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【ショートショート】 『ルールを知らないオーナメント』

「エウレカ!」
 ここはマッタ宇宙論研究所。マッタ教授が叫び、助手はため息をついた。
「完璧だ。やはり宇宙はグラフだ」
 点を線で結んだものをグラフという。教授はかねてから宇宙が「木」と呼ばれるグラフだという説を唱えていた。この次元は木の先端の葉であり、力は枝で説明される。
「でも余剰次元を離散モデルで説明っていうのは…」
 教授は微笑んだ。
「テレビ画像だって独立した画素が裏で繋がっている。あれと同じだ。葉の部分に物理量を設けて問題を解決した。表のクリスマスツリーを見て思いついたのだ。素粒子とは、意思を持ってルールに従うオーナメントだと考るのだ」
 意思という言葉に助手は唖然とした。「それって理論の先送りでは…」
「クリスマスなんだし多めに見なさい」
「でも計算上、光子がルールに従いませんね」
「光子は…ルールを知らなかったんだ」
「だめですよ。ちゃんと説明しなくちゃ」
 教授は呻いたが、突然ポンと手を打った。
「サンタが吊るしてくれた」

#毎週ショートショートnote

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