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[小説]苺ジャムが食べたい!!#1

ある日、森の中にくまさんが住んでいました。
くまさんは、ハリボーと苺ジャムが大好きでした。彼は、それを貰うと喜んで食べました。

しかし、中々それらが食べられる訳ではありません。森の中で取れるのは、鮭や鳥ばかりで、中々くまさんが食べたいものはゲット出来ませんでした。

ある日、くまさんは、家の中でテレビを見ていました。そこには、くまさんの大好きな苺ジャムが映っていました。

しかし、見ることは出来るものの、
くまさんはそれを取りに行く方法が分からず、
お預け状態でした。

くまさんは、苺ジャムが猛烈に食べたくなりました。

「なんでテレビの中の人は、あんなに美味しそうに食べてるのに僕は食べれないの?」

くまさんは潤んだ目でテレビを見つめていました。そして、無意識にじゅるりと音を立てて、
口を開けていました。

くまさんはとても悔しかったので、どうにかして苺ジャムを食べようと考えました。そして、考えた結果、街の人に分けて貰うことにしました。

「苺ジャムが欲しいよ〜」

くまさんは、子供のように泣きじゃくりながら、
街に下りていきました。

⭐︎

くまさんが街に降りていくと、
何故か人々が、モーゼの十戒のように道の端に避けていきました。

くまさんは、避けられていることがわかったので、悲しくなりました。

「どうして避けるのさぁ!!」

くまさんは、つーんとした鼻を、ティッシュで抑えながらそう言いました。

すると、人々の束の1番前にいた、黒いジャンパーを着た男が言いました。

「だって、くまじゃん!!街に降りてきたら、人を襲うんだろ?逃げるに決まってる」

そう言われて、くまはショックを受けました。
それと同時に、ハッと気づいて辺りを見回しました。

そこには、自分に怯える人々の姿があったのです。くまは忘れていたのです。自分が、人間と同じ言葉が喋れる為に、本来は人から恐れられる存在だということを。

「みんな、怖いの?」

くまが恐るおそる聞くと、皆一様に首を縦に振りました。くまさんは、それを見て、一瞬悲しい気持ちになりました。

しかし、みんなの怖がっている顔をみて、この街を出て行くことに決めました。

苺ジャム🍓は食べたかったのですが、
また別のところで探そうと思いました。

「みんなごめんね。ぼく、帰るね」

くまさんは、がっくりと肩を落としながら、
家路につきました。

⭐︎

その帰り道での出来事です。
くまさんは、横断歩道で信号を待っていました。

くまさんは、町中の汚れを知らず知らずのうちに掃除していたので、薄汚れていました。

(あともう少しで、赤だ!!)

そう思いながら待っていると、
目の前に、まだ全然渡りはじめたばかりの小さな女の子な姿が見えました。

(大丈夫かなぁ…?)

くまは不安に思いながら眺めていました。

しかし、その女の子は、信号がやがて点滅し始めて、赤に変わったときも、横断歩道の真ん中の方にいたのです。

その時点で、女の子もどうやら渡りきれないとわかったようで、左右を見渡してうろうろしていて、焦っているようでした。

ブッブー

そこに、くまからみて、丁度左奥の方から、大きなトラックが走ってきたのです。

(どうしよう……どうしよう!!)

なんとか避けられないかと、女の子の方をみましたが、トラックに気づいてしまった女の子は、その場で動けなくなっていました。

(あっ…!!)

トラックは、女の子に一直線です。


(も、もう……行くしかない!!)

トラックは止まる様子がありません。
気がついたら、くまは走り出していました。

「逃げてっ!」

勢いよく道路に飛び出したくまは、女の子を力いっぱいに押すと、女の子は我にかえったような顔になって走り出しました。

女の子は、その小さな体で一生懸命に走り、
なんとか歩道に戻ることが出来ました。

くまは、それを見届けて安堵し、今度は自分が渡ろうと、一瞬トラックを確認しました。

すると、トラックは、もうすぐそこまで迫っていました。くまは、怖くなって、涙を流しながら、
目をぎゅっと閉じました。

(もうおしまいなのかなぁ、こわいよぉ)

次の瞬間、くまは空高く舞い上がりました。
そして、そのまま何メートルか右側に飛ばされて、走ってきた別の車に轢かれました。

「いだぁぁい!!いだぃよぉ!!」

くまの身体は、ぶちぶちと音を立てて離れていきます。繊維が剥がれていくのが、目に見えてわかりました。

辺りには大量に、くまの一部が散らばりました。
薄れゆく意識の中、くまは、思いました。


「最後に、苺ジャムを食べて死にたかったなぁ」

そう思ったと同時に、くまは意識を失ってしまいました。元々白かったくまは、車に轢かれていつの間にか真っ黒になっていました。

続く






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