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平成に存在した女子寮の話#9-外泊について

私が20年前に暮らしていたH寮。普通の女子大生の生活ではありえない外泊にまつわるルール。門限が大変厳しいことはすでに語ったが、外泊についてもどんな箱入り娘だ!というようなルールがある。もちろん、門限に遅れそうなので、「今日外泊します!」という電話一本でなんとかなるようなことは絶対にない。外泊の基本ルールはこちらだ。

① 外泊は月2回まで(ただし、1回生の4月中の外泊は禁止)

② 事前に外泊届(親の印鑑&サイン入り)を提出のうえ、許可が下りたら可

③ 帰省も外泊にカウントする

女子大生の外泊がたったの月2回!もう一度言う。外泊できるのは月2回までだ!しかも、どんなにホームシックになろうが1回生は4月中寮の外で眠ることは許されない。この期間4階の比較的電波が入りやすいエリアで、家族に弱音を吐く1回生が続出。ちなみに、私は実家を出たくて出たくてたまらなかったタイプの人間なので、多少の規律の厳しさや共同生活の窮屈さにストレスを感じながらも、でも実家を出れてラッキー!という薄情な感じだった。この月2回というのも計画的に取得しなくてはならなくて、サークルや部活の合宿も、課外授業のための外泊も、帰省だってこの2回に含まれる。サークルや部活レベルだと特例は出なかったと記憶する。試合に出れません!なんてことが起こらないように、余裕を持たせておいたら、月2回を使い切らずに次の月へ・・ということがほとんどだった。スマホのパケット代みたいに次の月には繰り越せないのだ。

そして、最大の難関が「外泊届」である。これには、まず親のサインと印鑑が必要であった。なので、郵送で外泊届を送って、署名捺印後に返送してもらうか、もしくはFAXもOK。20年前とはいえ、FAXである。ミレニアムを越えてFAX。うちの実家は私の外泊届のためにファックスを感熱紙のやつからA4のコピー用紙が入るやつに新調した。この点、実家には非常に感謝している。ちなみに、外泊届に自分でサインして三文印を押すのは禁じ手である。たまに、返送されてきた封筒を見せろと言われたりもするのだ。そして、親の印鑑があればOKかというとそうでもなく、寮生⇒寮監⇒学生課にまで稟議がまわされ、最終的に学生課課長の決裁が降りて、晴れて外泊OKとなる。親のサイン&捺印がFAXですぐに戻ってきたとして、提出から1週間は余裕を見なくてはならない。電話で「今日は外泊します!」なんてもってのほかで、2,3日前でも外泊は許されないのだ。ふと気づいたが、自衛隊とかよりも厳しいのではないだろうか。

外泊届には外泊理由を書かなくてはならない。「彼氏の家に泊まるため」というような直接的な内容はみんな自粛して書かなかったが、「学部の友人との交流を深めるため」くらいの理由でも許可は下りた。まあ、学生課の前に親の許可が下りてるわけだしな。そういえば、友人Sの部屋の先輩にSと同様にとてもかわいがってもらっていて、ふたりして先輩とSと私の3人で先輩の彼氏の家に泊まりにいったことがあった。この時、外泊理由になんて書いたかは全く覚えていない。先輩の彼氏の家で鍋をご馳走になり、私は初めて塊の鶏肉を包丁でたたいてミンチにして作った鶏団子を食べた。18歳にして初めて男の人の料理を目の当たりにした瞬間であった。

息苦しくもありつつ、毎日が(よく言えば)修学旅行状態なので寂しくはなかった。彼氏がいる人はつらかったようだが、私はそういうことに無縁の学生生活であったために、外泊についてはそんなに苦労しなかったな。


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