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未来人は頭がでかい!ぼくらがグレイに至る道筋。

 「グレイ」という有名な宇宙人がいる。
巨大な頭と目、細くて小さな身体が特徴だ。

 「このグレイってのが未来の人類の姿なんだよ。」という、グレイ宇宙人説に対するカウンターはもはや目新しくはないし、じつは結構説得力のある定説になった感すらある。

 さてこの記事では、なぜ人類はこんな低頭身の幼児体型になってしまうのかをあらためて解き明かしていく。
 
宇宙人の「グレイ」と区別するため、この幼児体型化した未来人を便宜上「肥頭種(グレイタイプ)」と名付けることにしよう。

現生人類の身体はまだ未完成。

 もしあなたが「ホモ・サピエンスの身体って文明生活に合ってないよなあ。」と感じたことがあるのなら、きっと肥頭種のことを気に入るだろう。

 だって人体は文明生活に適応するために骨や筋肉を減らしスマートに、代謝を減らし長生きに、代わりに脳を進化させ縦に直線的な身体に急変したために、様々な不都合を生じたからだ。
 普通に生活しているだけでヘルニアや痔、生理痛を起こす。社会の高度化に惑わされ、心の病が(量も種類も)激増する。
 そう、まだ人体は完成しておらず、文明に適応する過渡期にいるのだ。

 それも仕方のない話。1000万年前ヒトの祖先が誕生してから、ほんの1万年前までずっと我々は野生動物を狩って生きてきた。
 それが農耕をはじめたところから突如、高度な文明をメキメキと発達させていき人類社会は急速に効率化したわけだ。人体の進化よりはるかに早く、文明は進歩してしまった。

 この1万年はいそがしすぎて、身体の進化と文明の進歩の足並みを揃える余裕がなかったのだ。

ホモ・サピエンスは進化を余儀なくされている。

 現在進行系で文明社会は発展し続ける。我々の身体はその発展についてゆこうと、必死で変化し続けている。
 現代人に強烈な「個体差」が人類に生じているのはそのあらわれ。
 次の進化のために、べつの生態に移行しつつあるわけだ。
 誰しも覚えがあるのではないだろうか、自分とはまるで違う生態を持つ人間が同じ社会で生活している違和感に…

 足の小指の関節の数が違う人。
 親知らずで顔を腫らす人と生えてすら来ない人。
 耳を動かせる人と動かせない人。
 全身に体毛が生える人、一部にしか生えない人。
 そう、ホモ・サピエンスには見て明らかなほど極端な個体差が生じており、新世代ほど骨や筋肉や毛の数が少なくなっているのだ。
 しかもADHDも数を増やし続けている。彼らは現行社会との齟齬に苦しんでこそいるが、旧来の人種とは違う世界観を前提にした能力を備えた新人類であるという説が私は好きで、ぜひ推したい(この一点に関しては個人的な見解だ)。

 そして1950年から現代にかけて、知能指数のスコアが20ポイントほど増加した事実(フリン効果)。
 人間は世代を経るたびに脳を現代的にアップデートし続けている。
 合理的な思想の人間が増え、感情的だった社会は日進月歩で理性的に変貌してゆく…

 カンタンに言ってしまうと、「ヒトは肉体を単純化していく代わりに脳を進化させている」ということだ。

 もしこの線路上に乗ったまま進化を続けていけば社会はどうなっていくだろう?

 世代を経るごとに肥大する脳はさらに優れたテクノロジーを生み出し、農業や工業をもっと効率化していく。
 危険度の高い肉体労働は機械化されていき、体力が必要な職業は数を減らしつづけていくだろう。
 そうなったとき人間が求めるのは、芸術や学問を嗜む知性や、細く繊細な作業をこなす小さな手、それらに耐えうる高性能・高耐久と複雑な感情表現を実現する巨大な眼球だ。
 技術発展で進化した加工食品は栄養もよく、次第に人々は顎力と消化能力を低下させ、あごは小さく胴は短くなっていく。
 移動は乗り物に頼れば良い、それより長く座っていても健康でいられる、必要運動量が少なく済むエコな身体の方が都合が良いので手足は短くなる。
 腕力で争う時代は終焉して筋肉も減る、テクノロジーの方がよほど強いからね。
 整形技術が行き着けばルッキズム(みにくい人を差別する価値観)も絶滅する、だって容姿の良し悪しで遺伝子の優等性が見抜けなくなるからね。
 性別の概念も意味を失っていく。
 同性同士でも子供がほしければ作ればいい、テクノロジーがそれを可能にしたからね。
 すると肉体の男らしさ、女らしさは意味を失い中性的になってゆく。

 そしてなぜ頭部が巨大になるのかを説明しよう。
 実は人類はここ1万年をかけてだんだん脳を小さくしていっている。
 昔のホモ・サピエンスや、何万年も昔にいたネアンデルタール人のほうが脳の活動が多く、脳容量が大きかったのだ(これは知能の高さと脳容量が関係しないことも意味する)!
 人類は消化の良い肉を食べるようになったことで腸に使うエネルギーを脳に回し、視覚などの身体機能やコミュニケーション能力を強化し、高度な技術の発明と継承を実現した。だが身体を退化させつつある我々現生人類は、知能こそ上がってはいるが脳の使用率自体が減ったのでちぢんできているのである。
 ところが、前述のとおり人類は「とても消化の良い栄養食」を手に入れる。
 凄まじくエネルギーを消費する腸は退化し、胴体の容量が小さくなる。
 節約したエネルギーを脳に回すと、文化や技術の発展に大きく貢献する。
 すると高度な操縦技術がなければ使えない繊細な道具や、構造は複雑なのに部品がとても小さな小型の製品を扱う必要が出てくる。
 小さくなった手足や大きな目をそれらの扱いに役立てるには、脳の視覚野や運動野を特別な形に発達させねばならない。
 そしてことさらに発達した技術や学問を継承するため、
 または複雑かつ完全に近づいた社会を全人類で運用するため、
 人はコミュニケーション能力をさらに発達させねばならない。
 本能ではなく理性で…すなわち、今よりも実用的に進化した言語や振る舞いを操って、である。
 そこに至るには、現生人類の前頭葉や言語中枢では不足なのだ。
 そしてヒトは身体を小さくする代わりに、巨大な脳みそを手に入れる。

肥頭種の生きる未来はどんな世界か

 文明生活のはて、高度な社会性と長寿を実現した人間は成熟した社会が突き当たる少子高齢化問題をも乗り越えてしまう。
 それは老人を山に捨てる方法でも不当に子供を量産する方法でもない。
 テクノロジーによって人手不足を補ってしまうほどの効率化を成し遂げ、誰も見捨てることなく社会問題を乗り越えてしまうのだ。

 冒頭のような「グレイ」の身体は、そんな未来を実現するための身体である。
 なにもブキミさを演出するためにアドリブで出た発想じゃない。
 進歩した文明社会にふさわしい、合理性を備えたデザインなのだ。

 理知を育み続けた人間が肥頭種に至るのはこういうこと。
 まさに今わたしたちが歩んでいる社会をそのまま推し進めた、正当進化というわけだ。

 肥頭種が出現する時、それは人間が次なる生存戦略を自然に選択する際に「知性」を選び取った未来だ。
 その祖先になるのは、現生人類がそなえている数多の性質の中で「理知」こそ最も素晴らしいものだと知っている人間にちがいない。



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