安達和夫

2001年にe-Japan戦略に関わらせて頂いて以来、公共情報についての調査研究を行っ…

安達和夫

2001年にe-Japan戦略に関わらせて頂いて以来、公共情報についての調査研究を行ってきました。現在は、千葉県九十九里町の町おこし事業にも取り組んでいます。デジタル技術を触媒に人間と社会の好ましい関係をいかに築き上げるか、その模索過程を記事にさせていただきます。

最近の記事

雑感-“政治とカネ”という爛れた関係

自民党一部議員(・・・と個人的には思いたいが)によるキックバック問題で政治への信頼は地に落ちてしまった。これは、単なる政治スキャンダルや政局問題として捉えるべきではなく、国家の存立基盤そのものを揺るがす極めて深刻な事態と受け止めるべきではないだろうか。なぜなら、国と国民は納税という行為によってつながっており、納税を行うことで国から社会的な保証が得られ、政治とは国と国民の関係を適正に維持するための唯一無二の存在だからである。だから、大半の国民が政治に不信感を抱けば、その瞬間に国

    • 雑感-“氏素性”について考えてみた

      先日友人の投稿で、83歳の老夫人が戸籍に記されるご自身の名前の漢字を区役所に無断で変更されたとして家裁に提訴し、家裁はその主張を認めたといった記事を知った。「漢字が変わると社会生活に多大な影響を及ぼし、根拠となる法律の規定がないのに行政が一方的に改めることは許されない」との判断があったとのことだが、どうもこの方の戸籍に登録されていた文字は“廣”ではなく“广に黄”という文字だったようだ。当然ながらこうした文字は正字としては存在しておらず、誤字の一種と言ってもよいものだろう。戸籍

      • 雑感-ネットとの付き合い方

        ドイツ気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルは、ネット空間を「無法地帯」と呼んだ。確かに、対面でのコミュニケーションを前提に作られた現行法では対処困難な事案も多いのは事実だ。バーチャル空間の秩序を維持するための法体系の整備が求められるが、やっかいなのはネットには国境がないことで、国内法を整備するだけではおのずと限界があるし、だいいち国際法として成立させるには多国間との条約の締結が求められる。 だが、氏が無法地帯と呼んだ本当の意味は、察するところいじめや誹謗中傷なども含む表面的なネッ

        • 岸田内閣による新たな経済対策は果たして有効な政策なのだろうか?

          岸田内閣は、所得税と住民税の減税に加え、低所得世帯向けの給付金や、価格高騰が続く電力・ガスなどの補助金制度の延長を含め総額17兆円規模の新たな経済対策を閣議決定しました。 納税者と扶養家族一人当たり年間所得税3万円、住民税1万円を減税 住民税非課税の低所得世帯に対して年間7万円を給付 ガソリンや電気・ガスなどの負担軽減のための措置を来年4月まで延長 生産性向上を目指した中小企業の設備投資への支援 国内に半導体の生産拠点を整備するための基金の積み増

        雑感-“政治とカネ”という爛れた関係

          効率的な医療体制実現に向けた私案

          先日、FaceBookでの友人の投稿を読み、今の医療の実情を改めて思い知らされました。 人間ドックの検査で異常は見つからなかったものの、腫瘍マーカー値が高いと言われ、医師からCT検査を勧められたそうですが、2年前にも同じ病院で検査を受けた際にも同様の指摘を受け、MRI検査を受けた結果異常なしと判定されたため、その折の検査結果を見せたところ、「生まれつきマーカー値が高いようなので、それなら精密検査は不要ですね」と言われたとのことです。「医師がみた電子カルテの画面に、今回の人間ド

          効率的な医療体制実現に向けた私案

          政府はマイナ保険証の導入をなぜ急ぐのか?

          2024年秋に従来の健康保険証をマイナンバーカードに一本化する、いわゆるマイナ保険証の導入をめぐって、政界を含め様々な懸念論が展開されています。 一本化への懸念には、マイナンバーの紐づけミスが発覚されたことが大きな引き金になっていることは言うまでもありません。こうした不安が払しょくされない限り、一本化は先送りすべきだという意見が野党だけでなく与党自民党内からも挙がっているようです。 さて、こうした声にもかかわらず、政府は健康保険証の廃止時期は延期せず、予定通り来年秋のマイナ保

          政府はマイナ保険証の導入をなぜ急ぐのか?

          私がマイナンバー制度に期待したこと

          私が番号制度の重要性に気づかされたのは、故与謝野馨氏に初めてお会した時だった。 当時の私は、電子商取引推進協議会(ECOM)電子政府WGの主席研究員として2001年4月より4年間その任に当たっていた。前年の2000年9月の衆参両院本会議の所信表明演説で当時の森喜朗総理が「e-Japan構想」を表明し、5年以内に世界有数のIT国家になると宣言した時期である。森総理は“IT”を“イット”と発言したことで失笑を買ったが、この時代は”DX”はおろかITという言葉すらあまり一般には浸透

          私がマイナンバー制度に期待したこと

          税について考える

          前回のブログで、消費税の逆進性を回避する手段として、給付付き税額控除が有効ではないだろうかと書きました。引き続き今回は、所得再分配としての税の役割について考えたいと思います。 1.租税回避は賢さの証明なのか? エマニュエル・サエズ教授・ガブリエル・ズックマン教授による共著『つくられた格差(2020年9月・光文社刊)』の冒頭で、興味深いエピソードを紹介しています。それは2016年9月26日のヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏による大統領候補テレビ討論会でのエピソー

          税について考える

          軽減税率は消費税の逆進性にどれだけ有効なのか?

          軽減税率は、2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられた際に、新たに導入された仕組みです。すなわち、生活するうえで必要な品目の税率を従来の8%に軽減することで、とりわけ低所得者の負担に配慮するために導入された仕組みと言えます。具体的には、酒類や外食を除いた飲食料品と、週2回以上発行される新聞などが軽減税率の対象となっています。 では、軽減税率が消費税の公平な徴収にどれだけ有効な施策であるのか、ここで改めて考察してみることにします。 1.消費税の逆進性とは 消

          軽減税率は消費税の逆進性にどれだけ有効なのか?

          年金制度における今後の課題

          1.長寿化に伴う労働環境の変化 前回のブログでは「ジョブ型雇用」に必要とされる労働環境の整備ついて考えたが、人生時間の観点から労働環境を見れば、また異なる重要な課題が見えてくる。すなわち、“長寿化に伴う変化”である。 今日の社会保障制度などが形作られた1960年前後の平均寿命は、男性がおよそ65歳、女性が70歳だった。この時代に描かれた『サザエさん』の波平さんの年齢は50歳そこそこと聞いて驚く人が多いほど、ここ半世紀で平均寿命は大きく伸びたことになる。 では、生産年齢以降の

          年金制度における今後の課題

          雑感 ー テクノクラート

          先日、東京での会議の帰途の車中で友人から「日本の組織では技術者の地位が低い」と言われた。言われてみると、<技術者=スペシャリスト≒特定の分野に(のみ)精通した人>といった感覚で見られる傾向がある。それゆえ、全体を俯瞰した意思決定などは得手ではないと思われ、ゼネラリストと呼ばれる何でも屋がトップに君臨するケースが多いようだ。 霞が関ではこうした傾向が顕著であり、国家公務員採用試験で特定の技術系分野に合格し採用された時点で”技官”としての烙印を押されてしまう。そして一部の省庁を

          雑感 ー テクノクラート

          雑感 ー 茹でガエル

          先日、ある団体(実名を挙げるのは避けるが、推測がつく人もいると思う)の会合で、今日のわが国が抱える共通した限界がはしなくも垣間見られてしまった。それは、どう考えても当初の目的を満たすことができず機能不全に陥っている団体に代わって、新たな団体で事業を計画した際に往々に生じる猛烈な反発現象である。 新たにできた組織が成功すれば、元の団体の面目が失われてしまう。こうした反発する側が抱く心理状態は手に取るように分かる。そのために、揚げ足取り的な反論を繰り返したり、発言に割って入るなど

          雑感 ー 茹でガエル

          ジョブ型雇用について考える

          岸田総理は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)での講演で、日本企業にジョブ型雇用を促す指針を2023年春までに官民で策定することを明らかにした。すなわち、従来の年功序列型雇用の指標だった職能給から、職種に応じた専門性や業務の難易度を指標とする職務給を中心とする雇用形態に移行するというものである。職務給は欧米をはじめ他国ではかなり一般的な雇用形態だが、年功序列(≒終身雇用)が長く定着したわが国では、かなり斬新ともいえる変革と言えよう。それだけに、こうした変革には諸環境の整備など

          ジョブ型雇用について考える

          死してなお影響力を残す安倍晋三氏

          世論調査で岸田内閣支持率が30%台に下落したとの報道があった。閣僚の相次ぐ辞任など任命権者としての資質が問われたことが大きく作用したように思う。しかし、この1年で失政といえることはどれほどあったのだろうか?と翻って考えるとあまり思い浮かばない。円安もエネルギー高騰も内閣の失政が招いたことではない。むしろ、アベノミクスによる前代未聞の金融政策とズブズブともいえる財政出動の結果、政府(財政)頼りともいえる甘えの産業構造が定着し、肝心の成長が果たせなかったツケが国際競争力低下を招き

          死してなお影響力を残す安倍晋三氏

          政府調達の裏側

          安倍元総理の国葬をめぐって、イベント業者が一社入札によって選定され、かつその業者が5年間にわたり”桜を見る会”の企画運営に当たっていたことが国会やマスコミで大きく取り上げられています。私は、1992年(平成4年)からおよそ10年間ほど、ITメーカーの一社員として様々な官公庁への売込みに携わってきましたが、その間見聞きし経験もした政府調達の実態から考えれば、これはさほど不思議な出来事とは思えないのです。今一つ踏み込み、調達仕様書と事業者による提案書(とりわけ体制図など)を見れば

          政府調達の裏側

          住基ネットの亡霊

          HEA-SYSをめぐる混乱 今日に至るも数多くの死者や重症患者を出し続けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、我々に社会の脆弱性を嫌というほど突きつけた感染症と言えるでしょう。3年近くが経過した今になっても感染者の全数把握の是非が議論されているのも、その顕著な現れの一端だと思います。 全ての感染者の状態を把握するには厚生労働省が開発したHEA-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)に感染者個々の情報を入力する必要がありますが、感染者への

          住基ネットの亡霊