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茶湯からの、便り 十一

恵みの雨
と雨を嬉しく思えるようになったのはいつからだろう
草木がふわぁ気持ちがいい〜お水美味しい〜と
喜んで見えるようになり
雨水を含んだ苔が美しく見え
木や葉に留まる雫を宝物を発見したように見つめるようになったら
雨が楽しくなった

今日のお茶杓のごめいは何にしようかと思いながら
調べていると菜種梅雨という言葉に出会った
菜の花咲く季節に連日降り続く雨とのこと
連日の雨ではないから駄目か
とおもいながらも
季節のほんのちょっとした変化を感じとり
言葉にした昔の日本人の豊かさにまたため息が漏れる


今日の水入れは備前の焼き物だった
土のような岩のような水入れの表面には苔のような煤のような釉薬が一部に施されている

"先代はあんまり好きじゃなくて使わなかったのよ
ほら汚いでしょう?
侘びっていうかね"

"確かにお母さまはこう華やかなものがお好きでしたものね"

汚いか
確かにそうも言える
だけれど
豊かなものの溢れる世の中に生きる私には
その貧しさのような艶やかでない水差しが
とても美しく思えた

いまの時代における
侘び寂びの美しさとは
なんだろうか

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