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NOTHING 2月18日~365日の香水

ジャマイカ
この香水にまつわる面白いことは二つ。
一つは、ジャマイカの香水であるということ。
PARFUMS JAMAICA は半世紀前に米国籍の企業家とジャマイカの実業家3人によって創業された。
自然と、というと変だけれど、集まってきた香りの中の一つで、長い間今日の日を待ってくれていた。調べたら今はもう製造されていない。
本当に、地球のあらゆるところで、香りの文化は育まれている。

虚無
もうひとつはNOTHINGの意味するところ。
何もないこと、存在しないもの。
シェイクスピアの悲劇の主人公たちは、NOTHING、虚無感に苛まれていたけれど、悩みも苦しみも存在する、自分自身が存在する、世界が存在する世界にあって、「存在しない」という概念がちゃんと生まれることに、森羅万象の絶妙さを想う。

果てしない物語
昨夏ごろから、ミヒャエル・エンデの「果てしない物語」を毎月一回数章ずつ、スローリーディングする読書会に参加していた。
今日はその最終回。
終わらない物語を香りにするならなんだろう、と時々思っていた。
ロングラスティングで果てしなく香りが続きそうなもの、というのは真っ先に浮かぶけれど、終わらないわけではない。
少し近かったのは「輪廻」をテーマにしたジャスミンと白檀のアコードが美しいあの名作香水。
けれど、「果てしない物語」で作中人物は転生するわけではない。
主人公は幻想世界では数年にも及ぶと思える体験を通し自己変容していくけれど、現実世界ではそれがたった1日の出来事だった。
日常の中でそんな一日を与えられることはないかもしれないけれど、長い時間をかけて私自身も自己変容してきた。
時間軸にとらわれなければ、生きていくということは自己変容が果てしなく続く物語なのかもしれない。

終わりの始まり、はじまりの終わり
NOTHINGは物理学では完全な無ではなく、量子の揺らぎ、つまりその先に何かが生まれる可能性を秘めた状態という概念になるようだ。
全てをなくすことは、次に何かが生まれるということなのかもしれない。
自分の中で小さな何かが輪廻していることなのかもしいれない。
NOTHINGという言葉に接して、そんな思いが巡った。
一つの変容がゴールではないように、それが次の変容を常に生み出していくように。

NOTHING/PARFUMS JAMAICA
香りは伝統的なフローラルブーケで、ジャスミンやローズ、チュベローズなど豪華な匂い立ち。
NOTHINGどころか十分な存在感。おそらく、名門の香りを十分に研究し、「いい香りを創りたい」という姿勢で臨んだのだろう。
黒とピンクのデジタルなパッケージとクラシカルな香りのコントラスト。
果てしなく続く小さな物語を抱きしめるように装いたい。

香り、幻想、呼吸。

2月18日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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