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「ナポレオン」歴史スペクタクル!!と思いきや、ぶきっちょな恋愛映画。

どうも、安部スナヲです。

「ナポレオン」観て来ました。

80代半ばにして尚も快進撃がとまらないリドリー・スコットによる一大歴史スペクタル!!と思いきや、そういうのとはちょっとベクトルがちがう、ぶきっちょな恋愛映画でした。

【あらましのあらすじ】

フランス革命から4年後の1793年。民衆の怒号が飛び交うなか、王妃マリーアントワネットはギロチン処刑される。

執行された広場に群がる人々のなかに、どーゆーワケかまだ若い大尉のナポレオン・ボナパルト(ホアキン・フェニックス)もいて、その光景を冷めたぁーい目で見ていた。

トゥーロンの戦いで王党派を破り、総司令官にまでのし上がったナポレオンは、あるきっかけから、未亡人で2人の子持ち、ついでに上官の愛人でもあった女性ジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)と出会い、よりによって一目惚れする。

ジョゼフィーヌはこの不粋で無骨な軍事バカが、自分にゾッコンであることを悟り、彼を誘惑。まんまと術中にハマったナポレオンはジョゼフィーヌと結婚する。

が、ソッチにかけては熟れ過ぎた果実であるジョゼフィーヌが童貞臭いナポレオンに従順な筈はなく、彼女はオトコをつくりナポレオンを悩ませる。

出典:映画.com

そんな猥雑な私生活をよそに、軍功を重ねながらぐいぐい出世するナポレオンは、遂にクーデターを起こして皇帝になり、ジョゼフィーヌも皇后になるのだが…

出典:映画.com


【感想】

ナポレオンといわれても、自分にとっては稀代のカリスマとして偶像化されているだけの人物で、何をした人なのかはほとんど知らない。

なので「史実とちがう」というゲバ評での指摘はよくわからないし、はじめからそこに興味もない。

それでもこの映画に触手がのびたのはホアキン・フェニックスがナポレオンを演じるというところ。

似てるというのともちがうが、あの肖像画のムッツリ助平のようなナポレオンは、そういえばホアキンっぽいし、『ジョーカー』以降、役者として株を上げた貫禄とも相まって、妙にシックリ来た。

出典:映画.com

如何せん史劇に関しては百戦錬磨(※個人の感想です)のリドリー・スコットが監督するのだから、画ヂカラへの期待値は高かった。

そこに関しては、期待以上どころの騒ぎではなく、〈まったく新しい映像体験〉という表現は、こういう時に使うのだなというくらい驚いた。

それこそジャック=ルイ・ダヴィッドだか何だかの〈古典派〉と呼ばれる絵画、あの写実感のまんま世界が存在し、そのなかで人や馬が動いてた。

出典:映画.com
出典:映画.com
出典:映画.com

さらに、これもやってくれるであろうと思っていた戦闘シーンの凄まじさも、アッサリと映画史を更新してくれた(※個人の感想です笑)

戦争映画における戦闘シーンでもっとも衝撃を受けたのはスピルバーグの『プライベート・ライアン』だが、本作はその進化形というか究極形というか、例えば人が死傷するところを、見せる気満々でクローズアップするのではなく、そこかしこであたりまえのように肉片が、肢体が、内臓が飛び散る。

あのように、たくさんの生命が恰も物体として玉砕されていく様を、ドライに見せられるのがいちばん恐ろしい。

死傷の惨たらしさとは対照的にというか、隊列とか軍の動きにはウットリしてしまう美しさと躍動感があり、釘付けになった。

特に強烈なインパクトだったのは、ロシア・オーストリア連合軍を撃破したアウステルリッツの戦い。

敵軍を凍った湖の上に誘き出し、砲撃によってその氷を割ることで馬もろとも湖に沈めるという、奇抜な遊戯戦法。

あの撮影のために、広大な野原に穴を掘り、傾斜をつけ、実際に湖を作ったというのだから手間ひまを想像しただけで恐れ入る。ま、リドリー・スコット作品だから出来ることなのだろう。

物語的にはフランス革命以降の出来事やナポレオンの代表的な戦闘が箇条書きで連ねられたような、駆け足で淡白な印象を受ける。

やはり2時間半という短さではこうなるかという感じ。(これについては4時間半のディレクターズカット版がありAppleTVで配信予定ありとのこと)

出来事は淡白だが、ジョゼフィーヌとの愛憎劇はコッテリ描かれている。

あれほどの戦闘を統率して来たナポレオンが、軍事もままならんくらいひとりのオンナに振り回されてたなんてことを真に受けるもんじゃないが、実際に戦地から何通も送ったジョゼフィーヌ宛ての手紙には、例えば一度も返事を書いて寄越さないことをネチネチ責め立て「僕はこんなに愛してるのに」とか「君は毎日何をしてるんだ?」と詰めるような、束縛カレシズム満載の内容だったらしい。

ただ本作は、ジョゼフィーヌへの執着がナポレオンの行動原理そのものに〈セッティング〉されている。

顕著なのは、エジプト遠征中に彼女の浮気を知らされ、居ても立っても居られないという感じで急遽フランスへ引き返す場面。

実際は他のフランス軍の戦況悪化や敵対国が対仏同盟を結ぶなど、逆風的な状況があり、それらを打開するために戻ったと解釈するのが通説みたいだが、もうそれありきにされてしまってるのでとても可笑しなことになっている。

何じゃそら!と思ったのは、ナポレオンが浮気を糾弾する時、「この私がいなければ自分には何もないと言え!」というモラハラ発言のあと、一旦は許しを乞うように見えたジョゼフィーヌが、「あなたは粗野な男。私がいなければ何者でもない」と反撃、それに対してなんやかんやで最終的にナポレオンが「はい」と服従する。。。

それ、ただのSMプレイやん。。。

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