マガジンのカバー画像

2021年映画感想

43
運営しているクリエイター

記事一覧

2021年の映画作品振り返り

 年明けてからそこそこ経ってしまいましたが、恒例として昨年観た映画作品の振り返りしておきたいと思います。  2021年は42本の映画感想を書いております。感想書きしなかった作品の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『呪術廻戦0』を含めると44本観ることが出来ました。今の生活ペースだと、このくらいが精一杯ですね。3桁以上観ている方は、どういう生活してんでしょうか。  ちなみに、『閃ハサ』『呪術』は、感想書き出すと内容のネタバレどころか、まだ映像化していない原作部分のネタバレが

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』感想 60年代への憧れと贖罪

 2021年の感想書き、ラストになります。映画『ラストナイト・イン・ソーホー』感想です。  『ベイビー・ドライバー』で知られるエドガー・ライトの最新監督作品。『ベイビー・ドライバー』では、劇中での音楽の使い方が半端じゃないセンスだったのが印象的でしたが、今作でもそのDJ的な音楽センスが爆発しています。本当にこの監督は、映像に音楽を重ねるのが上手いですね。  ジャンルとしてはド直球のホラー。けれども、サスペンス要素としての犯人探しもあるので、至る所にミスリードが仕掛けられて

映画『パーフェクト・ケア』感想 「完全超悪」映画

 面白さは超一流、だけど手放しでは楽しめない。映画『パーフェクト・ケア』感想です。  高齢者の成年後見人を務めるマーラ・グレイソン(ロザムンド・パイク)は、多くの老人の後見人として完璧なケアを行っており、裁判官からも信望の厚い女性。だが、マーラのケアの実態は、医師や高齢者施設と結託して、まだ自活出来る健康な老人を偽の診断書で施設に閉じ込め、その資産を管理する名目で横領するというものだった。  マーラは、ジェニファー・ピーターソン(ダイアン・ウィースト)という身寄りのない老婦

映画『悪なき殺人』感想 偶然が隠す哀しい滑稽さ

 あまり書くと、どうしてもネタバレになってしまうので、今回は短め。映画『悪なき殺人』感想です。  ドミニク・モル監督によるフランス映画作品。全くのノーマークでしたが、新宿の武蔵野館で別の映画を観た際に、大きく上映予告の広告が打たれているのが目に留まり、評価も高そうなので観ようと決めました。結果、まだまだ自分のアンテナも捨てたもんじゃないと、悦に入ることができました。  この作品は主人公1人の視点ではなく、複数の主人公からの視点を描いて、全体像を見せるというスタイルの作品で

映画『JOINT』感想 詳細な犯罪ディテールが紡いだ物語

 超絶なリアリティ、だけどしっかりとした物語性も魅力的。映画『JOINT』感想です。  刑務所を出所した半グレの石神武司(山本一賢)は、一年間の肉体労働で作ったクリーンな金を元手にして、東京に拠点を構える。元々得意としていた個人情報の「名簿」を扱う詐欺ビジネスを始めた石神は、後輩の広野(伊藤祐樹)が所属する大島会や、韓国移民を世話する友人・ジュンギ(キム・ジンチョル)の協力もあり、手広く稼ぐことに成功する。だが、いくら誘われても、大島会に所属することは避けていた。  カタギ

映画『マリグナント 狂暴な悪夢』感想 元気がもらえる、カンフル剤ホラー

 おちこんだりもしたけれど、(たくさん人が滅多刺しにされるシーン観たから)わたしはげんきです。映画『マリグナント 狂暴な悪夢』感想です。  妊娠中のマディソン(アナベル・ウォーリス)は、幸せな状態とはとても言えず、夫のデレク(ジェイク・アベル)のDV行為により不安な日々を送っている。ある日、デレクと口論になり、突き飛ばされたマディソンは後頭部を壁に打ち付けて出血してしまう。その深夜、家に侵入してきた何者かの手によって、デレクは無惨に殺され、マディソンもその何者かに襲われて気

映画『かそけきサンカヨウ』感想 変化する過渡期の美しさ

 眩しいくらいの清廉潔白さ。映画『かそけきサンカヨウ』感想です。  高校生になる国木田陽(志田彩良)は、幼い頃に母親が出て行き、父親の直(井浦新)と2人暮らしで、家事全般を陽がこなしていた。ある夜、陽は直から、結婚したい人がいると告げられる。2人での暮らしは終わり、再婚相手の美子(菊池亜希子)と連れ子のひなたとの4人生活が始まるが、陽は新しい暮らしと家族に戸惑いを隠せない。陽は、同じ美術部で幼馴染の清原陸(鈴鹿央士)にその戸惑いを打ち明けながら、少しずつ今の家族を受け入れて

映画『アンテベラム』感想 差別は恐怖からやって来る

 何書いてもネタバレになるところを、あえてネタバレなしでチャレンジ。映画『アンテベラム』感想です。  南北戦争下と思しきアメリカの、南軍の旗が掲げられた綿花農場。そこでは軍属の白人やその家族によって、多くの黒人が奴隷として厳しい労働を強いられていた。奴隷の1人であるエデンと名付けられた女性(ジャネール・モネイ)は、脱走の機会を図り続けていた。だが、なかなか機会は得られず、そうしている間にも、エデンは蹂躙され続け、彼女の目の前で同胞たちが殺されていってしまう。  場面は変わり

映画『DUNE/砂の惑星』感想 ドデカくブチ上げた始まりの物語

 真っ新で観た人間としては、きちんと続きを待つか、原作を読んでしまうか、迷うところ。映画『DUNE/砂の惑星』感想です。  フランク・ハーバードの名作SF小説『デューン 砂の惑星』を原作にした映画作品。過去に幾度も映像化が試みられていて、アレハンドロ・ホドロフスキーが10時間以上の大作映画として企画するも頓挫(後に『ホドロフスキーのDUNE』というタイトルで制作構想がドキュメンタリー映画となっています)。その後、デヴィッド・リンチが映画化しましたが、原作のダイジェスト版のよ

映画『ビルド・ア・ガール』感想 間違ってはいないけど、物足りない

 ちょっと展開が平凡過ぎたかなというところ。映画『ビルド・ア・ガール』感想です。  1993年のイギリスで暮らすジョアンナ・モリガン(ビーニー・フェルドスタイン)は、溢れんばかりの妄想力と文才を持て余す高校生。何かのきっかけを掴み、校内でイケてない層の身である事から脱却したいと考えていた。そんなジョアンナに、音楽好きの兄クリッシー(ローリー・キナストン)が、大手音楽情報誌「D&ME」のライター募集の記事を教える。ジョアンナは持ち前の行動力で、「D&ME」のライター見習いの座

映画『MINAMATA』感想 物語で伝える事と、消費される事の難しさ

 授業教材のような作品でした。映画『MINAMATA』感想です。  1971年、アメリカの写真家ユージン・スミス(ジョニー・デップ)は、数々の報道写真の功績も過去のものとなり、今では酒に溺れて絶望する日々を送っていた。そんな折、日本のCM出演の依頼があり、通訳のアイリーン(美波)と出会う。アイリーンはユージンに、日本で問題となっている水俣病について、現地の水俣に訪れて撮影取材をして、世界にその事実を報道してもらいたいと依頼する。ユージンはアイリーンと共に水俣を訪れ、公害に苦

映画『最後の決闘裁判』感想 現代まで続くクソ価値観への批判

 男性マッチョイズム、女性蔑視がいかにクソであるかを描いた傑作。映画『最後の決闘裁判』感想です。  1368年の中世フランス、騎士のジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は、王のために各地で戦う歴戦の勇者。幾度となく修羅場を共にしたジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)とは、戦友同士として信頼し合う仲だった。だが、2人が仕えるアランソン伯爵ピエール(ベン・アフレック)は、直情的なカルージュを嫌い、ル・グリを信頼し、重用していた。カルージュの苛立ちは、ピエールと共にル・

映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』感想 園子温監督の次回作にご期待ください。

 2021年のベスト映画を決めるのは難しそうですが、ワーストはぶっちぎりで確定です。映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』感想です。  サムライタウンの銀行を襲撃したヒーロー(ニコラス・ケイジ)は、強盗に失敗して街を牛耳るガバナー(ビル・モーズリー)に捕らえられ、投獄されていた。  ある夜、ガバナーのお気に入りの娘であるバーニス(ソフィア・ブテラ)たち3人が、ガバナーの支配から脱走して、ゴーストランドと呼ばれる禁止区域で消息を絶つ。  ガバナーはヒーローの鎖を外し、自由

映画『空白』感想 辛くとも遺された人々の時間は続く

 邦画の傑作が続く2021年でも、上位に位置する作品。映画『空白』感想です。  漁師の添田充(古田新太)と、中学生の花音(伊東蒼)は、父娘2人暮らし。粗野で自己中心的な添田は娘の話を聞こうとせず、花音もそんな父親に怯えて何も言えずに過ごしていた。  ある日、スーパーの化粧品売り場で花音は万引きを疑われ、店長の青柳直人(松坂桃李)に事務所に連れていかれる。花音は店から逃げ出し、青柳は花音を追いかけるが、道路に飛び出した花音は、乗用車に跳ねられて倒れたところをダンプの下敷きとな