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「このペンを私に売ってみろ」あなたはどうする? 映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

★★★★☆(満足度:四つ星)

<あらすじ> 証券会社に就職してすぐ「ブラックマンデー(世界的株価大暴落)」によって失業してしまったジョーダン・ベルフォートは、研修で培った売り込みノウハウを活かして、ジャンク株を扱うブローカーになり再起を図る。

ペンを売るのに、ペンの説明はいらない。

仕事に関わらず誰かを説得しなければいけない機会ってありますよね。その中でもモノを売るのは一番難易度が高いです。他人ならなおさら、ましてや売り物が “クズ” ならば正直お手上げです。

たったの10年で年収4,900万ドルを稼ぐ経営者に登りつめたジョーダン・ベルフォートは実在の人物。お手上げなクズ株でも巧みな話術で売りさばく反則に近い強引な手法を用います。詐欺まがいな強引な部分は問題ですが、そのテクニックに隠されている「相手を説得する本質」がとても重要です。

本質を理解しているのかを判断するためにジョーダンが用いた質問が「私にこのペンを売ってください。」です。「このペンは・・・・」とペンの説明をはじめるのは不正解。

正解はペンが必要な状況を作ること。需要と供給が成立するための「質問」をすることです。

今では世界中の企業で面接で用いられている質問らしいのですが、映画の中で正しい回答ができたのがハーバード大学の優秀な卒業生でもなく、ウォール街のエリート証券マンでもなく、なんと麻薬の売人。その男の回答は映画を見て確かめてください。

クズ株を売りさばく1,000人の集団を作った男

ジョーダン1人が凄腕でも会社として大きくすることはできません。私は何よりもこの映画で興味を惹かれたのは、自身と同じ仕事ができる集団を作り上げたことです。

現代ではインターネットの力で、一人当たりの生産力は上がり、少人数で莫大な利益をあげる企業も多く存在します。ですが、映画舞台である1990年代は人力で電話がメインの通信手段。優秀な人材を多く育てることが成長に不可欠なのですが、彼は社会的に“優秀”と呼ばれる人たちを一切使いません。

麻薬の売人をはじめとする社会的にクズと呼ばれる創業メンバーは、ジョーダンの作ったメソッドに従って育ち、またその後輩たちが教育され、最終的には1,000人規模の組織に成長します。重要なのはメソッドであり、さらにそれを言語化し、マニュアル化し、クズでも優秀な人材に育て上げたジョーダンは凄腕のメンターとも言えます。

量産化できることの価値

仕事をする端くれとして、近頃の私は飲食店に対する視点が変わってきました。そこでしか食べることのできない人気店よりも、どこでも美味しい食事ができるチェーン店に対する評価です。優秀な人材を育てることができる人に対する評価もそれと同じです。

質の高いモノを安定的に、継続して提供できることがどれだけ難しいことか。もちろん、そこでしか食べられない希少性も重要です。ですがその価値を享受することができるのは限られた人だけ。1日100人しか食べられない食事よりも、100万人の方が多くの人を幸せにできます。(質は別として)

ジョーダン・ベルフォードは言いました「金を持てばいい人間になれる」と。不愉快な愚行は別として、多くの人を幸せにしたいという純粋な気持ちを持っていたんだと思います。少なくとも自分の育てた社員1,000人とその家族に対しては。でなければ10年という短期間での大躍進を、野心だけではできなかったかもしれません。

映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」はNetflix(ネットフリックス)で鑑賞できます。(2017年8月現在)


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