愛縁機縁-伍-×うてばひびくライブレポート

2023年12月26日 20:00

2023年12月12日（火）、東京・新宿SAMURAIで『愛縁機縁-伍-×うてばひびく』が開催された。

「遊び場としてのライブハウスで人と人の縁を繋ぎたい」という主催者の思いから始まったライブイベント、『愛縁機縁』。今年8月よりスタートし、今回で5回目の開催となる。2023年の締めくくりとなる本イベントには、7組の新鋭バンドたちが集結し、熱いライブを繰り広げた。

最初に登場したのは、下北沢を中心に活動するギターロックバンド・フセイカイ。「あなたにとっての正解は、誰かにとってのフセイカイです。」というキャッチフレーズを持つ彼らは、自身の哲学を訴える切実なステージでオーディエンスの心を動かすバンドだ。

「君たちは音楽が好きですか？僕は音楽が嫌いだ！」
「19歳の僕が死ななかったのは、音楽があったから」
「フセイカイの曲は耳じゃなくて血液で聴け。あんたの血液を震わせるためにやっとんじゃ！」
「僕はバンドマンじゃない、アーティストだ！」
「曲を歌ってるんじゃない、フセイカイっていうバンドを描いてる」

強いメッセージを次々に放ちながら、「ぼくは音楽が嫌いだ」「生きて」「ぼくはアーティスト」「近すぎて」の4曲を披露。肥大化した信念をそのまま言葉にしたような歌詞を、繊細なバランスの演奏と共に叩きつける。ライブ中盤では、激情を昇華させるようにシャウトし、声を枯らして叫び続ける場面も。自身の生きざまを表現するかのようなストレートなパフォーマンスで、初っ端からイベントの空気をかっさらっていった。

2番目に登場したのは、神奈川県藤沢市発の3ピースバンド・arcanaria。透明感溢れるSEをバックに登場し、「今しか」でスタート。力強い歌声で、前述したフセイカイが作った雰囲気を一気に塗り替え、オーディエンスの心を惹きつけた。続く「脱獄日和」では、エネルギッシュなドラムと骨太なベースで疾走感のあるサウンドを作り上げる。

MCパートでは、今回が新宿での初ライブとなることに触れ、「自分たちのことを知らない人たちも、いつも見てくれている人も、みんなで自分たちを見てくれていて、不思議な気持ち。でもライブハウスってそういう場所なんだなって。“愛縁機縁”という名前は、ライブハウスがどういう場所なのか、ライブする面白さって何なのかを伝えてくれていると思います」と、このイベントに対する思いを述べた。

切なく叫ぶハイトーンが印象的な「鳴り止まない」、マイナー調でダークな「青濁」と、多彩な楽曲で魅せたあとは、「どんなに自分のことを嫌になっても、最期まで自分を諦めないでいられるように作った曲です」という言葉からラストの「最期まで」へ。曲を重ねるごとにステージ上のグルーヴ感やライブの勢いはどんどん増していき、曲の最後では感情の高ぶりからか声を震わせながら歌い切った。

3番目に登場したのは、独自のジャンル“東京チルロック”を掲げて活動するTheThankyou&Sorry。まずは名刺代わりの一曲「likeくらいがちょうどいい...」を披露。余裕たっぷりのステージングと抜け感のあるサウンドで大人っぽいステージを届ける。フロアには細かなレーザーの光が飛び交い、まるでクラブ空間のよう。オーディエンスも自然と身体を揺らして踊り始める。

ノスタルジックなサウンドが心地よい「stand by me」、パーティ感のあるグラマラスな「高速Metropolitan」で徐々にボルテージを上げていき、ハートウォーミングな「A.O」ではオーディエンスと共にシンガロングし、一体感のある空気を作っていく。

そしてラストは、「僕らにとってもあなたにとっても大切なアンセム」として届けた「brand new days」。壮大なサウンドに合わせて全員が拳を掲げ、共に未来への希望を託すような感動的な光景を作り上げながら、フィナーレを迎えた。

4番手は、東京を拠点に活動する3ピースロックバンド・melt into the cream。ミステリアスなSEと共にステージに現れた彼らは、派手なヘアスタイルにサングラスという鮮烈な出で立ち。危険を知らせるサイレンの音が鳴り響く中、一斉に轟音を放ち始める。1曲目は、電子音とバンドサウンドが巻き起こす嵐のような「INSIDE」。真っ赤なライトに照らされるステージでは、メンバーが楽しそうな表情で重厚な音を鳴らし、イキイキとしたパフォーマンスを見せる。

ノスタルジックなギターのリフが印象的な「記憶と夏」、激しさと妖艶なムードを併せ持つ「ドレス」と多彩な楽曲で奥行きのあるライブを届ける。ボーカル＆ギターの弾き語りを挟んで雰囲気を作ると、そのままバラードソング「またひとつ」へ。温かみのあるサウンドと日常を丁寧に描いた歌詞は、オーディエンスの心にじんわりと響き渡った。

最後に届けたのは、ジャジーな雰囲気漂うアンニュイな「斜陽」。色彩豊かな楽曲と、存在感抜群のメンバーによるステージで、上質な楽曲を次々と聴かせた。

5番手は、東京都発ドラマチックスーパーポップスバンド・憂牡丹。ブラウンを基調としたファッションでまとめたアーティスティックな雰囲気漂う5人組で、フロントに立つボーカルのドーリーなビジュアルが印象的である。彼らが登場したころには、フロアは満員。熱気漂う会場へ、まず届けたのは、「BRUTUS」。シンセサイザーの神秘的な音に合わせて、オーディエンスはハンドクラップで一つに。リラックスした雰囲気からスタートしたライブだったが、続く「DIVE」ではダークな世界へと誘う。

ここで、ライブ初披露の「ニュートリノ」を投下。ミステリアスな空気を纏った新曲で新境地を見せた。シンセサイザーの無垢なサウンドでオーディエンスを釘付けにして始まったのは、「恋愛中毒」。髪を振り乱して激しく奏でる彼らの轟音に、会場の空気は完全に飲み込まれていく。

そしてラストは、「BEDTIME STORY AND TEASTAND」。繊細な歌声を壮大なサウンドに乗せ。感動的なフィナーレを迎えた。

6番手は、このステージが初めてのライブだという、駆け出しの3ピースバンド・LIEWHO。疾走感のある「真赤」で記念すべき初ライブの幕を開ける。初期衝動を感じさせる勢いのある演奏と、ステージに立つ高揚感が伝わってくる伸びやかな歌声で、オーディエンスの胸を熱くさせた。続く「世界はウソでできている」は繊細な演奏からスタートし、徐々にパワフルなパフォーマンスを見せ、エンジンをかけていく。

短めのMCで初ライブへの思いを端的に伝えたあとは、「アトモスフィア」でゆったりとした空気へ。柔らかく甘い歌声を響かせ、会場の雰囲気をガラリと変えたかと思えば、アッパーなナンバー「more」で再びアグレッシブなステージへ。がむしゃらにパフォーマンスする彼らの額には汗が光っていた。

最後は、キャッチーな「雨とワガママ」をじんわりと心に響かせて終了。「ぜひ名前だけでも覚えて帰っていってください！」と叫び、爽やかな笑顔と共に初めてのライブを終えた。

この日のラストとなる7番手は、横浜国立大学ロック研究会の男女5人で結成したというロックバンド・食堂ガール。「新宿の音楽、とってもかっこいいですね」と呟きつつ始まったステージだが、彼らが音を鳴らした途端、すさまじい求心力と演奏力で会場は圧倒される。1曲目の「Bootleg」からステージに釘付けになったオーディエンスは、その音をもっとと求めるように、一歩ずつ前へと進んでいく。

続く「Moon」は、バンドの個性が爆発したような、ユニークで洗練された印象の一曲。さらに、日常の虚無感を丁寧に歌い上げた「いきるいみ」、軽やかなリズムでオーディエンスの気分をあげる「Cute」、物語性を感じさせる新曲「Purple Cloud」と多彩な曲を投下し、ライブを盛り上げる。

ついに迎えたフィナーレは「Walk」。冬の早朝の清々しい空気を想起させるような上質な音楽を楽しみながら、長い夜は終わりを迎えた。