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助産師経験談 vol.6

大学病院での経験は
今思えばすごく貴重でした。
財産です。

パワハラにあっても。
対人恐怖症気味になって
壁に向かって話した自分を知ったのも。

裏切りにあったのも。
不眠になって激やせしたことも。

本当に、わたしが勤務したら
迷惑だろうから
いなくなろうと思ったことも。

死のうかなと思った時があったことも。

今日もありがとう。
寄って下さって嬉しいです。

大学病院で最後の砦であったのと
色んな他科との連携が
すごくできていたのと
周産期医療センターに対して
どの科も協力的だったのもあって
毎日色んなことがありました。

ちょっと裏話じゃあないけど

なんかどの科も
うちには抵抗できない
反抗的態度はやめとこう的な

そう言う大学病院ならではの
派閥的なものもあったような気がしまーす(苦笑)
世界の◯◯先生、
世界の◯◯◯先生と呼ばれる
お先生方がおられましたからね〜...

まだ不妊治療を受けるにあたっては
患者さんがこっそりと秘密裏にと
願う方がほとんどで
莫大な費用がかかってましたし

採卵して受精卵となってその受精卵を
いくつ子宮に戻すかの
数も制限がなかった時代でもあり
不妊治療のメンタルケアも
まだまだ発展途上でした。

お金がないと、しかも中途半端な
お金持ちでもそう何回も受けられる
医療ではありませんでした。

ましてやマルコウがハイリスクな時代。

毎回数十万もの支払いをし
個室に入院され
しかもスタッフ全員分のお礼の品を
用意されるEさん。

わたしの2年弱の大学病院時代に
5-6回程の採卵と胚移植をされました。

当時採卵は排卵誘発をし
取れるだけ卵子を採取していましたので
多いときは15個とか
少ないと3個とか個人差はもちろん
本人の状態も影響します。

卵巣を刺激しすぎる副作用も
もちろんあります。重篤化もします。

それでもEさんは諦めず
耐え続け治療を受けておられました。

たくさん採卵できても
受精卵になるかどうか、は、
やはり、神のみぞ知る世界です。

わたしはシャーレの中で受精する瞬間も
受精卵になる瞬間も
分裂し始める瞬間も
見せて頂いた珍しい一人でしょうね〜

でも、その受精する瞬間を見たとき
ものすごい悪寒が走り吐き気がしました。

受精する瞬間を
目撃するって、
意味わかります?

そしてどの卵子とどの精子かは
技師さんの選択に
委ねられているんですよ?
この意味、考えたことありますか?

ま、いっか
価値観はそれぞれです。

受精卵になっても。
受精卵がちゃんと分裂するのかも。
その後発育できるかも。
子宮に戻して(胚移植)しても。
着床するかしないかも。
着床しても胎嚢になるかも。
胎児となるかも。
心拍が確認できるかも。

その受精卵のシステムがちゃんと
発動するかどうかは

その受精卵のみぞ知る。
そのシステムがシステム異常を起こすのか
システム異常を起こさずに誕生に至るか...


これがわたしの中で
なにかまた扉が開いた瞬間でした。


Eさんは採卵の度に
腹痛が増していき
表情も暗くなって
笑顔もどんどん消え...

わたしが最後に彼女の入院を知った時
彼女は重篤な状態となって精神的にも
体力的にも限界になっていた姿でした。


Eさんは、いつも綺麗にされていて
華やかで笑顔がチャーミングで
若いっていいね
とか
早く結婚して早く子どもを望んだ方がいいよ
とか
優しくアドバイスできる余裕があったけど
だんだん若いスタッフが訪室する事を
拒否するようになります。

経済的にも限界になったから
これ以上は辞めたと後から聞きましたが
その重篤な状態からの退院の後は
お名前を入院患者さんに見ることは
ありませんでした。

不妊治療が加速して
どんどん、赤ちゃんを
「作る」というセリフが
若い世代の夫婦に広がり

わたしの中では
授かりものという有難い存在だったはずの
妊娠と言う神聖な感動に対して
どんどん違和感だけが大きくなりました。



なぜ自然に妊娠しづらいのかな?

卵巣機能や精巣機能がちゃんと働かない
その原因はなんなんだろう?

そこの改善無しでの不妊治療って
そもそもそれって不妊治療なのかな?
治療なのか????

なにか身体にとって不具合が起き
それが卵巣や精巣の働きに
不具合を起こしているはずなのに
不具合だけを見つめ
そこに診断名をつけて治療をするって
なんなんだ?????

あれ?

あれ?

あれ?

そんな疑問がEさんの変化から
どんどん降ってくるように
湧いてくるように
溢れてきました。

女性は妊娠出来てあたり前の身体である
という昔からの呪いにも取れる
言い伝えのような呪文があるせいで
年頃になると結婚は?と言われ
結婚したら子どもは?と言われ
1人産んだら、2人目は?と言われ
3人産んで一人前と言われ
4人目妊娠ともなると
すごいねと言われるような

もう自分が言われて嫌だったはずの
そのセリフをどうしてまた
人に言うの?

みんな自分で自分の首絞め合いっこして
どうしたいの??


と個人的には思う。
人の口に戸は立てられないけど。

今では7人に一人が体外受精で
生まれてくると言われる時代になって
かなりの時間が経ったけど

わたしがEさんにあった頃は
お金持ちだけがこの不妊治療を望める時代。
そしてその代償は
とてつもなく深く大きかった時代。

子どもが授かりたいと
切に願っても
月経が始まる度に
自分を責めたり
無力感を感じたり
また次と奮起して
また落ち込んだり
って、結構自分を
信じられなくなっちゃうとこまで
いく人はいく。


Eさんとの出会いからしばらくして
独学で色々多方面から調べて学んで
考えました。



子宮が健全であるためには?



もうEさんとの出会いからかなりの
年月が経ち
沢山のお産に関わらせていただき
わたし自身も不妊でしたし
流産もしましたが、今
わたしも2人の子ども達に
母にしてもらって
のべ4万人近い方々と
仕事上で話を聞き

一つはっきりと言える。

子宮の望む事は
自分自身の中に必ず答えがある。

子宮は宇宙である。
無から有を生む。
あの世とこの世の通り道でもある。
外に答えはない。
自分が自分自神と会話ができる事が
何より大事。


あまり会話は出来てないけど
採卵のときEさんがボソっとこぼした

「わたし何がしたいんだろう?」

この言葉にわたしは胸が押しつぶされ
息をしてないことに気がつかなかったほど
絶句しました。

せめて今
今は...
Eさんが
笑っておられることを
祈らせてください。




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