第六話 とあるランプへの戦い

翌日、店主より返答があった。

「入札されてなければ直接販売もできたのですが、既に入札されはじめているので、、」

それはそうだ。もちろん理解した。
同時に、誰かに先に買われる心配はないのだと安心した。

同じ土俵で競売での勝負。
3日後、その時まで静かに待つことにした。

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終了2日前の夕方時点、ウォッチリスト数は22人で8250円。
競合がなかなかいるようで若干気持ちが焦る。
オークションに張り付くなんて10年ぶりレベルだった。

しかし、こんな時こそ油断せず、いつものようにネットを駆使して漁りを続ける。
今回のように今この瞬間、別のどこかであのランプが売りに出されるかもしれないからだ。

これには、もしかすると今回のオークションで手に入れることが出来ないかもしれないという不安があった。

アンティーク界隈の相場観は高額になることもありえる。
そうすると彼には太刀打ちできない可能性があるからだ。

ウォッチリストに登録している人たちがこのランプにどれ程の価値を見出してるか、それはわからなかった。

だからこそ検索という半ルーティンワークによる安心で、心を落ち着かせようとしていた。

しかし、彼は負けるつもりはなかった。必ず勝つつもりでその時を待っていた。

そして運命の日の夕刻。オークション終了まであと5時間前を切っていた。

ウォッチリストは24人
価格は8500円
前日は25人いたので、誰かが早期脱退したのか。

一旦は皆が見の状態
嵐の前の静けさであろう。

果たして金額はいくらまで上がるのか
個人的に理想は2万円位内
できれば3万円位内でおさまって欲しいが、もしそれを超えるようであれば覚悟がいる。
しかしこの機会、二度と訪れないかもしれないという思い、戦う覚悟はできている。いざ。

残り30分を切った。

履歴を見ると実際に入札しているのは4人だけ。その中で2人がこれまで競ってきていることがわかった。
とりあえず直前すぎるのも失礼なので一旦入札してみることにする。
現状8500円なので10100円入札。これで参加表明だ。

現在の最高入札者がそれ以上入れていればさらに追加する必要がある。

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無事に8750円で最高入札を得る。

「あなたが現在の最高額入札者です」

この文字がずっと表示されることを願うばかりだ。

残り5分


現時点で自分の8750円が最高だ。
このまま終わることができるのだろうか。

ー第六話 完ー


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