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何気ない言葉は本心か

最初は違う話から。

映画の映像から出てくる空気感は大好きで、映画の方のストーリーそのものはどうかと思う部分が多い。だけど、映画にも使われていて、読み上げられるセリフとして聴いたとき、ものすごく刺さった詩。

サヨナライツカ

いつも人はさよならを用意して生きなければならない
孤独はもっとも裏切ることのない友人の一人だと思う方がよい

愛に怯える前に傘を買っておく必要がある
どんなに愛されても幸福を信じてはならない
どんなに愛しても決して愛し過ぎてはならない

愛なんて季節のようなもの
ただ巡って人生を彩り 飽きさせないだけのもの
愛なんて口にした瞬間 消えてしまう氷のカケラ

サヨナライツカ

永遠の幸福なんてないように
永遠の不幸もない
人間は死ぬ時
愛されたことを思い出す人と
愛したことを思い出す人に分かれる

私はきっと愛したことを思い出す

辻仁成「サヨナライツカ」

人は生まれてくるときもひとりだし、死ぬときもひとりだ。なので、孤独とはきちんと向き合っておく必要がある。
でもだからといって、孤独に生きるほうがよいとは思っていない。愛せる人がいることは幸せだし、愛してくれる人がいることも幸せだ。それがどんな形でも構わない。そして、わたしは死ぬ時、両方思い出して死にたいと思う。

***

彼というパートナーができてから何度かnoteに書いているが、彼との間にあるものは、恋から愛に変わったと思っている。もちろん、時折「恋」を思い出させてくれる彼の発言もあるが、なんの約束も交わしていないけれど、彼から感じるのも恋ではなく愛だなと思うことが多い。

でも彼からそういったことを言われたことは一度もなく、わたしが五感で感じたものばかりだ。なのですべては推測、憶測でしかない。ただ彼の日常の発言や行動から感じ取れるものを、わたしなりに信じているだけ。

だったのだが。

初めて彼の本心かもしれない言動を聞いた。

ベッドで腕枕をしてもらいながらテレビを見つつぼそぼそとしゃべっていたときだった。ものすごく他愛ない冗談をわたしに対して言ったのだが。
その冗談を言うに至った経緯はセンシティブな内容なので割愛するが、あきらかに彼はわたしのことを「家族」と明確に言った。

今、家族って言ったよね?
ものすごく何気なくわたしに対して「家族」って言ったよね?

瞬時にその冗談に対して反応しながらも、家族と言われたことのほうが衝撃で頭の中が真っ白になっていた。
結局彼はそのあといつものごとく、のび太並の速さで寝落ちていたので、続く会話をすることもなく、わたしは彼に確認することもなく、終了したのだけれど。

わたしたちはお互い結婚したいと思っていない。なので、籍を入れる予定もないし、事実婚にするつもりもないし、彼の立場はいつも「居候」だ。
でも、彼の口から何気なく出てきた「家族」という言葉に、ここでわたしといっしょに暮らしている時間は、彼にとってもそういう安堵を与えているのかもしれない、と感じた。

確約された物理的な事実なんてなくてもいい。彼から感じ取れるものをそのまま信じていて大丈夫だ。

それが、彼の本心だ。

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