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久しぶりに袖をとおした日

制服を着た、5か月ぶりに。


もう二度と袖を通すこともないと思っていたロッカーの中の白衣達。柔軟剤の柔らかな匂いで全身を包んでくれる。

色々あった

悔しい日もつらい日も涙が止まらない日も。

そんな自分を今までずっと見ていてくれた相棒のようなものだ。

「待っていたよ」と言わんばかりに真っ白な姿で。


一瞬脳裏によぎるものを不安に感じながらも身にまとうと、心なしか背筋がシャンとなった気がした。ポケットに七つ道具を入れていく、ボールペン・ハサミ・電卓・定規・印鑑・時計・メモ帳と。今まで蓋をしていたプロ意識が目を覚ます。


今日から私はもう一度看護師になる。


違う職業に就きリセットしようと辞めようと思ったこともあった。決して痛みが消えたわけではない、気を抜けばまた膿が溜まり痛みが増強される日もあるだろう。そうなったとき私は耐えられるかは分からない。今まで起こしてきた失敗や挫折を忘れることはできない、完璧でない私はまた同じ失敗をするかもしれない。その時に大丈夫と立ち上がれるだろうか、わからない。多くの辛くなる予感を感じながらも、やっぱり看護をしたいと思えた自分を信じていきたいんだ。


私の決断を確信に変えていたい。


たくさんの不安を抱えながら制服を着る。「大丈夫だよ、私も一緒に行くから」と包み込んでもらているみたいだ。

「今まで1人にさせてごめんね、今日からまたよろしく。」


そう心の中で話ながら更衣室を後にする。


病棟に上がると「制服になってる」と同僚に言われた。みんなが看護師として迎え入れてくれた。

きっと私はこの場所が好きだ。そんなことも考えられないほど沈んでいた自分が今、とっておきの笑顔で働いている。


ベッドから起きられなくなったあの日、働けなくなった5か月前があったからこそ笑って過ごせる日がより一層大切だということに気づける。

「いつもにこにこしているあいかもさんに戻ってほしい」

当時上司に言われた言葉。

「あれ?私どうやって笑ってたっけ?」笑うことが出来ずただ窓から見える空を呆然と見つめることしかできなかった。

仕事仲間から心配のメールをもらった。仕事のやり取りばかりの中での長文の文字たち。涙でぼやけて最後まで読めず携帯を手に持ったままあふれる感情を受け止めて立っているしかなかった。

孤独に打ちひしがれているわたしにパソコンの向こう側のたくさんの心のある言葉たちが外に出る勇気をもらった。

たくさんの人達に助けられ今この場所に立っている。


心から笑える自分を認めて、白衣とともに今日を戦っていく。

私には最強の相棒がいるんだから



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