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離婚旅行 いん ITALIA

*プロローグ
 これは結婚後20年間、家族の中で機能的に建前的に夫婦としての役割を果たしてきた男女が海外という非日常の地で過ごすことで、改めてお互いの性格の不一致がはっきり露呈し、今後のそれぞれの人生を考え直すきっかけとなった旅行記である。

 夫 50代 勤務医 人見知り 目の奥が笑うことは滅多にない内弁慶
趣味は歴史探訪。学会出張ついでの国内旅行が趣味であったが、最近海外旅行にも興味を示すようになった。
ロンドン、パリ旅行に独りで行った際、今まで本を通してしか見れなかった絵画や歴史的文化遺産の迫力に魅了された。今度はもっとじっくりヨーロッパを訪ねたいと思っていた。
ヨーロッパで歴史的建造物や遺跡があふれている国 、そうそれはローマ帝国の本拠地イタリア
そうだ!ローマだ!遺跡やらバチカンやら海中都市ベネチアやら見てみたい!
 常々旅行前の下調べには余念がない。出張や学会が決まればご当地の旅行ガイド本を買い、地図は暗記できるほど何回も丹念に見る。
史跡、名所、地元で評判の飲食店やお土産の情報収集に励む。
現地に行く前にはガイドブックがほぼ頭の中にある。
さすが医者、大学を8年かけ、勉学に没頭した知識人
ザ・プロフェッショナルな姿勢である。
 今回のイタリア旅行が決まってから 目から耳から舌からあらゆる分野で情報を仕入れ、もう俺はいっぱしのイタリア通だ、後は現地に行って確認するだけだと自信満々。
 一方、妻は福祉関係で働くパート看護師 夫と正反対の歩くおせっかい 声大きめ、趣味はラテンダンスと格闘技と語学学習。
週末は飲み仲間と外遊に忙しく、一度家を出たらなかなか帰って来ない
自称個人営業外回り担当。

 さて、旅行好き、という点では意見が合うこの夫婦だが、
夫は仕事がら家を空けがちで子供三人の育児・家事についてほぼ全権を妻が握っているため、いつしか居ないのが当たり前の空気。
子供達が幼い時はやれスキー旅行だ、温泉ドライブ旅行だ、
と一家全員で移動していたが、子供達が学校やスポーツ活動に忙しくなると、その機会は少なくなった。
ましてや夫婦二人だけの旅行はほぼ皆無。

さて、イタリアに旅行を思いついた夫が唯一心配になったのが現地の治安情報。
スリにあった、お金を取られた、押し売りに法外な金額をふっかけられた、など、現地の観光情報と同じくらいの被害報告がガイドブックには記載されている。
 夫は昨年パリに独りで観光に行った。国内旅行で貯めたマイル利用で、ルーブル美術館を全部見てやろうと意気揚々と出かけて行った。
現地に到着してすぐ、地下鉄の券売機でもたつき、ジプシーの子供にあっという間にお金をスラれた。
あれ?何がおきた?もしかして紙幣盗られたのだろうか?
おかしい… 俺がこんな目に合うなんて 俺様だぞ?医者だぞ?
それからパリ滞在中移動は全部タクシーにしたらしい。

イタリア旅行計画に着手した夫の頭の中をパリでの悪夢が駆け巡る
ガイドブックには街中、美術館、教会のなかでもスリに注意としつこく書いてある。もう歩けばそこら中スリがいて国民ほぼ全員盗人だらけの国のような気がしてきた。
今回は単独でイタリアに乗り込むのは危険そうだ、不安だ、でもローマ時代の芸術をこの目でみたい、
そうだ!ツアー旅行にしよう、俺についてきてくれ!
と本当は結婚する前にいうセリフで妻に頼んだ。

 そんな夫の心配をよそに妻は降ってわいた初イタリアに大喜び 
イタリア ピザ パスタ 安心ツアー  と検索し
一番上にヒットした
 添乗員つき大手旅行会社のイタリアをめぐる7日間コースに参加することと相成ったという次第です。
さてどうなることやら 次回からの連載 おたのしみに!

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