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第93回 トップガン マーヴェリック(2022 米)

 このレビューも『トップガン』を最後に長く止まっていました。色々と約束を破り、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

 復帰作は『トップガン マーヴェリック』でお送りします。Netflixで配信が始まったのでやるなら今だと思ったのです。

 続編が作られるという話が出来ては流れ、35年越しについに作られました。世界の待ち望んだ続編です。案の定歴史的な大ヒットを記録しました。

 すっかり老いたトム・クルーズ演じるマーヴェリックが若い衆を引き連れてインポッシブルなミッションに挑みます。グースの息子まで連れて!

 続編として、BL映画としては言う事無しの出来です。腐の皆様が何回見たか比べあったのですから下の口は正直という奴です。

 ですが、単体の映画として見た場合私は言いたい事が沢山あります。そこはやはりもっと早く作るべきだったと思うポイントです。

 私は手放しにはこの映画を絶賛しません。悪い所ははっきりと悪いと言います。その上でこの映画は大切な一本であります。

トップガン マーヴェリックを観よう!

Netflixで配信があります。AmazonとU-NEXTでは有料配信です。

真面目に解説

トムの悪い病気

 前作が作られた当時、トムは若手でした。二枚目が綺麗なお姉ちゃんを侍らせておやっさんや仲間と一緒に栄光を勝ち取る。そのようなトム・クルーズ映画が量産されたのです。

 そこまでは良かったのですが、いかにトム・クルーズでも歳を取るわけです。なのにトムはこの若手だから許されるこのフォーマットに固執していて、果たして本作でも貫いてしまいました。

 この映画の最大の欠陥はトムのナルシズムです。私はこの映画でいい加減トムが老いを受け容れてくれるものだと期待していました。この点では裏切られた気分です。

 トム・クルーズ映画をもう一本選ぶならやはり『ハスラー2』でありましょう。あの映画でトム・クルーズの演じたヴィンセントは、前作の『ハスラー』から25年が経過してすっかり枯れてダンディになったポール・ニューマン演じるエディに導かれる立場でした。

 なので私はマーヴェリックがエディの立場を担う映画を期待しました。賛同者は多いはずです。ところが蓋を開けてみればマーヴェリックは未だにヴィンセントの気分で居るのです。

 チビ仲間のロッキーでさえ世代交代したというのに、あまり褒められない行為です。

 まだ当分はこの路線で押し通す気なのでしょう。しかし、どこかで限界が来ます。いつか老いを受け容れて、俳優として一皮むけたトム・クルーズを見られる日が来るのを祈るばかりです。

過熱した自己顕示欲は危険な領域に突入する

 しかしながら、OPは見事でした。お馴染みの『Danger Zone』に乗せて空母から次々飛び立つ映像は明らかに前作を踏襲していますが、着艦シーンも盛り込まれているのが個人的には高得点です。

 空母から飛行機を飛ばすのは難行ですが、実は離陸より着艦の方がずっと難しいのです。空母の甲板は数百メートルに過ぎないので、甲板にワイヤーを渡し、機体からフックを出して引っ掛けて無理矢理止めるのです。

 発着クルーの手際も気持ち良く、何だかんだと言っても男の子が喜ぶ物が分かっています。F1マシンが走るのは格好良いですが、ピットクルーの早業にも興奮するのが男の子なのです。

クルーズさんのモハーヴェベース

 あの青春の日々を終えたマーヴェリックは大佐に昇進していますが、あの歳で大佐というのは本来あり得ません。

 一般に軍隊では昇進して何年か経って更に昇進できない場合は予備役(クビ)になります。将軍や提督が余って困らないようにする仕組みです。マーヴェリックはトム・クルーズ映画特有の超法規的存在である事をのっけから示しているのです。

 しかも、砂漠の中に隠れ家的な格納庫を持っています。P-51(トムの私物!)と多数のバイクが格納され、男の夢もいいところです。前作同様にカワサキのバイクに乗っています。つまり、他のは飾りです。

 写真が一杯貼ってありますが、その殆どは亡き相棒グース(アンソニー・エドワーズ)との写真なのが泣かせてくれます。

 前作のラストにドッグタグを海に捨ててトラウマと決別したのは形だけで、マーヴェリックの魂は未だにグースと共にあります。これについては後にしましょう。

 そして、マーヴェリックはテストパイロットを仕事にしています。しかも速度記録に挑んでいるのです。これは命が惜しい人間には任せられない危険な実験なのです。

 生きて帰って来たバート・マンローは幸せ者で、速度記録というのは乗り物が何であれ、記録達成の日が命日になってしまうのが日常茶飯事です。

 だとしても、偉い人の妨害を制止してマッハ10を越える速度で飛んでしまうのは無茶苦茶です。だって、現実の速度記録はマッハ3です。ぶっちゃけこれ以上は人体が耐えられません。

 いっそ宇宙飛行士になれと言っている人も見かけましたが、それは無理です。マーヴェリックは協調性が無いので宇宙飛行士には全くの不適格です。

 本作はこの調子で、マーヴェリックが爺さんだというのに不可能を可能にし続ける事でストーリーが進むのです。

ちょっとはオブラートに包め

 さて、速度記録を達成したものの機体を駄目にしたマーヴェリックは、トップガンに戻されます。危険な任務を負った後輩を教育する為です。

 マーヴェリックを選んだのは大将まで出世したアイスマン(ヴァル・キルマー)でした。キルマーはトム・クルーズと不仲で、続編が出来ないのはそのせいだという噂もありましたが、本作の演技はそのような不名誉な噂を吹き飛ばすベストアクトでした。

 ともあれ、前作の山場はドッグファイトでしたが、今回のメインミッションは爆撃です。とある「ならず者国家」が非合法なウラン濃縮プラントを建設したので、爆撃して破壊しろというのです。

 ターゲットはミサイルが守っているので、レーダーで検知出来ない谷間を飛んで常に地面すれすれに飛んで小さな穴に爆弾を命中させないといけません。こんな無茶が出来るのは若い頃のマーヴェリックしか居ないというのがアイスマンの判断です。

 ところで、何処の国がターゲットなのかは明示されませんが、アメリカにならず者呼ばわりされ、濃縮ウランを作る国と言うと決まっています。しかもその国はトムキャットを保有しているのです。

 ミリタリーに少し親しんだ人にとってはほぼ名指しです。私は劇場で笑いをこらえるのに必死でした。

遅すぎたポイント

 トップガンの続編構想は前作の公開直後からありました。しかし、トムが当初は嫌がっていた事や、監督のトニー・スコットの自殺などのトラブルが重なってこんなにも遅れた経緯があります。

 当然時代に合わせて脚本は変化しますが、時代の流れというのは時に残酷で、コントロールが出来ません。

 出来た以上遅すぎる事は無いと言いたいところですが、一つ無視できない問題が発生しました。トップガンの事実上の主役、F-14トムキャットの退役です。

 トムキャットは2006年をもって米軍から退役してしまい、後継機のF/A-18ホーネットに置き換えられました。本作の主役はホーネットですが、公開時点ではホーネットも旧型化し、自衛隊が最近やっと導入したF-35ライトニングが主力になりつつあります。

 後続の機体がトムキャットと決定的に違うのは、複座ではなく単座になってしまった事です。これは製作が決まった直後から大きな議論を呼んだ問題点です。複座機が主役だからこそトップガンは名作たり得たのに、続編で単座機になったら駄目じゃないかというわけです。

 しかし、これは脚本のファインプレーで切り抜けました。見事です。

黄金のカキタレ

 さて、トム・クルーズ映画に欠かせざる存在がストーリーに何ら寄与しないカキタレです。前作ではチャーリー(ケリー・マクギリス)がそうでした。

 ニコール・キッドマン、キーラ・セジウィック、メアリー・エリザベス・マストラントニオこのどうでもいい役どころが出世作になった女優は多いので、居なくてもいいのですが映画界の発展の為には必要なポジションです。

 さて、懐かしのトップガンに戻ってきたマーヴェリックは基地御用達のバーを訪れます。店の主は見慣れない美熟女、ペニー・ベンジャミン(ジェニファー・コネリー)です。しかし、マーヴェリックは彼女を知っています。

 初見で気付いた人は殆どいないでしょうが、彼女は前作に名前だけ登場します。マーヴェリックとグースが基地司令のお嬢さんをかすめて飛んだとスティンガーに叱られていました。その基地司令の娘さんが彼女です。

 ペニーはアメリアという娘を連れて女手一つでバーを切り盛りしていて、やっぱりマーヴェリックと良い仲になりますが、やっぱりストーリーには何ら寄与しません。

 コネリーと言えば天下のオスカー女優です。トム・クルーズはオスカーは持っていません。本作も音響賞しか取れませんでした。ラジー賞は3回も取っていますけどね。

 カキタレ枠もグレードアップしたというわけですが、マーヴェリックとベッドでいちゃつくシーンはあってもおっぱいさえ出しません。コネリーは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』ではいきなり尻を出したというのにお高く留まってます。もっとも、今更見たいかと聞かれると困っちゃいますが。

 細かすぎて伝わらないオマージュはこの手の忘れた頃の続編には必須ですが、どうせならグースの奥さんのキャロル(メグ・ライアン)を出すべきだったと私は思います。チャーリー?駄目ですよ、あんな縁起の悪い女。

 隠してもしょうがないのでハッキリ言いますが、前作から続投したのはマーヴェリックとアイスマンだけです。これには流石にがっかりしました。

機体もライバルも若い

 ミッションはホーネットが2ペア、4機の編隊で行われます。各ペアはレーダーの付いた複座機が後ろからロックオンをして、前の単座機が爆撃するという役回りです。

 アメリカ海軍の精鋭が揃えられますが、トムは相変わらずのナルシストなので、若い衆を立てないで結局自分で全部美味しい所を取ってしまうのです。

 とは言え若い衆も最低限の見せ場は用意されます。引き立て役だとしてもトップガンに出られるのなら嫌と言う若手俳優はいないでしょう。

 リーダー格のハングマン(グレン・パウエル)は僚機を見捨てるという悪評があるあからさまな悪役ですが、敵機を撃墜した事があるので実績がずば抜けています。アメリカは戦闘機を運用できないような貧乏な国としか戦争をしないので、腕と幸運がないと敵機撃墜の手柄は立てられません。

 お国の一大事だというのに僚機に嘘をついて出し抜こうとしたりとヒール全開ですが、パウエルは若衆の中では一番格上でエクスペンダブルズでもあるので、美味しい事になります。

 ハングマンの僚機が紅一点のフェニックス(モニカ・バルバロ)と、パイロットにあるまじきメガネのボブ(ルイス・プルマン)のペアです。

 女性パイロットが居るのが時代です。現実には肉体面の壁があるので一線での活躍は厳しいとされていますが、フェニックスはハングマンに事あるごとに女扱いされて嫌がりつつちゃんと仕事は果たします。ダイバーシティとはこういう事です。

 ボブ演じるプルマンは午後ローでよく見かけるビル・プルマンの倅です。女とメガネという一見怪しい組み合わせの2人が一番堅実に仕事をするというのが笑わせます。

 もう片方の複座のペイバック(ジェイ・エリス)/ファンボーイ(ダニー・ラミレス)のペアと、単座要員のコヨーテ(グレッグ・ターザン・デイヴィス)が加わって一軍メンバーを結成します。予備パイロットが他にもいるのですが、彼らに至っては完全に斬られ役です

メインヒロイン登場

 マーヴェリックは飲み代を払えず、ペニーの店のルールに従って店を放り出されます。その直後に誰かがジュークボックスの電源を切り、ピアノを弾き始めます。

 曲は『火の玉ロック』。そう、ここでファンの期待を一身に背負うグースの息子ルースター(マイルズ・テラー)の登場です。

 トップガンにストーリーなど期待するのは間違いです。ストーリーらしきもののほぼ全てはマーヴェリックとルースターの痴話喧嘩に費やされます。それでいいのです。

 ルースターは色々といきさつがあってマーヴェリックを恨んでいます。それもいいのです。BL的映画鑑賞においてはそれが大事なのです。

担当者の遊び

 私は吹替派です。邪道だなんて言わないで下さい。あなたは淀川先生を邪道だと言えるんですか?仲良くしましょうよ。

 本作は吹替のキャスティングにかなりの遊び心が見えます。そして、昨今の情勢に沿って若手は吹替畑ではなくアニメ畑の人が中心です。

 本来吹替とアニメは全日本プロレスと新日本プロレスのように没交渉ですが、最近は話題作の吹替にアニメ畑の声優が起用される傾向があります。

 アニメ畑の声優は即ちアイドル声優なので、固定ファンを狙ってやっているのでしょう。吹替畑の声優の多くが通った新劇俳優から声優になるルートが狭まっているので、時代の流れとも言えます。

 例えばエース格のハングマンの吹替は中村悠一、ルースターが宮野真守という組み合わせはガンダムが好きならにやりとするはずです。ルースターは俺がホーネットだとか言うタイプではなく、むしろ機体の性能の差が戦力の決定的差ではない事を証明する役なのも笑いどころです。

 フェニックスは内田真礼で、後ろのボブが武内駿輔というのは完全にアイドルマスターを狙っています。武蘭子です。この映画にこの取り合わせは大西由里子が大喜びです。

 そして、内田真礼が居れば弟の内田雄馬もキャスティングされるのが常で、彼はファンボーイ役。思えば納谷兄弟や大塚父子の共演など滅多に無い事でしたから、明らかに分かってやっています。

 私が特に気に入ったのがペニーの娘アメリア役の水瀬いのりです。母親に輪をかけてどうでもいいちょい役に起用されたのは何故か?だってこれはトップガンです。

 彼女の最大の当たり役は変な紐と大泉洋口調で有名な女神様なのです。君はトップガンにはなれないね。ヘリも出て来るのでエアーウルフ要素もカバーしています。

 ですが、この遊びで最も重要な取り合わせはマーヴェリック×アイスマンです。森川智之×東地宏樹です。このキャスティングは『ブロークバックマウンテン』に横滑りしました。担当者は何もかも分かっていたに違いありません。

わかちゃった

 アニメついでにもう一つ。本作は『ウマ娘』とのコラボが行われました。マヤノトップガンが出ているので、トム・クルーズを呼ぼうというわけです。キャラクターデザインが明らかに馬ではなく映画を向いています。

 本物の競馬に明るくない人は無邪気に喜ぶコラボでしたが、私はウマ娘にありがちなどす黒い歴史修正主義が見えて苦笑してしまいました。

 マヤノトップガンの相棒と言えば田原成貴です。トム・クルーズと同じくらいの身長(騎手としては長身)と甘いマスクで女性ファンから絶大な人気を誇り、妥協なき騎乗スタイルで勝負師特有の危険な香りを漂わせていたので馬券師のおっさん連中からも信用されていた腕利きです。

 他の乗り物でもそうですが、この両陣営から支持されるというのはかなりのレアケースです。稀に見る傑物なのは確かなのです。

 惜しむらくは度を越した素行不良で、若手時代から物議をかもすレースが多く、調教師転身後も不正行為や鞭で記者を殴るなど問題が多く、競馬界に居られなくなって暴露本を書き、ついには悪い薬で逮捕され、同居『男性』へのDVで逮捕されて別荘に入るという破天荒ぶりです。

 勿論、本noteで一番大事なのは最後の件です。半世襲制の競馬サークルで血縁を持たない美少年が生き残っていくためには、何でもしなきゃいけなかったのでしょう。もっとも、誰でも名前を知っている騎手のサラブレッドもそっちの噂が絶えませんが。

 もとよりウマ娘はあの世界観にそぐわない競馬の過酷なリアルをオミットするので保守的な競馬ファンから否定的な意見も少なくないのですが、トム・クルーズを呼んだのはあの世界に居てもらっては困る田原のイメージを消す為なのが明白です。

 ですが、トム・クルーズと田原にどれ程の違いがあるのでしょうか?どっちもゲイっぽいイケメンで歳も身長も同じくらい。悪い薬にハマるか宗教にハマるかの違いしかありません。私のようなひねくれた競馬ファンは却って囃し立てるので逆効果だと思います。

 田原の名誉の為に言うと、彼は最近は東スポに入社して更生の道を進んでいます。やった事の責任は負うのが道義というものですが、償いをした罪は許さるのも道義です。問答無用で消し去るなどもってのほかです。

人はおまけ

 本題に戻りましょう。役者が揃ったので訓練が始まります。やっとマーヴェリックがバイパーやジェスターの役回りに入るわけですが、トップガンの売り物は戦闘機です。身も蓋もなく言えば、主役は戦闘機で人間は小道具に過ぎません。

 戦闘機の各種の機動(マニューバ)には固有名称が付いていますが、特に本作で特にクローズアップされるのが「コブラ」です。前作ではスピードブレーキと呼ばれていた、機首を一気に上げて減速するあれです。

 本作ではどいつもこいつもこの機動に頼ります。確かに見栄えが良く、航空ショーでは一番喜ばれるのですが、速度が一気に落ちるので実戦ではおっかなくて使えない曲芸です。

 作りでもそれはちゃんと分っていると見えて、基本的に一対一でしか使われません。もう一機居ると良い的になってしまいます。

 前作では使わなかったCGに頼るようになったのは少し残念ですが、前作の時代には無かった新兵器が画面に花を添えてくれています。フレアです。

 これは見た通りの火の玉を出す装置で、アフガンで爆弾の代わりに使ったというので非難を浴びていましたが、本来はミサイルをかわす為に用いる物です。

 というのも、ミサイルのホーミングというのは機体の熱を追いかける物なので、フレアが発射されるとミサイルがつられてそっちへ行ってしまうのです。

 フレアが飛び交うドッグファイトのシーンは壮観で、色々な粗はどうでもよくなってしまいます。

俺がいちばんセクシー

 訓練は難航します。そもそもミッションが難しすぎるのです。その上フェニックスとボブが機体を駄目にする事故が発生し、妥協が模索されます。

 しかし、マーヴェリックが勝手に機体を盗んで若い衆に出来なかった訓練をやってのけ、ハングマンを押しのけて本番にも出撃します。

 ハングマンの顔はちゃんと立てるように計らわれましたが、先述の通りこの辺りがトム・クルーズの残念なナルシズムの発露です。

 結果としてトムキャットが飛ぶところも観れたのでリカバリーは上手いことやったのですが、もっと方法があったはずです。

 最後にもう一度言いますが、トム・クルーズはまだ成長できます。老いを受け容れた時がその時です。

陽気な親父、陰気な息子

 最後にもう一つ、トップガンをトップガンたらしめる要素があります。そう、みんな大好きビーチバレーのサービスカットです。世界中の御婦人とゲイが欲情したのは御存じの通りであります。

 本作でも一応この伝統は踏襲され、ビーチバレーならぬビーチアメフトが行われます。ボールは二つというのがちょっと意味深ですが、このシーンが非常に残念です。

 第一に、画面が暗すぎます。前作ではカリフォルニアの能天気な太陽の下でどいつもこいつもオイルで身体をテカらせながらいちゃいちゃして、とても馬鹿っぽくて素敵でした。

 しかし、本作のビーチシーンは明け方なので妙に薄暗く、色気がありません。せっかく良い身体の若い衆を集めたというのに無駄遣いもいい所です。失望しました。

 そもそも、本作は前作に比べてかなり陰気です。画面は薄暗く、陽気で馬鹿っぽい(誉め言葉)フォルターメイヤーサウンドも鳴りを潜め、チームはぎすぎすしています。思えばハイファイブも本作では無しでした。

 そこへいくと前作は陽気でした。全てが暗転したのはあのビーチバレーの直後、マーヴェリックがチャーリーと怪しい仲になってからです。目的意識の違いか、時代の違いか、いずれにしても、見比べる人が多かったのは当然なのかもしれません。

BL的に解説

コブラという射精
 前作のレビューでは軍事史上初の空戦理論とBLの融合を行いましたが、その観点から言うと本作の連中は非常にホモ臭い飛び方をしています。

 コブラ機動が多用されます。ケツにつかれるととりあえずコブラで相手のオーバーシュート(追い抜き)を誘発しようとするのです。

 これは見栄えを重視していて現実的とは言えません。というのも、速度エネルギーを一気にゼロに近づけてしまうこの機動はドッグファイトに使う技ではありません。確かに後ろの敵機はやり過ごせますが、その場に止まったのではいい的になってしまいます。しかも機体を傷めます。

 しかし、BL的に見るとこれはかなりエロい機動です。ぐっと機首を上げ、敵を先にイかせる行為ですから。

 三島由紀夫先生は生前自衛隊の訓練に盛んに参加し、細長いF-104に乗ったのに大変に感動して一本こしらえました。そこで先生は戦闘機を「銀色の鋭利な男根」と呼び、急上昇し、マッハを越える行為を「射精」に例えました。まさにホモは文豪です。

 とすればコブラはトコロテンです。敵がぶち込んできたところを機体を上げながらケツを振り、敵をもイかせているのですから。

 おまけに本作ではフレアをボンボン撃つのも意味深です。前作よりもホットなケツが表現されているのです。そのホットさはミサイルをも狂わせ、燃えさせてしまうのですから。

集団戦とは乱交なり

 僚機を見捨てる見捨てないという話しも重きをなします。己の手柄の為に仲間を見捨てるのは勿論褒められない行為で、もし露見すれば生涯の不名誉です。

 ハングマンは僚機を簡単に見捨て、ルースターは決して僚機を見捨てません。これは重要な差です。自分の為に飛ぶのか、仲間と国家の為に飛ぶのかの違いと言い換える事も出来ます。確かに敵を撃墜するのは偉い事ですが、自分一人が英雄になろうという了見の男は決して尊敬されません。

 例えば、あのヘルマン・ゲーリングはナチスの偉い人である以前に先の大戦の撃墜王でもありました。かのレッドバロンの後任者ですから大変な大物です。

 ゲーリングは撃墜王揃いの部下をまとめ上げ、隊長としての責務を果たす方法をあれこれ考えて、自分の手柄を捨てる事にしました。

 敵の編隊に自ら飛び込んで敵機を散らし、後に続く仲間に各個撃破させる戦術を用いたのです。ドッグファイトが一騎打ちからチームプレイに進化した歴史的瞬間です。この戦術によってゲーリングの撃墜数は伸び悩みましたが部隊全体の戦果は増え、ゲーリングは部下達に認められる存在になりました。

 敗戦時には皆で共謀して機体を破壊し、演説をぶって涙ながらに全員でシャンパングラスを叩き割って別れたのですから、スケベで陰湿なヒムラーやゲッペルスとはえらい違いです。

 更に言えば、ゲーリングはちょび髭伍長にケツを差し出して尚部下達との絆を忘れませんでした。部下だったユダヤ人をゲシュタポから助け出して匿ったのです。彼はゲーリングの恩に報いる為、戦後もイスラエルへの移住を拒んで西ドイツで余生を送ったとされています。

 例え道を誤ったとしても、仲間の絆は絶対であったという事を示す美談です。薄い本が晩年のゲーリングの腹のように厚くなります。

 話がそれましたが、ドッグファイトとは多対多が原則であり、単純な技能で決着するのではなくケツ束の強い方が勝つのです。ともすれば、トップガンとは仲間の絆を讃える映画なのです。

熟トムは左だ!

 本作は腐った人達にも評判を取っていますが、マーヴェリックを受けにする人が多すぎます。これは気に入らない流れです。森川ボイスでいつも最強のトム・クルーズが受けのわけがないでしょうが!

 私は掘られる→掘る→掘らせるというリアルゲイのライフサイクルを尊重します。従って、前作のマーヴェリックは総受けですが本作のマーヴェリックは攻めです。そして、続編の続編が作られた頃には受けになるはずです。

 従って、この後のレビューはマーヴェリック攻めを前提に進行します。

グース×

 いきなり前提を破壊してしまいましたが、何度も言っている通り若い頃のマーヴェリックは受けです。明らかにグースのヘタレ攻めでした。

 そもそも前がマーヴェリックで後ろがグースなのですからこれは物理的に決まっている組み合わせです。私はこのような要素を大事にします。

 マーヴェリックにとってグースと飛んだ日々こそが青春でした。事あるごとにグース、グース、グース。マーヴェリックの心にはあの輝かしき日々の思い出が突き刺さって抜けずにいます。そして、それは生涯変わらないでしょう。

 それを証拠に、あの男の夢を詰め込んだ秘密基地には写真が一杯貼っていますが殆どはグースと撮った物です。

 真の男の夢は秘密基地でもなく、プライベート戦闘機でもなく、デカいバイクでもなく、互いの命を預けられる相棒なのです。そして、マーヴェリックは確かにその相棒をかつては持っていて、その思い出を大事に飾っているわけです。

 前作と本作の間のマーヴェリックの経歴は波乱に富んでいたのは確かですが、詳しく語られません。しかし、ペニーをホーネットに乗せた事がバレてボスニアに送られたという台詞から、早くにホーネットに乗り換えたのは確かです。

 これは何気ない一言ですが半端ではありません。軍用機にしろ民間機にしろ、プロパイロットのライセンスは機種別です。同じ飛行機というのは素人の発想で、特に戦闘機は機種によって全く違います。

 マーヴェリックはホーネットを熟知していて、ルースターはトムキャットが可変翼である事さえ知らなかったのが何よりの証拠です。トムキャットとホーネットはあまりに違うのです。

 つまり、マーヴェリックはグース以外の男と飛ぶのが嫌だったのです。これは相方を失った複座機乗りに多く見られる行動で、さもなければ飛びません。新パートナーと組むのは少数派です。マッハの境地に生きる男とはそういう生き物なのです。

 グースの愛したキャロルはマーヴェリックが飛び続ける事を願っていました。グースだってマーヴェリックが翼を捨てれば悲しむはずです。マーヴェリックは飛ばなければいけないし、グースの魂と共に飛び続ける運命なのです。そこはアイスマンやルースターさえも立ち入れない聖域なのです。

×ボンドー

 冒頭に登場した実験チームはマーヴェリックが好きすぎます。マーヴェリックが上司の言う事を聞かないのはいつもの事ですが、巻き添えを食っているはずの彼らはマーヴェリックの熱心なファンであり、協力者です。

 予算がカットされて飛行中止を告げられたにも関わずマーヴェリックはマッハ10を目指して飛び立ち、止めにきた提督をチームは妨害してマーヴェリックを助けます。

 これは普通の会社ならともかく、軍隊だと下手をすれば不名誉除隊です。中々出来る事ではありません。

 特にリーダー格のボンドー(バシール・サラフディン)は100%の忠誠を誓っていて、完全に小姓です。マーヴェリックのマッハ10への挑戦を眺める彼の目は完全にメスです。

 そればかりかトップガンにも彼は同行します。ルースターに意地悪した予備連中にねちねちやるのも美しき主従愛という奴で、気持ちの良いシーンです。

 ボンドーはビーチアメフトにも率先して参加します。マーヴェリックの意図を完全に理解し、若い衆とも仲良くなれるのは相当なケツ物と言わねばなりません。

 出撃に際して最後に言葉をかけたのはルースターではなくボンドーでした。もう会えないかもしれないと弱音を吐くマーヴェリックに、感極まった声で「光栄です」と言って送り出すボンドー。若衆たちのそれとは違った大人のBLをギンギンに感じます。

 ボンドーがレーダールームでルースターの心配をしているのも大人の余裕です。俺の方がパイロットのマーヴェリックとの付き合いは長いというわけです。

 栄光のトムキャットで帰ってきたマーヴェリックを迎える為に大喜びで支度をするボンドーの姿は最高です。おまけに抱き合います。アイスマンのお株を奪うとは相当です。

 しかも、ボンドーは発着要員である事がここでハッキリします。これがどれ程大切な役目か考えてみてください。

 彼らが居ないとパイロットは飛べません。仮に飛ぶことはできても着艦は決してできません。つまり、彼らが受け止めてくれないとマーヴェリックとて死ぬのです。

 ボンドーの素晴らしい受けっぷりは必然だったのです。彼こそがマーヴェリックの命を預かる男なのですから。

提督連中もマーヴェリックに夢中

 マーヴェリックは爺さんになっても若い時代の反抗的な態度を改めていないので、提督連中からはことごとく嫌われています。

 しかし、考えてみてください。彼らはマーヴェリックと大体同年代、彼の全盛期を知っている男達です。

 問題児ですが凄腕で英雄のマーヴェリックは、彼ら凡庸な優等生連中には眩しすぎるのです。本当は憧れているのだと考えれば当たりの強さが説明できます。

×ケイン

 速度記録を止めにかかるケイン少将(エド・ハリス)は特に怪しいものがあります。エド・ハリスは『ライトスタッフ』や『アポロ13』にこういう事をやる役で出ていたので、この手の実験には理解がある方が自然です。

 なのに、ケインはドローンの時代が来るからこんな実験は無駄だと言い張り、唐突に計画を中止させるというあからさまな意地悪をします。

 そもそも、ドローン万能論は危険です。前作のレビューで説明しましたが、トップガンが設立されたのはミサイル万能論がベトナムでもろに裏目に出てしまったからです。それを知らないはずの無いの偉い人がこんな安易な事を言うのは不可解です。

 しかし、スタッフたちの妨害に乗じてマーヴェリックは飛び立ってしまい、マッハ10を達成して更に加速します。これは明らかにマーヴェリックの当てつけです。

 ケインは流石に「やるな飛行機乗り」なんて言っちゃいます。しかし、マッハ10.5まで加速してマーヴェリックは墜落します。生きているのはいくらなんでも無茶です。ケインもこれには複雑な表情を浮かべます。

 私はこれで何もかも確信しました。ケインはマーヴェリックが好きなのす。

 ケインは一応「ハンマー」というコールサインを持っていますが、ドローン万能論など唱えるという事はあまり腕の良い方ではないのでしょう。それだけに凄腕のマーヴェリックが眩しいのです。

 救出されたマーヴェリックにお説教しながら彼の輝かしい功績を読み上げ、挙句「普通なら少将になっている」とまで言います。褒め殺しというのはノンケの発想で、これは明らかにマーヴェリックへの崇拝の裏返しです。だって「議員は無理でも」と続くのです。これは明らかにやり過ぎです。

 そして、マーヴェリックにアイスマンが出したトップガン行きの命令を伝えます。つまり、彼がスティンガー枠です。貶すふりをして褒めちぎる芸風も、髪型も、完全に一致です。

 とすれば、飛行中止を命じたのは意地悪どころか親心です。マッハ10なんて無茶をして俺達のマーヴェリックが死んだらどうするんだというわけです。

 一方、この実験をやらせたのは明示はされませんがアイスマンでしょう。マーヴェリックの凄さをこの世で一番よく分かっているアイスマンは、マッハ10程度はマーべヴェリックには小走りだと思っていそうです。

 とすれば、ケインは負けを確信しているからあんな不機嫌なのでしょう。所詮自分はアイスマンには勝てないと内心で分かっているのです。ましてやグースには勝てようはずもありません。

 パイロットは絶滅するという言葉を最後に画面から消えたケインですが、実験チームが強く罰せられた様子はありません。それが自分に出来る最後のマーヴェリック愛の証明だとケインは思ったのでしょう。

×サイクロン

 トップガンの司令であり、マーヴェリックの後輩でもあるサイクロン(ジョン・ハム)はかなり冷たい態度でマーヴェリックをあしらいます。

 これは多分ジェスターやバイパーのせいです。彼らは事あるごとにマーヴェリックを引き合いに出してあれこれ言ったに違いありません。だとすればサイクロンがマーヴェリックを恨むのは当然です。

。サイクロンが核施設の攻撃プランをマーヴェリックに提案させるだけさせておいて、やるのは若衆だと後から言うのはやはりあからさまな意地悪です。

 しかも若衆の中にルースターが居るのは陰湿です。まともな司令官ならむしろルースターは避けると思います。僅かなメンタルの乱れが死に結び付くのが戦闘機パイロットであり、サイクロンはそれをよく知っているはずなのです。

 挙句グースが死んだのは事故だと結論付けられているのに、ルースターはどう思うか?などと言うのはやり過ぎです。この発言に至っては人間として間違っています。

 しかし、この後こんなにサイクロンが意地悪な理由が判明します。この任務にマーヴェリックを推薦したアイスマンをサイクロンはこの上なく尊敬しているのです。

 男でマーべヴェリックよりアイスマン派という人は彼の他にはジョニー・ロレンスしか私は知りません。ですが意地悪の理由はハッキリしました。典型的なホモのジェラシーです。

 サイクロンがアイスマンを尊敬してみたところで、アイスマンの目にはマーヴェリックしか映っていないのです。アイスマンも事あるごとにマーヴェリックマーヴェリックとやってサイクロンを知らぬ間に傷つけたのは明白です。

 だとすれば、サイクロンが教官を引き受けるか軍を辞めるかの選択を迫るのはNTRです。そう言われればマーヴェリックが断らないのを誰よりもよく知っているのがアイスマンで、そう言えば引き受けるとアイスマンはサイクロンに因果を含めたのでしょう。サイクロンがいくら何でも気の毒です。

 ビーチアメフトに嫌な顔をするのもケツの穴の小ささを物語ります。アイスマンはビーチでマーヴェリックと打ち解けたのですから、アイスマンイズムの後継者を自称するならむしろ自分が提案して一緒にやるべきです。

 実際これで若衆はケツ束を高めたのですから、サイクロンはジェラシーで目が曇っています。アイスマンは総受けなのでサイクロンはケツの穴が小さいのです。

 アイスマン亡き後にマーヴェリックをクビにしようとするのはもうホモジェラシーが危険な領域に突入しています。葬式でもマーヴェリックだけ特別扱いだったので、面白くなかったに違いありません。

 だからこそ敵を消すチャンスだとサイクロンは思ったのでしょう。永久に飛行禁止というのは銃殺刑よりもマーヴェリックを苦しめる宣告です。アイスマンから寝物語にマーヴェリック伝説を聞かされたことが今になって役だったわけです。

 マーヴェリックから羽根をもいだサイクロンは妥協してミッションを成功させようとします。しかし、既にマーヴェリックにガン掘りされてマーヴェリックイズムを注入されている若衆は不満そう。

 しかし、マーヴェリックは勝手に飛行機を盗んで自分の設定したコースを飛んで成功させてしまいます。そしてサイクロンはもうアイスマンは居ないからいつでもクビに出来ると脅しつつ、マーヴェリックを編隊長に任命します。

 きっとサイクロンは寝物語に聞いたマーヴェリック伝説を本気にしていなかったのでしょう。ですが目の前でそれを見て、アイスマンの気持ちが分かってしまったのです。

 例え当て馬に下がるのだとしても、愛するアイスマンを傷付ける事などサイクロンに出来ようはずがありません。サイクロンはアイスマンへの未練を捨て、自らがアイスマンになってマーヴェリックを守るケツ意を固めたのです。

 マーヴェリックとルースターがトムキャットを盗み出したという事実を真正面から受け止めたのはサイクロンでした。それは有り得ないはずの出来事なのに、マーヴェリックならやってのけるとサイクロンが一番信じていた証拠です。

 段々彼はアイスマンの気持ちが分かるようになってしまっているのを感じ、マーヴェリックへの遺恨が愛情に変質するのを感じたに違いありません。

 この期に及んでもオマージュをしようとわざとブリッジをかすめたマーヴェリックに、サイクロンはしょうがねえなあと言わんばかりです。この瞬間、サイクロンは意地悪提督からアイスマン二世へとステップアップしたのです。

 全てが終わった後、サイクロンはアイスマンの墓前でマーヴェリックに詫びます。そしてマーヴェリックは天国のアイスマンに捧げるホモセックスをおっぱじめるのです。

 「アイスみたいに泣け!俺のケツにつけろって言え!」

 マーヴェリックにケツを犯され愉悦の叫びをあげるサイクロン。こうしてケツの穴の大きいパイロットの守護聖人がまた地上に誕生します。それはキリストの復活にも似て、神聖にして荘厳です。

×ウォーロック

 マーヴェリックは後輩のサイクロンとは面識がありませんでしたが、堅物の副官ウォーロック(チャールズ・パーネル)とは面識がありました。

 吹替が楠大典なのが私のイマジネーションを掻き立てます。黒人の役が大変に多い人ですが、代表作は何と言っても『ブルックリン99』に出て来るゲイのホルト署長でしょう。

 彼は部下(性別不問)の心のやおい穴を掘り尽くした裕ちゃんクラスのカリスマであり、しかもライバルはトムのかつてのカキタレであるキーラ・セジウィック。この辺はキャスティングした人の念頭にあってしかるべきです。

 話しを戻しましょう。サイクロンは意地悪ですが、ウォーロックはマーヴェリックの腕を買っています。若衆を褒めて落とし、マーヴェリックを伝説のパイロットと紹介するのです。

 理解者として振舞ってマーヴェリックの気を引こうとしているのは明白です。グースの後カマにサンダウンなる面白黒人を選んだのを見ても、ボンドーを連れているのを見ても、マーヴェリックは黒人が好きなのでしょう。ウォーロックとしては上手くやれば俺になびくと思っていそうです。

 マーヴェリックがルースターと低空飛行をした挙句にコブラをかましたのでヒステリーを起こすサイクロンを後目にマーヴェリックを諭すのもウォーロック。ボンドーには権限がない以上、真の意味でトップガンでマーヴェリックの味方なのは自分だけだというアピールです。

 マーヴェリックとルースターが喧嘩しそうなタイミングでアイスマンの訃報を持ってきたのも中々です。喧嘩を避ける事が出来る。アイスマンの死が和解の糸口になるかもしれない。傷心のマーヴェリックが自分に靡くかもしれない。この役目はウォーロックには罰ゲームではなくご褒美です。

 また、サイクロンが妥協案を提示したのにそれをぶち壊してマーヴェリックが無断飛行を成功させた瞬間、ウォーロックは一瞬にやりとします。この一瞬がたまらないのです。

 ウォーロックはきっと戦場で一緒に飛んだのでしょう。だからマーヴェリックが不可能を可能にする男だと知っているのです。とすればサイクロンではなく、ウォーロックこそがアイスマンの後継者だったのかも知れません。

 空母でウォーロックはマーヴェリックにパイロットが君の天職だと優しい言葉をかけます。マーヴェリックはその時、ウォーロックに亡きアイスマンを見たに違いありません。

 撃墜されたマーヴェリックに救助を要請したのもウォーロックでした。そして、全てが終わったマーヴェリックにブリッジから柄にもないガッツポーズで祝福を授けるウォーロック。マーヴェリックと居れば心が熱くなるのです。

 その夜、マーヴェリックは熱くなった心と股間のミサイルを鎮めるためにウォーロックと夜間飛行に耽ります。かつてアイスマンも交えてそうしたように。

×ハングマン

 ハングマンは前作のアイスマンの強化版のような立ち位置です。コヨーテを小姓として従えているのも大概ですが、何かと言うとフェニックスに突っかかります。これは明らかに女は下等だと思っているタイプのホモです。

 それに、グレン・パウエルはエクスペンダブルズの一員でもあります。ガンナーやクリスマスの執拗ないびりに耐えてバーニーの攻め小姓に上り詰めた男なので、BL力が根本から違います。もっとも、あのステロイドを葛根湯のように常用する連中の中では彼はボブ枠だったのですが。

 そしてマーヴェリックは訓練初日に若衆をガン掘りしてプライドをぶち壊します。第1戦で下から飛び込むというのは正常位だとネコが上というホモリアルです。

 ハングマンはフェニックス/ボブ機に嘘をついて出し抜くという最低な戦術を取り、マーヴェリックに「それでも男か」と罵倒されます。

 そしてボブのケツを狙うマーヴェリックのケツから3連ケツでぶち込もうとしますが、マーヴェリックは太陽の中に逃げて行き、ハングマンは設定上死んでいるフェニックスに位置を聞くという醜態を晒した挙句いつの間にやらマーヴェリックにケツを取られてやられます。

 ルースターは僚機を守り、フェニックス/ボブは僚機に見捨てられ、ハングマンは僚機を見捨てたのに手酷くやられた。これは生意気な若者を屈服させるマーヴェリックの総攻め力の発露です。

 そんなハングマンだけにマーヴェリックに屈服すると今度は独占欲を見せます。何しろマーヴェリックはルースターばかり構っているのですから面白くありません。それで集合写真を見てマーヴェリックとグースの仲に気付いたのはホモの第六感です。

 ルースターとマーヴェリックが言い争いをしてルースターが勝ってしまった所へ物言いを付けたのは分かりやすいホモのジェラシーです。マーヴェリックのように飛ばないと勝てないというコメントがメス堕ちを物語ります。後から来たくせに正妻面してます。空でも地上でもハングマンは強引なのです。

 そしてマーヴェリックとルースターの因縁を暴露してしまうのは、ハングマンの中のメスとオスが喧嘩していたという事なのでしょう。掘られっぱなしは嫌なのでリバを狙ったわけです。

 そんなハングマンもビーチアメフトに参加しちゃうあたりはやはり根は悪い奴ではないという事で、マーヴェリックの無断模範飛行が成功したのにはついに負けを認めます。

 マーヴェリックに譲って予備機に下がったのはメスになった証拠です。文句を言った様子もありません。

 マーヴェリック撃墜の報に勇んで出撃を求めて許可されずに怒るのは、完全にアイスマンのメンタリティです。アイスマンは死にましたが、彼の精神は不滅なのです。

 しかし、マーヴェリックとルースターがもはやこれまでというピンチに騎兵隊のごとくハングマンは現れ、敵機を撃墜して面目を施します。これはどっちかと言うとエクスペンダブルズ精神です。

 ハングマンは仲間を見捨てるゲス野郎からマーヴェリックを救った漢にステップアップし、ついでにマーヴェリックの後継者を僭称し始めるのは明らかです。そしてそういう生意気小僧をたまらなく可愛く思うのがマーヴェリック。未来はバラ色です。

 きっと続編が作られるでしょう。そうなれば他の連中はともかくハングマンが登場するのは間違いありません。きっと正妻面をして赤い旗国家に一緒に立ち向かう彼が見れるはずです。

×ルースター

 攻めが特別な相手にだけ受けに回る。異論は多いでしょうが、私はこれは最大の愛情表現だと信じます。

 若い者を掘るのが森川智之の得意技ではありますが、マーヴェリックはルースターに明らかにグースを見ています。従ってルースターが攻めです。

 それに、ルースターというコールサインが意味深です。雄鶏という意味ですが、ホモセックスをわが国では鶏姦と言います。

 ルースターの参加を渋ったのも能力を疑問視していたからではありません。グースを見ているからこそ怖かったのです。マーヴェリックにとってグースを殺してしまったという自責の念は生涯背負わねばならない十字架であり、原罪なのです。

 店に現れたルースターが火の玉ロックを奏でるのは、あるいはマーヴェリックが居る事を知っていての事ではなかったか?

 前作のあの一時こそがマーヴェリックにとってもルースターにとっても最も幸せな時間でした。あの直後に全てが崩壊したのです。私はあそこに同席していたルースターの知らないおばさんのせいだと思いますが、まあそれはいいでしょう。

 ルースターはグースを殺したマーヴェリックを許していません。とすれば、これ以上の当てこすりは存在しないでしょう。現にマーヴェリックはあの時の事がフラッシュバックして酷く動揺しています。

 ペニーもちょっと待てと言わんばかりの表情です。彼女もグースを知る人物の一人なれば、ルースターの仕打ちは酷だと分かるのです。

 マーヴェリックもルースターがこうなった事に責任は重々感じているので、訓練初日に和解を試みますが、ルースターは完全に反抗期です。

 マーヴェリックがガン掘りキル祭りの最初の獲物に定めたのは、ペイバック/ファンボーイ機を庇ったルースターでした。ルースターは闘志満々にやり返し、最低高度をオーバーする反則まで駆使しますが敗れます。

 マーヴェリックは嬉しかったはずです。最低高度を下回って抵抗するのは、自分達もトップガンの初日でやった事です。しかし、トム・クルーズなので勝ってしまいます。

 罰ゲームの腕立て伏せをやるルースターの顔は、ケツを掘られて屈辱に震えるメスその物です。

 守ってもらったファンボーイはそれを見て申し訳なく思い、ルースターと古い仲のフェニックスはルースターの漢気を褒めます。こいつは相当な腐です。海軍より宇宙軍向きです。

 そんなルースターに意地悪した予備連中を両方撃墜したのはマーヴェリックのです。片方が撃墜されたら終わりというルールだったのに、それを曲げたのです。いや、その後はやりたい放題だったので、マーヴェリックのメンタルも乱れていたのでしょう。

 ハングマンがルースターとマーヴェリックの過去を詮索するのを後ろから飛んできて制するのもなかなかです。ついでに伝説の背面飛行を再現してルースターの上に覆いかぶさってハングマンを唖然とさせるのは明らかな誘い受け。何度も言いますが、受けが上なのがホモリアルです。

 そもままきりもみでドッグファイトに流れ込むのに至っては本作の前半における最尊シーンです。事情を知らないハングマンは完全にコンドームです。

 おまけにそのまま口喧嘩しながら急降下して死のチキンゲームをおっぱじめます。過去は変えられないとマーヴェリックは言いましたが、グースが忘れられないのはマーヴェリックの方です。

 チキンゲームに負けたルースターは安全高度を守ろうとしてマーヴェリック撃墜のチャンスを逃し、コブラでケツを取られて負けます

 これは意味深です。ルースターが先にイってしまい、マーヴェリックが機首を持ち上げて発射する。これはもう実質トコロテンです。

 泣きながら腕立てをしてボンドーに言われても止めないあたりは、泣きながらシャワーを浴びているようなものです。ルースターの中で愛する父の相棒としてのマーヴェリックと、愛する父を殺したマーヴェリックが盛り合っているのです。

 ここでハングマンと飛びたくないからと励ましに来るのもフェニックスです。普通に観るとポリコレ要員ですが、BL的に観ると素晴らしい当て馬女です。ペニーやアメリアよりずっと良い仕事をしています。

 そして、マーヴェリックがルースターの海軍兵学校の願書を勝手に破棄した事が判明します。これは実はグースのようにルースターも死ぬのを恐れたキャロルが頼んだことでした。

 これは日本が世界に誇るゲイソング『山男の歌』と同じ構図です。息子だけは空にやるなよというわけです。しかし、私はここにマーヴェリックの森川ボイスたたる所以を見るのです。

 ルースターをパイロットにしたくないならこの方法は不十分です。結局ルースターは大学に行ってから改めて海軍に入ったのですから。

 そして、父親の問題で兵学校に入れなかったというのはマーヴェリックも同じです。そう、つまりマーヴェリックはさりげなくルースターが自分と同じ道を通るように誘導したのです。

 本格的なシミュレーションに入るとマーヴェリックは失敗したら死ぬという事実を強調し始めます。明らかにグースの事が引っ掛かっていますが、それは私よりルースターが詳しいはずです。

 スクランブルが来たらどうするんだと怒るマーヴェリックにルースターがパイロットの腕次第と返答して、マーヴェリックが思わず賛同してしまったのは、マーヴェリックの教育の賜物です。

 この時マーヴェリックはルースターにグースを見たのか?それとも若き日の自分を見たのか?あるいは両方かもしれません。いずれにしてもマーヴェリックは揺れます。

 アイスマンに泣き付いてビーチアメフトで仲直りしようとしますが、ルースターは倒れたマーヴェリックを起こすだけ起こして行ってしまいます。父親達はこれで何もかも解決したのに、息子世代はそうはいかないのです。

 更に前作を踏襲してマーヴェリックはペニーと寝ます。そして、ルースターが願書を抜いた事を恨むならキャロルではなく自分を恨むべきだの、父親代わりなろうとしただのとのろけます。

 ベッドでそんな事を言うあたり、本格的にペニーはコンドームです。しかも途中でアメリアが帰って来て関係が露見し、残念な事になります。結局のところ、この映画で女は飾りでしかないのです。

 訓練は新段階に進んで一層苛酷になり、コヨーテは気絶、ボブとフェニックスは病院送りという惨事になり、ルースターはナーバスになってしまいます。

 そこへマーヴェリックが長く飛んでいると仲間を失うとかなり空気の読めない事を言ったせいでルースターが怒ります。願書の件で痴話喧嘩です。

 マーヴェリックはルースターがマニュアルに頼る事を問題視し、俺を信じろと攻め様しますが、ルースターはグースはマーヴェリックを信じたせいで死んだと言ってはいけない事を言い、おまけにアイスマンの訃報が届いてパニックです。

 しかし、アイスマンの死を悲しみ、弔うようにミッションを成功させたマーヴェリックを見てルースターは少し態度を軟化させ、出撃しようとするマーヴェリックに何か言おうとして果たせず飛び立ちます。

 マーヴェリックは「お前なら出来る」という言葉を残して飛びますが、本番でもルースターは気弱さが出て遅れます。

 どうする親父と唱えるのは完全にマーヴェリックイズムですが、マーヴェリックが直接励ましてくれるのでリミッターが外れ、ペイバックが今度は遅れる羽目になります。

 マーヴェリックは爆撃に成功しましたがファンボーイのレーダーが不具合を起こし、ルースターは目視で爆撃して成功させてしまいます。

 これは離れ業です。グースとアイスマンとキャロルのご加護です。神がマーヴェリックとルースターに結ばれろと言っているのです。

 そしてドッグファイトに突入します。ミサイルとフレアが飛び交って大変派手ですがルースターはフレアが切れてピンチです。

 しかし、前に居たマーヴェリックがコブラで下がりながらフレアを放射してルースターに迫るミサイルと一緒に撃墜されます。マーヴェリックは自分の為に死んだグースに報いるために、命を捨ててルースターを助けたのです。これが愛でなくて何でしょうか?

 幸いマーヴェリックは雪上に不時着してヘリに狙われますが、完璧なタイミングで命令を無視したルースターがヘリを撃墜しつつミサイルにやられ、マーヴェリックはルースターの元へ走ります。

 ルースターの為に死ぬ覚悟だったマーヴェリックはルースターを突き飛ばして怒ります。その様は完全に夫婦です。

 ここからは完全に2人だけの世界で、敵の基地に乗り込んで敵のトムキャットを盗み出します。勿論ルースターが後ろ。完全な誘い受けです。こういう事態になると案外敵が紛れ込んでもバレないというのがリアルです。

 ルースターはトムキャットについて何も知らないのでフレアの発射くらいしか仕事がありません。受けに振り回される渾身のヘタレ攻めです。

 レーダーも無線も動かせない中、次世代戦闘機が迫ります。戦闘機というのは残酷で、古い機体では余程の事がないと負けるのです。

 味方のふりをして一度は誤魔化しましたが、ルースターは最後はパイロットの腕だとマーヴェリックを励まし、腹を決めて不意打ちで1機目を始末します。

 思えばグースもこういう奴でした。マーヴェリックを信じ、マーヴェリックに命を預ける事に躊躇しない。マーヴェリックはグースを思い出してもうビンビンに違いありません。

 2機目が大変で、ロックオンしてミサイルを撃ったというのにコブラしながらきりもみになるという離れ業を見せます。

 戦術の通りコブラはオナニーのようなもので、ロシア系の機体が得意とします。とすれば、このパイロットは激しいオナニーでアメリカ人をドン引きさせたのです。

 余談ですが、本作とオスカーを争った『西部戦線異状なし』の原作にはロシア兵のセンズリは凄いと書かれています。濃厚なBL群像劇なので、腐の皆様は読むべきです。

 とにかく、この状況はBL的にも危険です。複座なのでならず者野郎が掘ろうとするのはマーヴェリックではなくルースターになります。森川ボイスの癖にそんな事を許しては、BLCD業界のパワーバランスの崩壊です。

 なのでマーヴェリックはならず者野郎を掘られながら掘り、5機の撃墜を成し遂げて撃墜王になります。ところが喜んだのもつかの間、もう1機が真正面から現れます。

 ミサイルもフレアも弾もなし、ケツを取られてもはやこれまでと言うところで脱出装置を作動させろとマーヴェリックは迫ります。グースの件があるので躊躇うルースターを承知させたのに、脱出装置は故障です。

 ですが、もうこれまでという最高のタイミングでハングマンがならず者をケツからかまして危機を脱します。

 全てが終わり、マーヴェリックはルースターと熱い抱擁を交わし、命の恩人だと褒めます。しかし、ルースターは「父ならそうしました」と言い切ります。最尊です!そしてまた抱き合います。

 もはやマーヴェリックとルースターの間に壁は存在しません。キャロルも亡き今、ルースターにとってマーヴェリックは事実上の父親であり妻なのです。

 マーヴェリックはルースターを咥え込みながら叫ぶのです。「答えろ、グース!もっと!もっと!」

ハングマン/ルースター(リバあり)

 このカップリングは前作のレビューを踏襲してアメリカンスタイルです。リバありでお送りします。

 ハングマンがルースターに突っかかり、編隊長の座をめぐる争いの前哨戦をおっぱじめるのはルースターが対抗馬だと認めている証拠です。

 ルースターはルースターで「お前が編隊長になったら早死にする」と海の男らしからぬ暴言で応じるのはかなりバイオレンスポルノの香りを漂わせています。

 何しろルースターはグースの息子なので誠実で良い奴です。俺様のハングマンとは見えている世界が違います。

 2人のスタイルが真逆なのも反目し合う理由なのでしょう。手段を選ばないハングマンと、堅実さを旨とするルースター。気付きませんか?これは父親世代と同じ構図です。

 つまりハングマンがマーヴェリックであり、ルースターがアイスマンです。パイロットの悲惨な末路と向き合わねばならなかったルースターがリスクを犯さないようになるのは当然と言えば当然で、マーヴェリックを恨むのも無理からぬ話です。それだけに、マーヴェリックに似ているハングマンがルースターは許せないのです。

 ハングマンにしてみれば、父親の死を引きずって安全運転をするルースターは女々い奴に見えます。ですが、ルースターが最も危険な存在と目す腕利きなのも確かなのです。

 訓練でも性格の違いが出ます。そもそも、この作戦が相当にホモ臭いのです。2人でハアハア言いながら狭い谷を激しく通過し、狭い穴にぶち込もうというのですから。

 僚機を置いて先にイってしまうのが早漏のハングマンで、僚機がつかえてしまうのが遅漏のルースター。そして互いに罵り合うのですからますます意味深です。

 ルースターがマーヴェリックにとって特別なのに気付いてねちねちやり、ルースターとマーヴェリックの因縁をアウティングして喧嘩になったのがハングマンの中のターニングポイントです。

 嫌いな奴の事ばかり考えているうちにそいつの事しか考えられなくなるあれです。ハングマンはもうマーヴェリックとルースターの事しか考えていません。

 マーヴェリックに負けを認め、予備機に下がったハングマンですが、自分を差し置いてルースターが飛んだのはいい気がしなかったでしょう。

 しかし、大ピンチのルースターとマーヴェリックを救ったのは騎兵隊のような完璧なタイミングで現れたハングマンでした。

 全てが終わって固い握手を交わすのは完全に父親達の再現で、もはや2人はマーヴェリックとアイスマンです。

 ハングマンはマーヴェリック以外では唯一の敵機を撃墜した現役パイロットでしたが、ルースターの登場でこの地位は奪われます。ヘリコプターも撃墜数にカウントされるのです。更に言えば、マーヴェリックの後継者の地位も奪い合う関係になってしまうのです。

 従ってハングマンとルースターはダブルエースになり、マーヴェリックとアイスマンのようにいちゃいちゃしながら喧嘩もしながら国難に立ち向かうようになります。関係は対等です。訓練の勝ち負けが左右を決める同軸リバです。マーヴェリックは息子達がそうして切磋琢磨するのを穏やかに眺め、ミサイルを硬くするのです。

×アイスマン

 私はアイスマンも飛ぶものだと思っていました。マーヴェリックのピンチに駆けつけるとか、一緒にトムキャットを飛ばすとか、そういうストーリーになる物だと。しかし、予想も期待も越えていきました。

 前半のアイスマンは肖像と伝聞とチャット上の人物であり、なかなか姿を現しません。ルースターの身を案ずるマーヴェリックを励ましたりと文字情報だけでいちゃいちゃして説得力を持たせてしまうのは、やはり年季という奴なのでしょう。

 問題を起こすたびにアイスマンが尻拭いして復帰するというペニーの言葉に重みがあります。凡百の堅物提督と違って、アイスマンは常にマーヴェリックの味方なのです。

 それどころか、あの秘密基地はアイスマンがマーヴェリックに与えた物である事も示唆されます。

 これは筋金入りのスーパー受け様です。海軍大将という地位を利用してマーヴェリックの欲望を全て叶えてしまうのですから。ともすれば、アイスマンは国民のケツ税をケツにぶち込まれてあへあへ言っているに等しいのです。合衆国がコンドームとは過去にないスケールです。

 ボンドーをトップガンにやったのもアイスマンの差し金でしょう。現地妻は男の甲斐性というわけです。アイスマンのケツの穴の大きさは徹底していてぶれません。

 作戦が暗礁に乗り上げ、グースの件が若衆に露見したところでアイスマンは会いたいと言ってきます。マーヴェリックは断りますが、「頼みじゃない」とくるのはまさに受け様アングルです。

 俺は提督だぞ。黙って掘れってなもんです。あるいは、ボンドーは現地妻ではなく目付だったのかもしれません。会ってくれそうなタイミングを探らせたとしか思えません。

 マーヴェリックは渋々アイスマンに会いに行きます。これを見てピンと来た人もいるはずです。グースの件でゴタゴタして傷付いたマーヴェリックが過去を知る男に頼る。これは前作でもやった事であり、つまりアイスマンはライバルからおやっさんに昇格したのです。

 しかし、アイスマンは病魔に侵されて余命僅かと判明します。喋る事もままならず、パソコンで筆談する有様です。身体は衰えてもアイスマンは強引で、心配するマーヴェリックを更に苦しめるのをよしとせず、任務の話をしようの一点張りです。これぞ愛。これぞ友情。最高です。

 マーヴェリックはルースターを外したいと申し出ますが、アイスマンはお前なら出来ると言って承知しません。

 アイスマンはあくまでマーヴェリックを信じているのです。ルースターもこの期に及んではコンドームです。半端じゃありません。

 しかし、グースもまたアイスマンにとって大切な仲間なので、ちゃんとルースターをストーリー上は尊重します。ルースターを死なせるくらいなら自分が行くというマーヴェリックに、あくまで過去を忘れるべきだと説くのはトム・クルーズ映画の良きおやっさんの姿その物です。ルースターもまたアイスマンにとっては守るべき存在なのです。

 マーヴェリックは苦悩を残らずアイスマンにぶちまけ、自分が海軍に居る理由はアイスマンだと吐露します。当然ながらアイスマンは完全にメスの表情です。またウォーターマンになってます。

 アイスマンは全てを受け止めて熱い抱擁を交わし、最後に自分とマーヴェリックのどっちが良いパイロットか訊ねます。マーヴェリックは回答を避けましたが、2人にもはや言葉は必要ありません。取って付けた見慣れぬ奥さんなど立ち入れない領域です。

 その直後にビーチアメフトをおっぱじめるのは、昔を思い出して原点に帰ったというわけですが、私には別の物も見えます。

 考えてみてください。ビーチのシーンはトップガンの象徴であり、サービスカットです。アイスマンとの抱擁の直後にこのシーンは、濡れ場の代替ではないのか?

 しかも、必然性無くボールが2つです。タランティーノなら当然男の玉と言うでしょう。私は少なくともそう思います。

 マーヴェリックとルースターが喧嘩しそうなタイミングで訃報が届いたのは、アイスマンがしてやれる最後の庇護だったように思えてなりません。あるいは、久々にドッグファイトをして寿命が縮んだのかもしれませんが、アイスマンにとってはホモもとい本望でしょう。

 マーヴェリックはアイスマンの棺にパイロットウイングを打ち付けて涙を流します。これは説明が必要です。凄まじく尊いシーンなのです。

 パイロットウィングは軍服に着ける徽章で、パイロットの資格証です。この種の徽章が軍隊には色々あり、ただの資格証ではなく仲間の証でもあります。

 仲間が棺にこの種の徽章を打ち込むのは、死んでも仲間だという絆を示す行為です。特殊部隊の隊員の棺などはバッジでびっしりになる程です。

 しかし、アイスマンの棺にはマーヴェリックの物が一つだけです。他のトップガン仲間もこの場には居るはずで、彼らも打つ事が許されるはずですがそうしませんでした。

 それはアイスマンにとってマーヴェリックだけが特別だった証明なのです。スライダーが横入りできるような次元ではありません。

 きっとあのぽっと出の奥さんが計らったのでしょう。主人の棺にはマーヴェリックのウイングだけでと。

 アイスマンの庇護を失ったマーヴェリックはサイクロンにクビにされそうになります。遺言しておくくらいは出来たはずなのにしなかったのは、アイスマンがマーヴェリックを知り尽くしていたからです。

 マーヴェリックは勝手に飛びました。アイスマンはそうする事を知っていたのです。そしてそれで全てが上手く行く事も。

 アイスマンは死にました。しかし、アイスマンの精神はパイロット達に受け継がれ、マーヴェリックを護っています。マーヴェリックは天国でアイスマンやグースと再会するその日まで、アイスマンと共に飛び続けるのです。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介し

『トップガン』 (1986 米)(★★★★★)(まずこっちを観ましょう)

『ハスラー2』(1985 米)(★★★★★)(トム・クルーズ映画の原点)
『デイズ・オブ・サンダー』(1990 米)(★★★★★)(トニーのサーキット版トップガン)
『ブロークバックマウンテン』(2005 米)(★★★★)(森川×東地の最強のゲイ映画)
『零戦黒雲一家』(1962 日活)(★★★)(海自全面協力の石原裕次郎のトップガン)
『ビバリーヒルズ・コップ』(1984 米)(★★★)(ハロルド・フォルターメイヤー入魂のBGM)

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