妊娠がわかったとき
「人生初めての妊娠」はわかりやすかった。
体外受精を終えた翌日から、お腹がチクチクと痛み、熱で身体が火照り、風邪をひいたような気だるさと喉の渇きが、ずっとずっと続いたのだ。
これまでも副作用の強い薬を飲んでいたので吐き気や身体のだるさと闘いながら生活していたけれど、それとは少し違った。
お腹のチクチクは「今、赤ちゃんが住むところを建設中でーす」といった感じがしたし、
身体が熱っぽいのは「今、赤ちゃんの器官を作ってるんで、熱が必要なんですよ~」という感じがした。
だから、体外受精から1週間後の妊娠判定は、不安な反面、どこかで確信もしていた。
「いま私の身体の中で、小さな命ががんばっている」と。
血液検査を終えて1時間後に診察室に入ると、先生は小さな拍手をして迎え入れてくれた。
「赤ちゃん、ばっちり育ってますよー!」
この2年間、どれほど望んだかわからないその瞬間を、私は泣きもせず笑いもせず、ただ冷静に
「今は何週目にあたるんですか」
「母子手帳をもらいにいくのはいつですか」
「転院のタイミングは…」
なんて、淡々と先生に質問していた。
だって、まだ妊娠は始まったばかり。
ここから、お腹の子と一緒に、いくつもの壁を越えていかなくちゃいけないのだから。
手放しで喜んでなどいられなかった。
それでも、ようやく始まった赤ちゃんとの日々に、少しずつ実感がわいて、ドキドキと興奮してきて、待合室に戻るとLINEを開いてすぐに夫に「着床成立!妊娠3週目だって!」と連絡をいれた。
そこから毎日、お腹の「チクチク」とする痛みを愛おしく感じながら、(むしろチクチクしないと不安になりながら)
「どうか順調に大きくなってくれ、お願いお願い…」と毎日祈りながら過ごした。
2年間の不妊治療の中で初めて、命が宿る第一歩を踏み出せたのだ。
熱っぽい身体も、なんだか誇らしく思えた。
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