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句集の楽しみ方。『かちょふげ』の場合

初めて句集制作に参加した。
名を『かちょふげ』と言う。
俳句ポスト並盛連盟(以下、俳並連)の二周年記念句集だ。

句集ができてわかったが、句集は多分、作者側の方が楽しく読める。

去年まだ俳並連に入ってなかった頃に、一周年記念句集『ふんわり』を読んだが、その時より今回の『かちょふげ』の方が断然楽しい。

なぜか。

背景の情報が豊富だからだ。俳句を読むのに鑑賞力や知識が要求されるように、句集を読むときにも、関連情報があると楽しみやすい。

もちろん句集である以上、純粋に俳句が連なった文芸作品として楽しめるようになっている。なってはいるが、同じ時間や空間を共有した者同士だからこそわかることも、どうしても含まれてしまう。

例えば仲間同士では、「⚪︎⚪︎さんの句、〜の時のアレだ!」とか、「⚪︎⚪︎さん、いつも〜って言ってるけど、この句のことか!」みたいな、そういう楽しみ方をプラスできてしまうのである。

特に『かちょふげ』のような、大人数のチームでつくる句集の場合に、その傾向は強まる。

だから今回、『かちょふげ』を手に取ってくださる人のために、更に楽しむためのポイントを五点まとめてみる。そうしてまとめることが、今後他の句集や結社誌を読む時に、背景を想像する上で役立つんじゃないかと、ちょっぴり期待している。

それでは参ります!

1. 俳並連には鳥支部がある

巻末の「俳人一覧」を見るとわかるが、俳並連には鳥支部なるものが存在している。この方々は、バードハイカーを名乗り、隙あらば鳥を観察し、鳥の俳句を詠む。

しかも鳥支部に加入するためには、試験もある。なんと本格的。

あと俳並連内のちょっとした句会でも大体、鳥を句材にしてくる。そして選評も「これは支部長ですね」など、バードハイカー同士、鳥軸で独自の鑑賞を展開しあっていて、素人にはさっぱりだ!

そんな鳥支部員たちは花鳥風月のテーマ詠で、鳥チームにいます。恵友さん、鈴白菜実さん、大山なごみさん、の3名のバードハイカーの句は、そういう鳥愛のもとに生まれていることを押さえて読むと、より楽しめるでしょう。

ちなみに風早杏さんも鳥支部ですが、俳並連加入が最近だったため、今回は花チームです。

2. 会心の一撃句は俳並連内で祝われている

俳並連は、XのDMグループで日々やり取りをしている。その名も「わくわく広場」。全員が好き勝手喋るので、1日放っておくと、結構な量のメッセージが貯まる。もはやこのグループでは「全然追えてませんが〜」が枕詞になっている。

そんな「わくわく広場」で、最も多いやりとりは「おめでとうメッセージ」だ。

投句先で入選するたびに、本人が気づくまでは無記名で祝い、本人が気づいたら、名前入りで「おめでとうございます!」と言う。別に強制じゃないし、毎回全員に対してやるのは不可能なので、まあ気づいた時に言う感じだ。

で、ここで盛大にお祝いすべきことがあった時に、全員が100%混じり気のない気持ちで祝っているかというと、そんなことはない。大体のメンバーは多かれ少なかれ「自分ではなかったか!」という一抹の悔しさと共に祝っている。はずだ。

例えば、俳並連代表のヒマラヤで平謝りさんが、俳句ポスト365にて

積込みを終えて花冷だったのか

で特選となった時の祝辞にも

「よかった!くやしいけど!」

という言葉があった。そう、チームにおいて「自分こそが成し遂げてやる」と燃えていたものを先に越されるのは、やはり悔しいものである。純粋に祝う気持ちはあれど、それとは別に、忸怩たる思いもあるのだ。悔しさは別腹だ。

その思いは、切磋琢磨の源泉となるから、チームとして適量あるのはきっといいことだと思う。そうして楽しく刺激しあって、お互いを高めあえばこそ、お祝いしあうよろこびも大きくなるだろう。

「会心の一撃句」に掲載されている句のほとんどは、俳並連内で祝われた句である。祝われると同時に、メンバーに刺激を与えた句でもある。特に、自分が勝負をかけた一句において、身近なチームメイトが栄光を勝ち取ったときほど、その刺激は大きい。

だから皆さんが、「会心の一撃句」を読むときは、出典もぜひ見てほしい。その中に、結構な熱量で投句したものがあったならば、ちょっぴり悔しくなるかもしれない。そうなったら成功、俳並連の中でのお祝い気分を味わえます!

3. 連句は2ヶ月かかっている

連句の終わりの首尾の日付を見てみると、ほぼ2ヶ月かかっていることがわかる。ざっくり、3日に1句ずつ決まっていったペースだ。

この連句はXのDMグループで、しかも「連句が初めて」というメンバーがほとんどの中で巻かれたものである。調べてもらったらわかるが、連句のルールは複雑で、初見でノーミス投句を続けるのは、ほぼ不可能だ。

対面でやるならともかく、テキストだけのやり取りで、初体験メンバーと連句を巻き切った捌きの2人、髙田祥聖さんと濃厚エッグタルトさんには尊敬しかない。

できあがった作品をみると、あっさりできているように見えるかもしれないが、そんなことはない。1句1句の裏側にたくさんの投句があり、捌きがそれぞれに、ルール逸脱や表現の方向性へのフィードバックを行った。

おそらくだが、発句以降の17句を巻くのに、200句以上が投句され、捌きからのフィードバックを受けている。

繰り返しになるが、それをテキストだけでやるというのは、難易度が高い。みんながそこにいるなら「はい、こうだから、こうしていこう!」と周知しやすいが、誰がいつ見てくれるかわからないDMグループで認識を合わせるのは、人数が増えるほど難しくなる。

そして長丁場の試行錯誤を続けられるように、みんながメンタルをコントロールする必要もあった。中には途中で1回諦めて離脱したメンバーもいた(最終的に戻ってきた)。自分が最後まで残り続けるプレッシャーにさらされたメンバーもいた。それでも、代表へのお祝いと感謝を表したくて最後まで巻ききったのが、この半歌仙である。

もちろん作品の鑑賞にあたって、作者側の労を考える必要など1ミリもない。そんなのは野暮でしかない。

だが、どういう制約のもとでこの連句が生まれたのかを知っておくと、皆さんが連句に取り組むときに参考にしたり、比較しやすかったりすると思うので、お伝えさせて頂きます。

あと、僕が参加した方を捌いてくれた髙田祥聖さんは、かなりリズム(口誦性)を重んじていました。声に出して読んで頂くと「髙田祥聖さんが気持ちよく感じるリズム」を追体験できる可能性がありますので、ぜひお試しください。

4. スペース「FM81.73かちょふげラヂヲ」は、リスナー参加型

お聞きになった方はわかるだろうが、 #かちょふげに物申す でポストすると、ヒマラヤで平謝りさんが、スペースの中で読み上げてくれる。

ラヂヲは句の鑑賞をメインに進行する。平良嘉列乙さんが、王道パーソナリティーボイスで番組を回しながら、俳並連のゲストと鑑賞していく。

そして一句ごとの合間に、ヒマラヤで平謝りさんが、ハッシュタグツイートを紹介する(余談だが僕は、ヒマさんの声を聞くと大山のぶ代の頃のドラえもんを思い出す。割り込んでくるヒマさんと、秘密道具を出すドラえもんがダブる)。

これは、どういうことか?
そう、リアルタイムの『一句一遊』だ!
組長と正人さんじゃなくて申し訳ないが、リスナーのお便りで番組の楽しさが増していく仕掛けはまさにラヂヲである。

今のところいかちゃん(冴え渡る鑑賞さすがです)と、梵庸子さん(庸子さんからは別途俳並連メンバー全員の句に感想を頂きました。神か!)の、登場が多いです。

ですが、俳句の鑑賞ポストじゃなくても、まったく問題ありません。作者についてでも、俳並連についてでも、皆さんが、とっつきやすいことなんでも大丈夫です。

句集の鑑賞という形を借りながら、全国の句友とラジヲで繋がるような楽しさを味わえるのが「かちょふげラヂヲ」です。10月23日現在、あと2回

・第三夜 10/27(金) 「会心の一撃句前半」 
・第四夜 11/04(土) 「会心の一撃句後半」 
※22時頃〜24時頃までの予定

にて開催予定ですので、よろしくお願いします。

5. メンバーカラーは、代表の采配

皆さん、おまけの「俳並パレット」はご覧になっただろうか。あれは、僭越ながら、自分が編集・デザインしたものなので、よかったら見てほしい。

なんてことはさておき。

ここで重要なのは、各俳人のメンバーカラーがどう選ばれたかである。メンバーカラーは、代表のヒマラヤで平謝りさんが決めたものである。

そして、その色にはちゃんと背景があって、例えば僕は「空色」だが、

やっふーの色を考えたとき、どこかでもいいましたが、やっふーの句のいくつかは、なぜだか空気を感じさせるという貴重な俳人だとボクは思っていて、空の色だなと早目に決めていました。

冷たいけど果てしなく高い青い空。やっふーの句のイメージに近い。
あと夫婦のカラーは対になっていたほうがいいかなと思っていました。
夫婦だからお揃いの同系統の色というのはボクの中ではなしでした。

である。泣かせますなあ。

皆さんも知り合いが俳並連メンバーにいるかもしれないが、知り合いのメンバーカラーが、自分のイメージに近いかを確かてみると面白いと思う。その人の新しい一面を考えるきっかけになるかもしれない。

それから、「俳人一覧」は俳並連の加入順に並んでいるが、その順にカラーを見ていると、中盤以降から、パキッとした色が増えていると思う。

外から見ていると「俳並連」という組織は、同じひとつの組織のように見えているだろうけれど、一年前から多分結構変わった。

もちろん、核となる大事な部分は変わらずにあると思うが、メンバーも去年の1.5倍くらいに増えて、やり取りされる言葉というのは、それなりに変質したはずだ。そうして文字通り色々な人が集まって、こうやって句集を作れたのは思い出深いことだ。

メンバーカラーの色味の多さから、多様な俳人が集まる俳並連という組織の器、あるいは代表の器に、思いを馳せてもらえたら幸甚です。


以上、『かちょふげ』が楽しくなる五点でした。
長文恐縮ですが、お読み頂きありがとうございました!

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