モードの見方 -1940年代-
先月、プロローグから始まったモード史を追う今シリーズは、今回からが本格的なスタートになる。始まりは1940年代とした。現代ファッションの始まり、それは1947年2月だと私は考えている。クリスチャン・ディオールがモード史に燦然と輝く「ニュールック」を発表した年だ。
ニュールックの発表によって、戦後から今に続く現代ファッションが始まった。しかし、この1940年代、注目すべきデザイナーはディオール以外にもいる。それはパリのデザイナー達でもない。今以上に世界のファッションの中心であったパリから遠く離れた地、アメリカにそのデザイナーはいた。
クレア・マッカーデルだ。
今回は1940年代の時代背景を述べ、「アメリカン・ルック」を確立したクレア・マッカーデルのデザインにフォーカスしていきたい。
服を着ることは時代を着ること。それが実によくわかる時代が1940年代である。時代の動きがファッションに与える影響が如実にわかる時代だ。ファッションデザインは、時代のコンテクストを拾うことがデザインの重要なキーになっていく。
戦争が世界を覆う1940年代
1939年に勃発した第2次世界大戦に、世界は翻弄されていく。物資が限られ、贅沢ができない時代であり、男は戦地に赴き、女は働くことが迫られることになった時代であった。
そんな時代にあって、高級な装飾を施したファッションは時代のニーズではない。コルセットのように身体の動きを制限するファッションも、時代に必要とされなかった。
戦争は人々の暮らし方を変える。暮らし方が変われば、服装も変わっていく。戦争が変えた時代は、人々の中に新しいニーズを作り出す。必要なのは、動きやすく実用的な服。それまでのファッション観を転換させるニーズが世界に生まれた。
1940年代、ファッションの中心はパリ。パリから発信されるファッションが世界へ伝搬し、それが時代のスタイルとなっていった。だが、第二次世界大戦がその流れを変える。
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