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傷口にぬる、塩

ひとすくい傷口にのせ溶ける塩、よかったわたしまだ涙出る

もう何年も前にあいた傷口に塩を塗る行為を続けている。最初は傷口に気づいてすらいなかった私だが、いろいろなものがしみるようになってきてさすがに傷の大きさを知った。

傷は時間で癒されていく。

開いた当時は癒そうと躍起になっていて、怒りや悲しみをすべて塩の結晶にして遠ざけていた。

このごろ私は「傷をいやしたいが無くしたくない」と感じるようになっており、私が選んだ当たり障りのない塩を塗り込んで傷口がふさがらないようにしている。
塩の痛みは私にいろいろなことを思い出させてくれるし、忘れてはいけないことだし、忘れてしまったころにふいに大量の塩を塗り込まれないためにも自分で少しずつ塩を塗って傷の場所を忘れないほうがいいんじゃないかと考えている。

今日は塩を塗ってもあまりにも遠い痛みしか感じず、その事実が気持ちを動揺させる。傷は小さくなったのか?本当に?

とっておきの結晶を取り出して恐る恐る傷にあてると、強くしみそうな予感に私は思わず手を引っ込めた。

まだそこにある。大丈夫だ。


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