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【患者のための漢方薬入門①】薬膳漢方マイスターが教える「漢方ってどんな薬?」

突然ですが、皆さんは漢方薬を飲んだことありますか?漢方薬は最近ではCMでも目にすることも増え、ドラッグストアにもズラーッと漢方薬並ぶコーナーがありますよね。

皆さんは、漢方に対してどんなイメージを持っているのでしょう?「なんとなく怪しい?」「西洋薬より効き目が悪そう」「自然由来の原料を使っているから身体に悪くなさそう」などなど。

少なくともこの記事を読んでいる方は、少なからず漢方薬に興味を持っているのではないでしょうか?

患者の立場として漢方薬に興味が湧く場合、次のようなパターンが考えられます。

  1. 漢方薬のほうが身体に優しそうだから、西洋薬の代わりに漢方を使ってみたいと思っている。

  2. 今現在何らかの疾患の治療をしているが、西洋医学ではなかなか良くならない(もしくは、西洋医学での治療に満足していない)ので、漢方治療に解決を見出してみたい。

  3. 知人や友人に「漢方って意外と効くよ」と言われて気になっている。

少しでも漢方に関心を持っている方のために、「患者の立場として」私の経験からお役に立てる情報をお伝えしたいと思います。


漢方を使ってきた「患者」としてのキャリアは20余年

私は、【薬膳漢方マイスター】という資格を持っていますが、正直この資格は「薬膳や漢方について普通の方よりは詳しいよ」という程度の資格です。医師や薬剤師のように薬を処方したり、販売したりする側の専門家ではありません。

私の場合、患者としての漢方薬との付き合いが、もはや20年を越えています。患者としては、かなりのベテランではないでしょうか?

そもそも20年以上前は、今ほど漢方が広く利用されてはいませんでした。実際、医師に漢方を処方してもらおうと思っても、近くに漢方を使う病院はほとんどありませんでした。街の隅っこには、いわゆる怪しい感じの漢方薬局が有りましたが、敷居が高くて入れず。私は、そんな時代から少しずつ漢方薬を知り、その素晴らしさにはまっていったのです。

また、私の場合リサーチャーという職業についていたこともあり、漢方を利用するということについて、一般の患者さんよりは、遥かにしつこくリサーチを行ってきました。

私は20代の頃、漢方薬に出会ったことで、劇的な体調の改善を体験しました。その結果、漢方薬の持つ魅力にどんどん引き込まれていきました。

そして、実際に漢方を処方する病院、薬局などをいくつも利用してきました。大阪、東京でその数は計20箇所を越えています。風邪や胃腸炎などだけでなく、子宮内膜症、卵巣嚢腫、頚椎症神経根症、子どものアレルギーなど、患者の立場で色々な疾患に漢方を利用してきました。

そして、患者として漢方薬の恩恵に預かると同時に、「自分はどんな薬を飲んでいるのだろう」という単純な好奇心が湧き、「漢方薬」について独学で勉強をするようになりました。そして、知識を整理するため、【薬膳漢方マイスター】という資格を取ったのです。

そもそも漢方薬は何でできているの?

ここで漢方を説明しようと思うと、それこそ長い時間がかかります。もちろん私もそのすべてを知り尽くしているわけではありません。

とはいえ口に入れる薬ですから、患者の立場として知っておきたいのは、まずは「中身は何でできているのか?」ということではないでしょうか。

漢方薬の材料は植物(葉や茎、根っこ、木の皮など)、動物(鹿の角やタツノオトシゴなど)、石膏などの鉱物、牡蠣の殻など。どれも自然界に存在するものではありますが、ふだんは口にしないようなものも含め多岐にわたります。

「ふだんは口にしないようなもの」と書いたのには、理由があります。

「漢方は自然のものだから安全」という声をよく耳にするのですが、実はそうでもありません。実際、「鹿の角」や「石膏」などは普通口にすることはありませんよね?

漢方薬はあくまで薬なので、身体への良い作用だけでなく、いわゆる副作用もあります。漢方薬はサプリや食品とは違い、れっきとした「薬」だということを最初に確認しておきたいと思います。

漢方薬の原料一つ一つは「生薬」と呼ばれ、大抵は単品で利用することはなく、いくつかの生薬を組み合わせた形で利用します。例えば「葛根湯」などは葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)などが一定の割合で入っています。

  • 自然界に存在する様々な材料でできている(ふだんは口にしないものも含めて)

  • 複数の材料をさまざまな割合で配合してある薬

患者さんの立場としては、最低これくらいは知っておきたいところです。

さらに漢方薬について詳しく知りたい方は以下のページを参考に。

漢方薬はどこで手に入る?

漢方薬は「薬」ですから、いわゆる西洋薬と基本的には扱いが同じです。薬を手に入れる方法としては西洋薬と同じで以下の二通りがあります。

1.病院で処方してもらう

2.薬局やドラッグストアで購入する

西洋薬もそうですが、漢方薬にも病院でしかもらえない薬と、薬局やドラッグストアでも買える薬があります。病院で処方される薬は「医療用医薬品」、市販されている薬は「一般医薬品」と分類され、配合成分の量などが異なります(医療用と、一般用と配合成分がほぼ同じものも存在します)。

また、市販されている薬にも、皆さんご存知の通り、「第2類医薬品」「第3類医薬品」といった分類があり、その薬の作用や副作用の違いから、取り扱いの基準が異なります。

漢方薬を入手する方法は、紹介した方法以外でも、ネット通販(販売が認められているもの)などがありますが、はじめて漢方を利用する場合は、できれば病院か薬局で入手することをおすすめします。その理由は、ズバリ漢方薬は「選ぶのが簡単ではないから」です。

漢方薬は、実は選ぶのが難しい

漢方薬を選ぶのが難しいという最大の理由は、漢方における薬の選び方が西洋医学のそれと大きく異なるからです。

例えば西洋医学なら、咳がひどい場合→咳止め、熱が高い場合→解熱剤というように、基本的に症状に対応する薬を処方されることがほとんどです。

一方漢方は、鼻水、鼻詰まりといった症状に対して、症状だけで薬を選ぶという考え方ではありません。漢方は、表面に見えている症状だけでなく、その人の体質や症状の現れ方などを総合的に診断して薬を選びます。

具体的にどうやって選ぶのかと言うと、基本はその人の持って生まれた体質や体の状態を表す「証(比較的体力がある「実証」、反対に体力がない「虚証」、その中間の「中間証」)」や「気・血・水(「気」は身体に宿るエネルギーのようなもの、血は主に血液やその流れ、水は血液以外の体液の巡りなど)」などを見て薬を選んでいきます。

実際の診察では、いくつか問診(「疲れやすい」「汗をかきやすい」など)をしたり、舌の色、お腹の柔らかさ、姿勢、脈などを実際に見たり触れたりして、「証」や「気・血・水」の状態を見極めていきます。

つまり、漢方の場合「鼻水が出ている」という同じ症状でも、診断の結果、身体の「水」の流れが滞っていると診断されれば、「水」の流れを改善する漢方薬が選ばれ、身体が冷えているのが原因と診断されれば、「冷え」を改善する漢方薬が選ばれるといったように、人によって同じ症状でも薬が違ってくるのです。

漢方は、単に症状を抑えるというより、体内で起こっている、さまざまなバランスの乱れなどを正すことで、結果として表面に現れている症状を改善していきます。

このアプローチの仕方が、西洋薬とは大きく異なり、とても興味深いと感じませんか?

こうやって「選び方」を聞くと「なかなか簡単に自分では選べないな」というのがわかると思います。実際、本当に自分に合った薬を選ぶというのは、(語弊を恐れずに言えば)専門家でも難しいのです。

私も、漢方専門医の先生に見てもらっていますが、きちんと診察をした上で、毎回薬が効いているか、効いていないかを先生もチェックしてもらいます。場合によっては、こまめに薬の変更や調整をすることも。そういうデリケートな薬でもあるということを知っておくといいでしょう。

実際に身体を見たり触ったりする診断は、漢方の専門家でないと難しいと言われています。漢方の専門家というと、漢方専門医や国際中医師などになります。

そのため、本当に自分にあった漢方薬が欲しいと思うなら、漢方専門医などに診察を受けられる病院を探す必要があります。

では、次の記事で実際に漢方を入手する先として、病院や薬局・ドラッグストアなどについて、それぞれのメリットやデメリットについて詳しく解説していきます。

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