紀半ばにボルドーから。チリでは長らく、Merlotだと思われていた。シノニム「Grande Vidure」。Caremineは「深紅色の」意味。香りの成分が熟すまでに時間を要し、早いうちに摘むとメトキシピラジンの香りが残る。
●Syrah:チリの新品種の中ではChardonnayに次ぐ栽培面積。rotundoneを含有量が多く、引き締まった味わい。
●Pinot Noir:味わいは軽快でも色は濃く、アロマの強さが特徴。
●Pais:20世紀半ばから栽培面積減少。マウレ、イタタ、ビオビオなどの南部の零細栽培農家多い。現在は大手が協力して、素晴らしいスパークリングや軽快な赤ワインも。長らく放置されてきた非灌漑地のPaisは樹齢が古くなり、収量が落ちて品質が向上。マウレの海岸産地の放置されていたPaisga野生化し、水場近くの灌木に寄生して実をつけることも。
●Carignan:2009年にMaule Valleyの12ワイナリーが「VIGNO]という生産者団体を。VIGNOの製造基準は①Maule ValleyのCarignan85%以上使用②樹齢30年以上の樹③灌漑をしていない④24か月以上熟成
◆ワイン法
●ワインの原産地呼称D.O.:75%以上。
品質表示①Superior=香味に独自性②Reserva=アルコール度数が法定最低+0.5%③Reserva Especial=アルコール度数が法定最低+0.5%&樽熟成④Reserva Privada=アルコール度数が法定最低+1.0%⑤Gran Reserva=アルコール度数が法定最低+1.0%&樽熟成
●ブドウ品種名:75%以上
●ワインの収穫年:75%以上
●輸出用ワインは、すべて85%以上。
(1)D.O.Atacama
サブリージョンにD.O.Copiapo ValleyとD.O.Huasco Valleyが。Psico(ワインを蒸留)を作るためのモスカテル種を栽培。
(2)D.O.Coquimbo
サブリージョンには、D.O.Elqui Valley、D.O.Limari Valley、D.O.Choapa Valley
(3)D.O.Aconcagua
サブリージョンには、D.O.Aconcagua Valley、D.O.Casablanca Valley、D.O. San Antonio Valleyが。
+D.O.Casablanca Valley:標高400mの丘陵に囲まれた傾斜地。朝霧が立ち込め、午後には冷涼な海風で気温が下がる。1990年代に初めて開拓された冷涼な畑。
+D.O. San Antonio Valley:サブゾーンD.O.Leyda Valley。冷たい海風が直接吹き付け、白ワインやPinot Noir。
(4)D.O.Central Valley
チリのブドウ栽培発祥の地。広大なブドウ畑。D.O.Maule Valleyの生産者たちと海外からの移住生産者がMOVIを組織。
+D.O.Maipo Valley:首都州。地中海性気候。CSが栽培面積の50%以上。サンチアゴのマクール、プエンテ・アルト、ピルケなど有名な畑が多い。
+D.O.Rapel Valley
+D.O.Cachapoal Valley
+D.O.Colchagua Valley:伝統的にCS、Merlotが栽培。近年はSyrah、Carmenereも。
+D.O.Curico Valley
+D.O.Maule Valley:チリ最大のブドウ畑。カウケネスのCarignanや、ロンコミジャのPaisが注目。
(5)D.O.South
D.O.Itata Valley、D.O.Bio Bio Valley、D.O.Malleco Valleyの3つのサブリージョン。降水量が多いので灌漑不要。Paisの栽培が多く、国内消費用ワインがほとんど。
(6)D.O.Secano Interior
Crurico、Maule、Itata、Bio Bioの非灌漑地で栽培したPaisとサンソーに適用される呼称。
(7)D.O.Austral
2011年に南極と名付けられ認定。D.O.Osorno ValleyとD.O.Cautin Valley。
◆新しい原産地呼称表示
2011年に従来の表示に加えて、二次的表示が可能に。
(1)Costa
冷たい海から内陸へ吹く海風がブドウ畑に極めて大きな影響を及ぼす。SB、Chardonnay、Pinot Noirといった冷涼地に適した品種。
(2)Entre Cordilleras
Cordillera=山。2つの山脈の間。平坦で肥沃な土地。チリ農業のスタート。チリを代表する赤ワインを産出。Entreのブドウはチリワイン生産の60%。
CS、Syrah、Merlot、Petit Verdoなどが栽培。
(3)Andes
早朝にアンデス山中で形成された冷気の塊が、朝日とともに山間から麓に吹き下ろす。→El Laco
赤、白、スパークリングが生産。土壌は崩積土、火山性土壌。

3.ウルグアイワイン
国土の西側は、ラ・プラタ川を挟んでアルゼンチンと接する。首都モンテデビオは、ラ・プラタ川の左岸に。ワインの生産においては、南米4位。57%が赤ワイン。
◆歴史
7世紀末からワイン造りが。1873年、Farncisco Vidiellaが渡欧し、CS、Merlot、Garnacheなどのブドウの苗木を持ち帰る。その中で、Folle Noireの栽培が成功。→Folle Noireは「Vidiella」のシノニムが。
1874年、Pascual HarriagueがTannatを初めて持ち込み植えた。→Tannatは「Harriague」のシノニムが。
※人名がシノニムに
◆気候風土
温暖湿潤気候。ブドウ樹は垣根仕立てが多いが、伝統的なLIRA仕立て(25%)も見られる。
◆主なブドウ品種
80%が黒ブドウ。栽培面積1位は、Tannat=Harriague。白の1位はUgni Blanc
そのほか、Marselan=CS×Grenache NoireやAriarnoa=Tannat×CSも。
◆ワイン法
V.C.P.=有料品質ワイン
◆食文化
牛肉消費量が非常に多い。→赤ワイン需要に。
Asado:牛肉のグリル、Chivito:サンドイッチ=国民食
(1)Canelones:栽培面積1位(66%)
ウルグアイ最大のワイン産地
(2)Montevideo:栽培面積第2位
首都Montevideoを擁する。ラ・プラタ川河口に。
(3)Maldonado:栽培面積3位
ウルグアイ全体のブドウ栽培は減少傾向だが、ここだけは増加。

実践テスト


今回は、アメリカとカナダ。試験的に重要なのは圧倒的にアメリカ。入念に宿題問題を繰り返し解き、29/30点。1問、勘違い。後で冷静にみたら解けただけにもったいない。。。昔から、試験本番でのウッカリミスが多く、これは何歳になっても、治らない、、、。トホホ。

テイスティング


今回も白×3,赤×3,その他×2。
①Aconcagua Sauvignon Blanc"Max Reserva" チリ2021年 13.5%
②Salta Torrontes "Alamos" アルゼンチン2021年 13.5%
③Alsace Geburztarminer ”Terres Epicees” 仏2020年 14.0%
④Mendoza Malbec"Alamos" アルゼンチン2021年 13.0%
⑤Bordeaux Cabernet Sauvignon 仏2018年 13.5%
⑥Colchagua Valley Cabernet Sauvignon チリ2020年 CS85%主体 14.0%
⑦ブランデー:Massenez Eau de Vie Kirche 仏・サクランボ原料 40.0%
⑧ブランデー:Capel Moai Pisco Reservado チリ モスカテル 40.0%
まずは、②と③の違いを知ることがテーマ。実はよく似たこの2つ。香りは似た印象。甘い感じのマスカット&香辛料系はコリアンダー。ただし、味わいは③のほうが圧倒的に甘味を感じる。甘味が強いほうがGTだと。比較すると違いはわかるが、本番で出されてどっち?になりそうな予感も。。不安。
 ①は、SBなんですが、やはりNew WorldのSB。とにかく、仏のSBじゃないとわかるようになることが重要だと。
④は甘い感じの樽のニュアンス→アメリカンオーク樽。だと、仏は絶対に使用しないので違う。縁がピンクだが、濃淡は濃い→若々しいが、ブドウは熟れている。カシスからブラックベリーの香り。ってことで、アルゼンチン・マルベック。
⑤は焼いた木の香り。これがクラシックなボルドーの樽の香り。これを感じたらボルドーを疑え。吐いた後に渋い→CS。ちなみに、新樽の板を入れるだけで樽香がつくらしい→お安く樽香をつける方法。消費者には嬉しい。。。
⑥樽香がボルドーと違う。吐いた後は渋い→CS。
もう一つのテーマが、この⑤と⑥の違いを知ること。ムズイ。。。
⑦全くの初体験。見当つかず。先生曰く、芋焼酎+青のりの香り。
透明でアルコールは高い→蒸留酒。で??。この仲間には、ほかにフランボアーズとポアールウィリアムスが。芋焼酎+青のり??
⑧マスカット香。色は少し琥珀系。こちらも、全く知らないPiscotって、さっき教本に出てきたけど。。。知らんよ。。。
飲酒歴30年以上を誇るオジサンでも、⑦⑧は未経験。こんなの試験で出たらお手上げだ。一体、どこまで奥深いんだ??

まとめ


本日の南米系が終わり、国別で残ったのは、オーストラリア&ニュージーランド、そして南アフリカだけ。いよいよ大詰めです。試験の配点的に絶対に外せないのがオーストラリア。
先日、恐る恐るフランスを復習してみたら、75%から80%程度に記憶が蒸発しておりまして、やっぱりな、です。GW明けの中間試験前から1か月以上経過しているので、当然の結果か。。。ワインも樽育成の間に蒸発した分をウィヤージュ(補酒)するっていう作業がありますが、知識も一緒です。目減りした分を補うしかありません。。。次週につづく。




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