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本朝イカニュース


殺し殺され 本朝イカニュース!

時空移動技術を駆使して過去の人々の営みを取材する時空パパラッチ社は今回、古今のイカにまつわるニュースを集めるため、特派員たちを各時代に派遣した。

本部(以下、本)「では現場の五十里《いかり》特派員を呼んでみましょう、五十里さ~ん?」
五十里「はいはーい。わたしは今、明治九年一月一三日の静岡県三保に来ています。今月四日、漁師の少女が海に入ったところ『五六十の烏賊に此娘が吸付れました』そうで、少女がそれらを捕って売ったところ七、八〇銭にもなったということです。『烏賊も小むすめには吸付きたいものと見える』と同県斉藤さんが言っていたそうです」
本「斉藤さんって誰だよ。えーでは次のイカニュース行きましょう、猪飼《いかい》特派員?」

猪飼「はい、こちらは明治一六年二月一日の浅草です。先日袖ケ浦で捕れた巨大イカを浅草奥山で展示していましたが、夜中に狸などに食べられないよう興行主二人が番をしていたところ『俄《にわか》に小屋も毀《こわ》れる程の波の音がして大いかが暴れ出すに驚き目を覚して見ると何の変りも無く』気味が悪くなったというオカルティックな展開があった模様です」
本「不気味すぎる。何か前向きなニュースはないですか、伊香《いか》特派員?」

伊香(以下、伊)「はい、明治一一年五月一五日の東京にいる伊香です。読売新聞投書欄にフグの毒に効くのは『烏賊の墨を呑《のま》せるより外《ほか》に手当のしようは有りませんから』と花川戸(現台東区)のペンネーム『岩床』が書いています」


本「おお、イカ墨が役に立つんですね! いいじゃないですか」
伊「五ヶ月後、それを信じた神保町の魚屋由松がフグを食べすぎて気持ちが悪くなったのを毒にあたったと思いイカ墨を飲んだところ『益々くるしみ出して七転八倒ついに昨日のあさ眼を眠《つぶ》って亡者の仲間入り』となったそうです」
本「花川戸の岩床呼んでこーい!」
伊「明治四四年一一月二日付読売新聞には『烏賊に殺さる』というセンセーショナルな見出しが踊りました」
本「すわ、巻き付かれたか!?」
伊「『晩餐に食って吐瀉の後』とのことで母子ともに当たっちゃったみたいですね」
本「知らんがな……」


井苅「えーこちらは昭和七年の井苅《いかり》です。驚きのニュースが発表されました!『32年型流行の手提げは? 蛇や猿の皮はもう古い パリでトップを切るものは蛸と烏賊!』。『今度は蛸(デヴイル・フイツシユ)と烏賊(カツル・フイツシユ)の皮による品物が出来るとの事ですが、どんな皮が御自分に似合うべきかについて、一九三二年の御婦人には新しい悩みが一つ増加したわけでございます』ということです!」

本「悩むかー! イーカげんにせい!」

2013/8/2 83 original『いか・たこ書籍』寄稿
https://83s.shop/items/52b113e13e7a4a82f2000059


【本日のスコーピオンズ】

23曲目「Sun in My Hand
3rd アルバム『In Trance 〜復讐の蠍団〜』(1975)より。
おっ、ちょっと今までと雰囲気が違いますね。
ヴォーカルをそのままなぞるギターがなかなか新鮮。
間奏も爽やかでいいじゃないですか。
ギターをやってたらコピーしたいフレーズが満載。
しかもギュンギュンしながらまさかのフェードアウト!
アルバムのなかでも上位に入る名曲の気がします。

感想は以上です。

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