一山超えて

「実行委員をしたいです。」
SNSで英日・日英翻訳国際会議(IJET)の実行委員の募集に出会い、すぐさま情報主にコンタクトを取ったのは去年末。実行委員の仕事が本格的に始まった今年初めから6月にかけて心の中が落ち込みとやる気の双方を激しく行き来していた。次々に出てくる仕事をこなすに加えて、完璧主義が足を引っ張り「あれもこれもしたほうがいいだろうな」と思いつきながらも実行に至らないことで手を挙げたことを後悔したこともあった。自分の無力さを恨めしく思うこともあった。

そして迎えた当日。

本番前日の前夜祭で実行委員の各メンバーに会った時は皆笑顔で接してくれた。コロナ禍を経てほぼ初めて翻訳を仕事にしているプロフェッショナルの方々と対面で会うことができたことが嬉しく、同時に緊張もした。

会議本番では講演トラブルが起きた時に対応できるよう、なるべく講演時間中に講演会場の外を歩きながら様子を伺っていた。合間にそれまで一緒に準備をしてきた実行委員のメンバーと控室で会話を交わすのは楽しい時間だった。実行委員に用意されたハッピを実はとても気に入っていた。

事前に選出された講演者の方々は各々とても素晴らしい講演をしてくださった。普段から愚直に翻訳に取り組み、また人前で話をすることにも慣れている人が伝えるメッセージの強さに感動を覚えた。2日目は様子が分かってきたので2つほどセッションに参加することができた。これだけの熱量を伝えるための準備をしてくださったことに対して講演者の方々に頭が下がる思いだ。

そしてとうとう閉会式。

来年の開催地がトロントであることが発表され盛り上がる中、各実行委員が名前を呼ばれ参加者の前に並んだときは緊張もあり嬉しさもあり。盛大な拍手がただただ胸に響いた。

IJETに実行委員として参加したことで翻訳者としてのスタート地点に立つことができた気がする。まだまだ実力不足だが、今まで時間をかけて情報収集をしてきたことがやっと花を咲かせる気がする。もちろんこれからも道は続く。

なぜ主催の日本翻訳者協会(JAT)の会員でなかったのに実行委員に手を挙げたのか。猪突猛進タイプなので振り返ることも少なかったが、コロナ禍でオンラインばかりの集まりに辟易していたのかもしれない。ちょうどコロナ禍で通訳から翻訳へと方向を転換したこともあり、翻訳者の知り合いがほとんどいなかった。そんな中一人で情報収集をして勉強を続けることに限界を感じていたのだと思う。

6月末に開催された会議を終えて一か月が経とうとしているのにも関わらず、かすかに燃え尽き症候群を感じている。大きなことを書いたが実際はこの有様だ。

それでも終了後に感じたことは一つ。
実行委員としてIJETに参加できてよかった。
5日前にJAT会員になった。
時には休憩しながら歩き続けよう。

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