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拙者 毎週ショートショートnote

「自然派冷や麦」
暖簾を潜ると、身なりを整えた怪人たちが立ち働いている。
いい店だ。震える目がそう判断した。
右手を突き上げ「にうめん」
そう宣言すると、さっき沼から上がってきたばかりの怪人が大口を開けた。
「おっさん、にうめんは隣だ」
指の間にびっしり張りついた水かきで、顔の前の空気を思い切り引っ掻きやがった。
拙者は再び暖簾を潜っていた。
いい店にはなかなか当たらないものだが、当たったとて、こんなに注文が至難とは思ってもみなかった。
看板の副題に「怪人制御冷や麦」
看板に偽りはない。

とぼとぼと歩くほども歩かずに、隣の「にうめん」の暖簾を押した。
AIが描いたピンクのお姉様方が、エプロンだけを着けてお出迎え。
副題は「あなたににうめん」

まさか、にうめんでぼったくられるとは。2杯も食っちまった。
しかし文句は言えぬ。振り向けば「五千円」と確かに表記があった。
どうして見ぬふりをしたのかは拙者でも想像はつく。

隣の「七草粥の店」がやさしい。
       410字

たらはかに様
今週もよろしくお願いいたします。


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