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【詩】 Bluesが鳴る

スピーカーから聞こえる不思議な音

不純物に満ちた
混じりけのない音

やたらと心がざわつく音

音と自分の間を取り持つ空間は

僅かに揺れ動くかのように

黙っていた

吹きかけた吐息が
ガラスを曇らせる

呼吸をするその一息が
ブルース・マンの神話と共鳴する

「やぁ、お前さん何を聴いてんだい?」

愛を語っているようで
愛を求めていない

自らの正体を打ち明けるが
白昼堂々と寝返りを打つ

傲岸不遜でいるが
唯我独尊とは対極的にして
釈迦の説法の如く鳴り響く
ギターの深謀遠慮深さ

「お若いの、何か勘違いしてないかね?」

真実の鏡は歌うことにある

価値を持ち込み逃げるようにして貫くと、
愛に生きる術が退化していく。

命を美しいものだと肯定し、
その実血液の中の酸素に目を背け続ける。

怒りと表現すれば納得をしつつも、
不安定な感情は愛の中では純度の高いものとなる。

永遠に鳴り響き続ける居留守の宝石

ブルー・ノート…

その心は未熟なまでに燃え続ける

朝には朝のBluesを

昼には昼のBluesを

夜には夜のBluesを

誰もいない気がする
その場所で
優しさも冷たさも
一際異彩を放っていた

スピーカーの音がひとしきり鳴り響いたあと

外の気配は静かに感じた

どうやら人間は生まれながらにして孤独だったんだ

美しく
気高く
泳ぐように
ぽつねんと
存在する

生々しい価値観

退屈ではない…



もう一度聴き直そうか

今度はヘッドホン越しに
ブルース・マンと会話しよう

「外は雨なのかい?」

ガラスは曇ったままだが
世界は開けたように鼓動を打っていた









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