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長男の話9【発達相談】


発達相談の場所は
地域の福祉センター。
めーくんと部屋に入ると室内にはおもちゃがいくつか転がっており、
あまり広くはない児童館のような雰囲気だった。

めーくんはアンパンマンのおもちゃに飛びつき、
「アンパンマン!」「バイキンマン!」とキャラクター名を元気よく言いながら遊びはじめる。


私たちの他にもちらほら相談にきているお母さんと同い年ぐらいの子供がいた。

そのうちの一人は児童館でよく会う女の子だった。
地域で2箇所ある児童館のうち、
過疎化した方にいつもいる親子。 
めーくんとその子の2人だけしかいない日もあり、何度か話したことがある。

私「こんにちは」

女の子のママ「あ、こんにちは!」


私「○○ちゃんも相談ですか?」

女の子のママ「うちの子言葉がまだでていなくて、、」

私「そうなんですね…。
うちも多動ぶりが気になってて」

女の子のママ「そうですか??
おしゃべりも上手なのに…」


今思えばそういうしかなかったのかもしれない。
でも当時は「そうですか?」と言われるとホッとしていた。
よかった、周りには「ふつう」の子だと思われていると。


私たちの担当は若い臨床心理士の女性だった。


臨床心理士「何が気になるところですか?」


私「うちの子、言葉は出ているのに野外だと人に興味がないんです。
これは家での様子なんですけど…」


私は家で過ごすめーくんの動画を見せた。
家では「おはな?」とか「さかな?」と言いながら私にペンを渡してくる。
絵を書いてもらって嬉しそうに笑うめーくん。

 おもちゃを受話器替わりにして
「しーしー!(もしもし)」といいながら
ごっこ遊びをするめーくん。


私に満面の笑みで笑いかけるめーくん。



どれも可愛い。
ほら、全然「ふつう」でしょう?

みんなが言うように外だと慣れなくて殻にとじこもる子もいるよね?
これは発達の遅れでも障害でもないですよね?


そんな気持ちで動画を見せた。


でも臨床心理士は「大丈夫ですね」とは言わない。


臨床心理士「一度めーくんと話してみてもいいですか?」


心理士さんがめーくんに近づき、
「めーくん!」と声をかける。

めーくんは心理士さんに一切目を向けず、
アンパンマンのおもちゃに夢中だった。
「めーくん!めーくん!
アンパンマン好き?」
何度声をかけても私にすら反応を示さない。

 そんなとき、
「お母さん、その子何歳?」と声をかけられた。
元保育士の50代ぐらいの女性。
児童館でよく会う親子の担当だった。


私「2歳です。」


元保育士「2歳なら普通はあれぐらい喋るからね。」

元保育士の女性は彼女たちにそう言って
めーくんと比べた。

そんな言い方…




発達相談の日


女の子のママはチラッとめーくんを見て
悲しそうにした。


普通ってなんだろう?

しゃべること?
会話ができること?
大人しく座っていられること?

めーくんもこの日、
いわゆる「ふつう」ではないという判断がくだる。


臨床心理士「月に1回なんですが、親子教室に通ってみませんか?
発達に不安があるお子さんの様子をみる教室です。」


私「..…わかりました。
卒業できることもあるんですか?」


臨床心理士「発達が追いついてくることもありますから、卒業することももちろんありますよ」


実際に同じマンションに住むまるくんは
同じ福祉センターの親子教室に通い、幼稚園入園までに卒業したらしい。


「一体何が気になるのか
分からない子ばかりだった。」


まるくんのママはそう語る。








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