日本公開される韓国映画を支える翻訳家、通訳の根本理恵さんのこと。

わたしのインタビューでの問いかけは、質問なのか感想なのかわからないところがあって、自分でも思うが、とにかく長い。特に、外国の方が相手だと、そのひとに会うのはこれが最初で最後かも、との想いが先行してしまい、かなりことばを重ねる。
時間はかぎられているので、通訳の方がはしょる場合もある。どのようなことばを選択したのかはないがしろにされ、要約され、質問に特化したかたちになる。
ただ、なかには、ものすごく丁寧に訳してくださる通訳の方もいて(アメリカより、ヨーロッパの映画人が相手の場合、そうなる傾向が強い)、恐縮してしまう。
だが、そうしてもらえると、やはりうれしい。だれに会っても、やはり伝えたいことはあるし、できれば、自分にしか伝えられないことを伝えたいと思っているから。
(東京フィルメックスにおける)「生きる」のQ&Aはとても素晴らしいもので、それは会場からあがった質問がよかった、というよりも、パク・ジョンボム監督の人徳に他ならないと、彼のことばたちを聴いていて思ったが、それは、とりもなおさず、彼のことばを丁寧に伝える通訳の方がいたからだった。「根本理恵さん」と紹介された。
はっとした。
『息もできない』の、字幕台本を手がけたひとだった。わたしは『息もできない』のノベライズを手がけ、これはノベライザーとしてのわたしの代表作だと考えているが、根本さんが手がけた字幕でなければ、あんなふうには書けなかった。
Q&Aが終わり、監督が観客のサインに応えたあと、わたしはパク・ジョンボムにインタビューした。通訳は根本さんだった。
やはり、素晴らしい通訳だった。
わたしはインタビューの現場に、質問を用意していかない。相手のことばをうけて、即興で問いかける。だから脈絡がないことも多いのだが、根本さんは、わたしの思いつきのことばたちに、実に地道に付き合い、それを監督にすべて伝えてくださった。わたしはハングルがまったくわからないのだが、根本さんが「すべて」伝えていることが、はっきりわかった。
最後に、『息もできない』のことも含め、きちんとお礼ができた。お礼が言えるのは、ほんとうにありがたいことだ。
根本理恵さん、ほんとうにありがとうございました。

2014.11.25

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